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ひとつめ

「で、さっきのは何だったんだ?」


俺は呆れながら質問してみた。


《分からんのか!? 漢達の感動の別れだ!》


さっきの涙は何処へやら、あっけらかんと言い放つかっちん。

俺達は徒歩で街道を歩き街へ向かっている。

盗賊情報によるとここから街道沿いに十数キロ進めばギロの街。

さらにそこから数十キロ行った所にこの国最大の都市『自由都市フリーディア』があるそうだ。


この大陸には三つの国に分かれているらしい。


今俺達が居るのが連合国ターシュ。

連合国と言って分かるように多くの小国が合わさって出来た国で、多種多様の種族が混在する。

だから国のトップは人族、獣人族、水人族、魔族の代表四人。通称『四族長』というものを中心に成り立っているそうだ。

そして貴族がいない。

階級や種族の差別等は無く比較的種族間の仲は良いそうだ。

他国に比べ冒険者の数が多いらしい。

各街に一つはギルドがある。ギルドとは所謂冒険者に仕事を割り振る施設だ。

ギルドに冒険者か異世界物の小説ではお約束だな。



次にガノン帝国

こちらも異世界お馴染みの皇帝による独裁国家。

ガチガチの階級差別。平民は貴族の家畜……それが当たり前の国。

当然のように奴隷制度有り。

虫唾が走るわ。



そしてノウム王国

穏やかな国王を中心に団結力が高く、国民も毎日笑って過ごせるようなとても平和な国だったそうだ。

だったそうだ、と言うのは数年前から急に鎖国をして他国からの出入りを禁止してしまい国の様子がまったく分からなくなってしまったそうだ。



とりあえず分かっている世界の情報はそんなとこだろう。

まぁ、帝国と王国にはまだ行くかどうかも分からんし、別にいいか。



「ところでさっきお頭から何か餞別とか言って貰っていたな、何貰ったんだ?」


ふとさっきの事を思い出して聞いてみた。


《ん、そういや何だろ?》


かっちんはそう言ってさっき渡された物を取り出した。

それはソフトボールほどの大きさの丸い物が入った皮の袋だった。

かっちんが差し出してきたので手に取ろうとした時、掴もうとした手につけている腕輪が眼に入った。



《……? どうした、いきなり固まって》


袋を掴もうとしている状態で固まっている俺に対してかっちんが聞いてきた。


「なぁ、かっちんの腕輪ってどうなってる?」


《は? 腕輪なら着ぐるみの中だが?》


そう、かっちんは着ぐるみを着ている所為で腕輪が見れない。


「じゃあ、俺の腕輪を見てみ……」


俺は腕輪がかっちんによく見えるようにローブの袖を捲って見せた。

いや、正確には腕輪についている石が見えるように。


《一体何がある……、は?》


かっちんも気づいたらしい。

今俺の腕輪に起きていることを……。


《まさか、これって……》


そういいながら自分が手に持つ皮の袋を見た。

ここまでくれば分かるだろう。


元々腕輪についている石の色は青。

現在の石の色は赤。


つまりこれは俺達の探している……。



「《神器だあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!》」



え? ちょっと待って、早くない?

俺達がこの世界に来てまだ二日目なんですけど!?

固まった体勢のままお互い目をあわせた。


「ととと、とりあえず。な、中身を見てみようか」


《おお、おう。そ、そうだな》


2人して挙動不審になっていた……。



《じゃ、じゃあ開けるぞ》



そう言ってかっちんは袋の紐を解いた。

袋の中を覗くとそこにはいっぺんの曇りも無い、それこそ少し離れればそこに在るとも気づかないような水晶玉が入っていた。


これが神器か、と俺達は目を見開き瞬きすらも忘れて見入ってしまっていた。


「凄いな……」


《あぁ、凄く綺麗だ……》


そう言ってかっちんは袋の中に手を入れそっと水晶玉を抜き出した。

隠すものが無くなりすべてをさらけ出した水晶玉は袋の中に在った時とは比べ物にならないほど幻想的で神秘的な輝きをしていた。


俺はハッと思い出すように意識を戻した。


「っと、何時までも見入っていても仕方が無い、そろそろ神の爺さんに送ろう」


その言葉にかっちんも我に返って、そうだなと言った。


《で? どうやって送ればいいんだ?》


そう言われて俺は送り方をどうやるのか考えた。

確かにどうやるんだっけ……?

ふと、神の爺さんが言っていた事を思い出す。

「使用者が神器に触れると自動的にワシの元に回収できる」


あれ? かっちん触ってるよな……?

何で回収されないんだ?

腕輪が赤くなるってことは本物のはず……。

あ、もしかしてかっちんが着ぐるみを着ている所為か!

回収するには使用者が『素手で』触れることが必要なのか?


「確か腕輪の使用者が触るだけでいいって言っていたけど、たぶん素手じゃないとダメっぽいな。俺が触ってみるよ」


かっちんは俺の言葉を聞いて一度頷いて水晶玉を俺の方に差し出した。

俺は恐る恐る水晶玉に触った。

すると水晶玉は一瞬輝いてから光の粒となって消えていく……。

消えていくときも幻想的だった。



しかし、水晶玉が消えた直後腕輪がブルブルと震えだした。

何事かと思い、俺とかっちんはお互いに目を合わせ、同時に腕輪の通信を繋いだ。


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