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道参人夜話  作者: 曽我部浩人
第九章 ~ 守宮
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序章 守宮の談




 見切りをつけたかったのだ──社会に。


 もはや人間の世界には何の感慨(かんがい)も抱けなくなっていた。


 衣食住を確保するためあくせく働き、仕事をすれば誰かに気を遣い、頼んでもいないのに国家の一員され、持っているものを税だと取り上げられ、世間体とやらを気にして、自分らしく生きることも許されない。


 もう──疲れた。


 社会という縛られた世界で生きることに……。


 わたしは自由に生きたい──なのに、制約が多すぎる。


 まとわりつく人の世のしがらみが鎖のように重く、その鎖の先には求めていない重荷がいくつも繋げられ、わたしを自由に動かせてくれない。


 自由闊達(かったつ)、自由奔放(ほんぽう)、自由自在(じざい)──もっとわたしに自由(じゆう)をくれ!


 しかし、人間の世界では許されない。


 生まれ落ちたその日より両親からの血に縛られ、家族という(かせ)にはめられ、村落(そんらく)という(わく)に囲まれ、国家という(おり)に閉じ込められてしまう。


 わたしはそこから逃げたかった──いいや、逸脱(いつだつ)したかったのだ。


 何者にも縛られず、何事にも阻まれない、そんな世界を夢見るようになった。


 あらゆる(くびき)から解放された世界、すべてが己の自由となる世界。


 それこそ楽園ではないか──自由を本領とするわたしのための楽園。


 人間の世界から遠く離れた理想郷(アルカディア)。人間が適当に決めた約束事など通じず、誰からも束縛されない、自分らしく生きていける世界。


 ありのままにわがままに生きていける──わたしの楽園。


 そんなものが何処(どこ)にある? 


 などと問われれば、わたしは満面の笑みで答えよう。




「なければ創ればいいじゃないか──わたしの求める楽園(パラダイス)を」




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