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初戦闘

「おいおい、マジかよ……」


俺は狼を正面に見据えながら一歩後ずさる。

小説だと何気ないように書かれているが、実際に遭遇してみると半端じゃない怖さだ。

狼は徐々に間合いを詰めて来る。


魔術師になってみたものの、まだ一回も使った事が無いのでやり方がわからない……。

何? イメージすればいいのか?


と、あれこれ考えているうちに先頭にいる狼が勢いよくこちらに駆け出し、俺の数メートル前で牙をむき出して飛び掛ってきた。


「うわっ!」


俺は無意識のうちに両腕を顔の前に出して目を瞑った。

その瞬間、パアンという音が響いてその直後ドサッと何かが落ちたような音がした。


俺は何の痛みも衝撃も感じなかったので、恐る恐る目を開けてみると目の前には先ほど飛び掛ってきた狼が倒れていて、後ろにいた二匹の狼も一歩後ずさりながら警戒するように俺を見ている。


「は?」


俺はまだ状況がつかめずキョロキョロと周りを見渡した。

特に何も変わった事は無い。


ふと、自分が身に纏っているローブが淡い光を放っている事に気付いた。


「神の爺さんから貰ったローブ……。そう言えばある程度のダメージなら自動障壁で守ってくれるって言ってたっけな……」


思い出して安心したら、急に気が楽になった。

狼の攻撃はそれ程強いわけではないようなので、コイツらには魔法の練習台になって貰おう。


「とりあえずイメージしてみるか……、周りに影響の少なそうな風魔法でと……」


俺は手の平に集中して、イメージをする。

とりあえず空気でできた玉……ソフトボール程の大きさを想像してみる。


なにやら手の平が暖かくなってきた。

できたのかな?


俺は片方の狼に向けて飛んでいくように念じてみた。


空気の玉は俺の念じた通りに狼に向かって飛んでいき、見事命中した。


玉が当たった狼は数メートル飛ばされて、数度痙攣をしたら動かなくなった。


いきなり仲間が吹っ飛んでいくのをみた最後の一匹は更に大きな唸り声を上げながらこちらを睨んでくる。


しかし俺は先程のような恐怖感はなく、次に出す魔法について考えていた。


(次は少し具体的に想像してみよう)


先程と同じように手の平に集中する。

今度は同じ様に空気の玉を作り、その玉の中で小さい風を巻き起こす。

上下左右乱回転、玉の中では風がぐちゃぐちゃとかき混ぜられていく。


そう、俺が作っているものは某忍者漫画の主人公が使う風の玉……螺○丸だ。


完成した玉はキュイィーンという甲高い音が鳴っている。


玉ができたと同時に狼が俺に向かって飛びかかってきた。


「よし、行くぞ! 螺○丸!!」


そう叫んで玉を狼の鼻っつらに叩きつけた。


その瞬間。


ガリガリガリガリという音とともに狼が頭から無くなっていく……。


まるで鉛筆削りのようだ。


血が舞い散り、肉が飛び散る。


「ぎゃあああああああっ!!!?」


目の前で起こっているとんでもない状況に俺は悲鳴を上げた。


胃からこみ上げてきたもの抑えられない……。


俺は吐瀉物を撒き散らし、狼は血肉を撒き散らした。






結論からいうと、アニメや漫画の技はある程度再現出来ることがわかった。


ただ、使用した結果は原作とは似ても似つかなかった。


何というか……結構凶悪なものだったのだ。

なのでそういうものは封印する事にする……。



俺は狼を倒したあとは返り血を落とすために水魔法を使用して、手と顔を洗い流した。


服についたものは気付いたらきれいさっぱり消えていた。

おそらくこの服は自動修復するのだろう。

洗濯いらずのようだ、ありがたい。



洗い流した後はまた芝生のうえに座り込んで、さっきの戦闘の事を考える。


(さっきのはキツかった……。まだ胃が気持ち悪い。ここは異世界なんだ、やっぱり元の世界とは違う。覚悟決めなきゃ生きていけないのか……)


俺は異世界を甘く見ていたみたいだ。

小説でも命のやり取りについての葛藤は書いてあった。


さっきみたいに毎回吐いていたら身体がいくつあっても足りないと思う。


気持ちを切り替えなきゃ行けないな。



そう考えていると後ろから、


《おぉ、終わったか。お疲れさん》


気の抜けるような声が聞こえてきた。

コイツは今更ノコノコと戻って来やがって!


流石に我慢の限界だった……。

一発ぶん殴ってやろうと勢いよく振り向いた。


「ぎゃあああああああっ!!!?」


先程と同じように悲鳴を上げてしまった。


だって、目の前にいたのは……。




身体の所々が血で赤黒く染まり、手や足の数カ所が破れて素肌がみえている。

着ぐるみの顔に関しては、片耳がもげて無くなっている。目は取れているが、かろうじて糸で繋がっていて垂れ下がった状態だ。表面にも、おそらく咬み跡らしきものがついていた。

しかも涎なのだろうか、身体の至る部分がべと付いている。


ちなみに、物凄く獣臭い。



「お前、襲われてんじゃねぇか!!!?」



そんな衝撃的なものを見てしまった俺は怒る気も失せて叫んでしまった。




《いやぁ、参った参った……。逃げた先に狼が八匹もいてマジビビったわ。でもまぁ何とか倒せたからよかったよ》


かっちんはあっけらかんとして笑っていた。


コイツ、戦闘用の能力無いのに狼八匹もいてよく生きていたな……。


あ、チートのおかげか……。


《あ、そう言えばさっき逃げるときに向こうの方で野営してる集団がいたぜ!》



何だと!?


《行ってみようぜ!》


そう言ってかっちんは後ろを振り返った。


「ぎゃあああああああっ!!!?」


俺の三回目の絶叫。


正面からでは気付かなかったが、振り返ったかっちんの着ぐるみの後頭部に狼が噛みついたままぶら下がっていたのだ!


俺は思わず空気玉をかっちんの背中(狼に向けて)にぶちかましていた。


《ぐえっ!?》


「ギャウン!?」



派手に吹っ飛ぶかっちんと狼。


「あ……」


狼八匹に襲われた上に仲間からの攻撃、哀れかっちん。




スマン(合掌)……。

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