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シロツメクサ

作者: 紫乃.*

梅雨が終わり、暑さが増してくる7月。


まだ小学校低学年の小さな兄妹がはしゃぎながらシロツメクサがたくさん咲く公園で遊んでいた。妹の(さき)が太陽の様な笑顔で公園の中を走り回っていると、兄の(れい)も「待て待てー。」と、鬼ごっこのように妹を追いかける。


暫くすると、疲れたのか日陰で二人仲良く寝転びながらどこまでも広がる綺麗な青空を眺め、面白い雲の形を見つけてはクスクスと笑っている。たまに吹いてくる涼しげな風は汗をかいた二人の体を癒してくれる魔法の風。あまりの気持ちよさに二人は夢の世界へと入り込んでしまう。


零が目を覚ますと、辺りは橙色の光に包まれていた。遠くからはカァカァ、とカラスの鳴き声も聞こえてくる。腕時計を見ると、16:30。16時に帰ってきなさい。と母親に言われているため、慌てて咲を起こすが、全く起きる気配がない。零は「はぁ…。」と、ため息をつく。


「お兄…ちゃん……」


その声にびくっ、として咲の方を見るが、まだ夢の中。どうやら寝言の様だ。零はそのままじっ、と咲の顔を見つめる。すー、すー、と寝息をたてながら、良い夢でも見ているのだろうか。微笑みながら眠っている妹を見ていると、駄目だ。と分かっているのに、あってはならない感情が零の心を荒らしていく。


「お兄ちゃん…大丈夫…?」


目が覚めると、目の前で苦しそうな顔をしている零に驚き、心配そうに零の顔を覗いて。


「咲…。うん。大丈夫だよ。それより、早く帰らないと。お母さんに怒られちゃう。」


にこ、と咲を安心させるように微笑むと、二人は仲良く手を繋ぎ、公園を出ていった。



5年後の7月。

「また、あの公園に行こう。」と言う咲の提案により、二人はシロツメクサがたくさん咲く公園へ来ていた。


「ここに来るのは久しぶりだね…!!」


咲はベンチに座りながら綺麗な遊具で遊ぶ子供達を懐かしそうに見ている。


「そうだね。前来た時と同じで、今年もたくさんのシロツメクサが咲いている。」


「へー、これ、シロツメクサって言うんだ!!」


兄の零がシロツメクサを一つ一つ摘んでいくのを咲は不思議そうに見ていた。


「お兄ちゃん、何してるの?」


ある程度の量が集まると、零はシロツメクサで何かを作り始める。


「…秘密。もう少しで分かるよ。」


咲は零が作業する姿をじーっと見ていると、兄が何を作っているのか、分かってくる、と同時に咲の顔が笑顔になっていく。


「ほら、できた。」


「花冠だーっ!!すごーいっ。」


零が、シロツメクサの花冠を咲の頭の上に乗せると咲は子供の様に喜んで。


「お兄ちゃん、どうっ?」


零の前に立つと、咲はくるっと一回転する。花冠に似合う、白いロングワンピースも、咲についていくようにふわっと少し浮き上がり。


「…おにいちゃーんっ?」


「っ、あぁ、似合ってる。可愛いよ。」


零が少し遅れて反応すると、咲はもしかして兄は熱中症なのでは?と心配して。


「ほんと?ありがとうっ、でも、お兄ちゃん大丈夫…?具合悪かったら……」


「違うよ。少し考え事してただけ。昔から咲は僕のこと心配しすぎ…。」


咲は零に怒られている。と思ったのか、「だって……。」と小声になり。


「別に、怒ってはいないから…。ねぇ、咲、シロツメクサの花言葉って、知ってる?」


今にでも泣き出しそうな咲の頭を優しく撫でると、一つ、質問をして。勿論、零は答えを知っているのだが。


「花言葉……?」


「シロツメクサの別名は、クローバーだよ。」


クローバー。と聞くと咲の顔が明るくなる。


「分かった!シロツメクサの花言葉は幸せだ!」


「うん、正解だよ。」


咲は「わーいっ。」と喜ぶと、期待に満ちた目で零に質問をして。


「ねぇ、お兄ちゃんっ、だったら私、花冠持ってるから幸せになれるかなっ。」


「…うん、咲ならきっと幸せになれるよ。」


にこ。と微笑みながら、零の心を締め付けて。


気づくと、辺りは暗くなっている。自分が寝ていたことを理解するのにはそこまで時間はかからなかった。腕時計を見ると夜の7時。遊具で楽しそうに遊んでいた子供達も、その様子を見ながら微笑んでいた保護者もいなくなっていた。公園には零と咲の二人だけ。肩に温もりを感じ、チラ、と横を見てみると咲が零の肩に寄りかかりながら寝ていた。ポト、と何かが零の膝の上に落ちる。シロツメクサの花冠だ。零は咲の頭の上に戻してあげると、この花冠の本当の意味が頭の中を遮る。


「…私を忘れないで、…か。」


咲を起こさないように、お姫様抱っこをして家に帰ると、母親に「ただいま。」と言い、二階へと上がっていく。咲の部屋に入り優しくベットに寝かすと、咲の髪を指ですーっ、と解かし。


(咲のこのさらさらとした髪も、丸く、くりくりとした瞳も、肌も、爪も、心も…全部、全部全部僕のもの。咲を幸せにできるのは僕だけ…。誰にも、渡さない。)


零は咲の柔らかい唇に自身の唇をくっつけるともう元の関係には戻れない、と察した。


(それでも、でも、僕は咲を離したりはしない…。僕の一生をかけてでも咲を守り抜いて、幸せにすると誓うよ…。)


「咲、待っててねちゃんと、迎えに行くから…。」






シロツメクサの花冠が枯れる前に。







兄妹恋愛が最近好きなのでまずは短編を、と思い書いてみました。初めて小説を書いたので、文章がおかしいところもあるかと思いますが、楽しんで頂ければ。と思います。ここまで読んで頂きありがとうございました。

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