エピローグ
佐藤 柚季 女か男か判別しにくい名前だけど女。やっと今年の春から社会人になった22歳。もう7月が始まった今日この頃。私は新しいアニメをいくつか見ていた。
だって、2次元って素晴らしいでしょ?現実ではあり得ないことを間近で感じられるから。絵は凄いし、そこに声優の美しい声が響くんだよ?もう、芸術の域だと思わない?その芸術の溢れている世界に浸るためなら私は周りからの冷たい視線なんてまったく気にならないよ!
春に一人暮らしを始めてもアニメを見る時間は1日2時間は確保している。私は番組表を確認した。今は23時17分で、見たいアニメは23時30分から始まる。タイトルは、"メモリー・メイキング"異世界ファンタジーだ。
うふふ。このアニメの見所はヒロインのフィアちゃん!主人公の幼なじみで体は弱いのに心がつよくてマジ天使!見た目はとても綺麗な子で大和撫子感がヤバい。
そんな事を考えてたら23時28分。もうすぐ始まる。私はテレビの前に座った。この始まる直前の興奮も私の楽しみだ。
さぁ、私は準備万端だよ!はよカモン!1秒たりとも見逃さない。なんせ、私はこのために生きているのだから!
23時30分、テレビの画面には夜空が浮かんだ。そして、女性の柔らかで優しい美しい声が流れるように言葉を紡ぐ。
「これは違う世界の物語。月が3つある違う世界の物語。わたザザッ…………ブツッ………」
ノイズ音をだしテレビの画面が消えた。アニメ開始時間から23秒後の出来事だ。あり得ない。テレビを2日に一度は掃除しているのに。テレビのコンディションは常に完璧に保ってるのに。
「ええぇぇぇ!!何で!?待って、私の何がいけないの?常日頃からアニメに命を捧げているのに、私のアニメ信仰が揺らいだことなど1秒足りとも無いのに!ひどくない!?」
いやゃゃゃ!!今この瞬間にもアニメが進んでるよ!どうしよう?私テレビの修理なんてやった事無いよ。けど、続きを諦めるのはもっと出来ない!とりあえず、テレビを叩けばいいか。
私はべしべしとテレビを2、3回叩いてみた。けど、変化は無い。当たり前だ。もう1回テレビを叩いてみる。やはり、変化は……
「いっ、痛っ!誰!?いきなり叩くのは酷いよ!」
「テレビが喋ったぁぁぁ!!えっ?あ…」
ぐらっと、頭揺れた。 私は叫びながら意識が遠のいていく。ゆっくりと体が傾いていく。その中で私はテレビが元に戻るのを見た。
あぁ、なんで今戻っちゃうの?もう少し早かったら見れたのに。見たい。アニメが、アニメが、アニ…メ……
そこで私の意識は暗闇の中に引き込まれた。
「…い、…おーい、お姉さん、生きてる?」
「……ん、うー、はっ!フィアちゃん!!」
「うひぁ!!おおお姉さん、大丈夫!?起きたばっかりだから無理しないで、ね?」
7歳位の男の子か女の子かわからない小さくて可愛い子が大袈裟に驚いたあと、私の肩を宥めるようにポンと叩いた。ショートパンツに謎のロゴが入ったTシャツを着ている。肩に掛からない程度の髪はさらさらとした綺麗な金髪。大きくくりっとした瞳は晴天の空の様な蒼。肌は白磁のようになめらかだ。
そう、まさに、金髪碧眼!!王道であり、保証された絶対正義!それに鈴を鳴らす何処かで聞いた事のある…?あれ、私この子の声を何処で聞いたんだろ?
私が考えていると少年(少女?)から声をかけられた。
「お姉さん、少しは落ち着いたかな?じゃあお話しをしようか。」
「待って。その前に貴方について知りたいな。」
そう言ったら少年(少女?)が口角を上げてニヤリと笑う。どう考えても年齢と言動があっていない。そして人をからかうように呼びかけた。
「お姉さんはどう考えてる?あ、名前を教えてなかったね。名前は、そうだなぁ…"フェアハイト"。そう呼んでよ。けど、長くて呼びにくいならフェアでもいいよ。まぁお姉さんは他の事を話したいよねー」
「そうだね。まず男の子なのか女の子か聞きたいな。」
「あはは!お姉さん1番に聞くのがそれ?正体だったりもっと他に聞くことがあるでしょ。なら、お姉さんはどっちだったら嬉しい?」
うーん。悩むなぁ。どっちでもありだと思うし、本当にそれくらい可愛いからなぁ。けどやっぱり答えはこうかな?
「私は男の娘だったら嬉しいね。だけ…」
「あははははは!!お腹痛い!!も、もうお姉さん面白すぎ!腹筋が壊れちゃう!!」
お腹を抑えながらフェアは床を転げ回った。こっちが心配になる位に転げ回っていた。けど、一通り笑ったのかフェアはゆっくりと起き上がった。
「あー、面白かった。一人称はボクにしよう。さあ、お姉さん!」
「は、はい!」
「ボクに質問したいことはあるかな?」
私は迷った。何から聞けばいいのかわからない。
というか、今いるここどこよ?どこを見ても真っ白じゃん。出口が見えない。もしかすると出口がない?
そう、今いる空間はとにかく真っ白だ。果てが見えない。天井もわからない。けど、一番不可解なのはフェアの存在だと思う。だから私は質問することにした。
「フェア、貴方は何?」
「何、どういうこと?」
「えっと、私は貴方の存在を聞きたいの。貴方位の子がこんな所に居るわけだから何か理由があるのかな?」
フェアは今までで1番いい笑顔で私に笑った。
「よくぞ聞いてくれた!ボクはこの世界の神様だよ!君にはボクの物語の主人公になってもらうために連れて来たの!!」
ちょっと何を言っているのかわらないんですけど!!
これが私と神の出会いだった。
残念ヒロインの成長物語です。これからどうぞお願いします。次は、転生です。