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小説 異能恋学:背中合わせの文化祭  作者: 銀狼&雨柚木優輝
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前置き:世界観及びメインキャラ設定 これまでの軌跡

 この世界には<異能>という概念がある。

 例を挙げるならば、火や雷を発生させて操ったり、瞬間移動をしたり、果てには治癒ができたりといった通常人間が持ちえない特殊な能力のことである。

 15歳までに異能の発現が見られた場合、少年少女達は中学校卒業後に能力者育成のための施設、国立下山高等学校へと入学することになる。日本全国津々浦々、国籍等も関係ない。異能の発現があれば、日本国にいる高校生の年頃の少年少女全員がこの高校へと集約されるのである。

 そんな国立下山高校は非常に大規模であり、生徒数は約5000人とも言われている。例えば1年A組を見てみると、1クラスで7、80人が在籍しているといった有様だ。学年毎に教室棟が建てられていたり、数多くの店舗が入る食堂や研究施設があったりと敷地も広大なものである。



 常とは異なる能力を持つが故か、複雑な事情を抱えている者は決して少なくはない。今回話の中心となる二人もまた然り。

 一人目。名は「ジョウ・ライナー」16歳。1年A組。出身はアメリカ某所の孤児である。そして本来の名は、ジャック・ツェルーペス。

 本来の「ジョウ」の名の持ち主は、アメリカ孤児院時代の彼の親友だった人物。孤児院から能力研究開発施設に移った後も仲良く暮らしていた二人だったが、ジョウは能力を発現した後、凶悪な殺人鬼と化してしまった。施設の人間も、孤児院の人達も、全てを血の池に沈めたのである。

 ただ一人生き残った彼は、ただただ必死で彼から逃げ隠れする生活をすることになった。それは並大抵のことではなかった。

 ジョウが発現した能力は〈人体強化〉、人体が持つあらゆる能力を強化するというもの。思考能力を強化し、変装で目を誤魔化せば聴力を強化、足音を聞き分けて後を追われ、足音を消して人混みに紛れれば嗅覚を強化し臭いを嗅ぎ分ける。五感と思考の全てを強化したジョウからの逃走という生き地獄に、何度諦めかけたか知れない。それでも彼は踏み止まり、必死の逃亡を続けた。

 まさか獲物が狩人の名を騙るなどとは思うまい。そう考えたジャックは敢えて「ジョウ・ライナー」を名乗った。得られる限りの知識を身につけ、知恵を絞り、取れる手段を全て使って東へ東へと逃げ続ける。その過程で彼は、〈透過移動〉の能力を発現することとなった。

 自身の体質を変化させ、あらゆる物質をすり抜けて移動することが可能となるこの能力。透過中は物質に干渉出来ないが、逆に言えばそれは、透過中は周囲からも一切、物理的には干渉されないということでもある。

 熱や音も発さず、光も透過するため姿が見えない。重力すら不干渉になる。入口や出口は同じ物質でなければならない、またその二つの距離は20m以内でなければならないといった制限があるが、ジョウからの逃亡には非常に役立った。

 そうして逃げ続けて、彼は極東の日本国に流れ着く。縁あって児童養護施設を経営する涌井家に居候することとなり、学校に通い、そして中学校を出て下山高校に入学することとなった。

 しばらくは何事もなく平穏に過ごせていたが、そんな日々にも終わりが訪れる。ジョウが後を追って、ついに高校にまで姿を現したのだ。『ジャック・ザ・リッパーの再来』と呼ばれるまでになった彼は、あろうことか「ジャック・ツェルーペス」を名乗り活動していたのだ。

 そのことを知った瞬間、ついに堪忍袋の緒が切れた。激情に身を任せ、ジョウをマグマの中に葬り去った。

 家族ともいえる者達を失い、居場所を失い、己の名をも失った。悪名高い名にはもう戻れない。そして何より己の手で命を奪い、親友だった者を失った。あらゆるものを失った彼は、自嘲気味に呟いた。

「殺人鬼『ジャック・ツェルーペス』はジョウ・ライナーが葬った……それでええがじゃ」

 そうして彼は、殺人鬼と化した、親友だった者の名を、自分を偽り続ける業を、一生背負って生きていくこととなった。



 二人目。名は「虚空零(こくうぜろ)」16歳。1年B組。

 彼女の異能は見た絵を具現化する〈想絵〉、具現化能力の類に分類される。落書きから絵画まで、絵であれば大概のものの具現化が可能。また絵に描ききれていない見えないところや細部は、自分の持つ情報や想像力を駆使して補っている。絵と情報と想像力、それらが整えば多彩なことに使用可能ではあるが、人一倍コントロールはできないため、限界を迎えると倒れてしまう。

 また、コントロールができなかったことで、彼女は一歩道を踏み違え、自身が望まない力の振るい方をしてしまった。その過程で、彼女はとあることに気づく。

 力を使えば使う程、自分の「記憶」が段々と薄れていっていることに。その上、自分が力を使って一体何をしているのか、その分の記憶も全て無くなり始めていることに。

 辛うじて覚えているのは、暗闇で月明かりが地面を明るく照らす中、数人の人物が武器を片手に全員倒れていること。壁や地面のところどころが、不規則な紅い斑点模様となっていること。そして、自分の両手が紅く染まり、頬には涙が流れているのにも関わらず、自分の顔は力の抜けた笑みのようなものが浮かんでいたこと。

 止めようとしてもそれは止められなかった。何度も何度も繰り返されるそれは、何故、そうなっているのかが全く分からなかったから。

 自分が誰かを傷つけてしまっている。同時に記憶は、昔のことも今のことも思い出せなくなっていく。誰にも言えないまま、誰にも相談もできないまま、それら二つは彼女の精神を確実に蝕んでいった。それらは彼女にとって「恐怖」それ以外のなにものでもなかった。

「どうせ俺は0だから。0以上、プラスの値になることなんてないんだ」

 過去、そして記憶のこと。両方を抱えた彼女は、それを誰にも悟られないよう極力人との関わりを避け続け、ひっそりと学校生活を送っていた。



 二人の出会いはほんの些細なものだった。廊下で偶々出くわしたという、ただそれだけの事。運命的な出会い方をしたわけでも、一目惚れをしたわけでもない。しかしそこから、歯車は大きく動き出した。


 ジョウは知ることとなった。零が抱える二つの闇を。知った上で、彼女の全てを受け入れた。一度存在を忘れられてもなお彼女と関わり続ける道を選んだ。

「I'm always with you」

 嘘偽りの無い彼の言動に、零は孤独から解放された。


 零は知った。ジョウが抱える闇の深さ、その覚悟の程を。それらを全て受け止めてなお、彼女は本質に目を向けた。

「それでもお前は、ジャックだろ。お前に俺のこと背負わせっぱなしじゃいられねぇ。お前が背負ってるもん俺にも半分背負わせろ」

 純真無垢な彼女の言葉に、ジョウは失いかけていた己の本質を取り戻すことが出来た。


 どちらも過酷な試練に苛まれながら、互いに救い救われて、相思相愛で支え合っていく関係が醸成された。何度も大きな困難を乗り越えてきた二人の絆は、他の誰より深いと言っても過言ではないのかもしれない。



 さて、そんな者達が通う国立下山高校であるが、異能者の生徒が集まるという以外は通常の高校と変わらない。各教科の授業が行われているし、様々な行事についても同じこと。個々の事情はお構いなしに、時が来れば起こるべくして行事が開催されるのである。

 ときに季節は10月中旬。国立下山高校に、秋の一大行事が迫っていた。


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