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勧誘……だったが。

「ヒック、グスッ……」


俺達とテーブルを挟んで泣いているミニャンさん。

両隣にはロキとホタがガッチリガードしている。


《じーー……》


俺の横には縄でギチギチに簀巻きにされたかっちんが床に転がっている。


その視線はいまだにミニャンさんを捉え続けている。


かっちんが身じろぎする度にミニャンさんは敏感に反応する。


完全にトラウマになってしまったようだ。







あの後、残された俺達四人は我に返って二人を急いで追いかけることにした。


二人を探すのは俺、ロキ、ホタの三人。

シユンにはギルドに残ってもらい待機、兼周りへの説明をしてもらうことにした。



もうこの時の事は割愛させてもらう。


とりあえず、俺達は二人を見つけた。

二人は人気のない路地裏にいて、かっちんがミニャンさんを追い詰めていたところだった。

何とかギリギリのところで間に合って、俺がかっちんをフルボッコにして引きずって帰った。

ロキとホタはミニャンさんを保護した。


そして現在に至る。




《じーーーーーー……》


かっちんは戻ってきてから一言も喋らないが、微動だにせずミニャンさんを凝視し続ける。

その間ビクビクしているミニャンさんの様子を見てこれでは話しが進まないと思い、近くにいた屈強そうな大柄の冒険者を手招きして呼んだ。


彼は何故呼ばれたのか分からない様子だったが、素直にこちらに来てくれた。


「な、何か用か?」


屈強そうな雰囲気とは裏腹に少し腰が引けたように疑問を口にした。


「あ、すいません。申し訳ないんですが『コレ』を受付まで持って行ってもらっていいですか? ……おい、受付で登録して来い!」


そう言って床に転がっている簀巻きを足で小突いた。

床の『ソレ』は俺に足蹴にされてもまったく反応せず、相変わらすミニャンさんを見続けている。


冒険者さんは一瞬顔を引きつらせて唾をゴクッとならした。


「お願いします。今は無害なんで……、なんでしたらこのロープで引きずっていっても構わないんで」


そう言って簀巻きに括ってあるロープを冒険者さんに渡す。

彼は観念したのか、おっかなびっくりしながらも簀巻きを引きずって受付に向かった。


これで何とか話しができる状況が出来た。


「さて、話しの続きをしましょう。」


そう言って気を取り直した。


しかし、返ってきた言葉は、


「すいません、凄く申し訳がないんですけど……。あの、本当ならば僕達のパーティに入ってほしいという話しだったんですが……」


ロキがそう言葉にした瞬間ミニャンさんが勢い良くロキの腕を掴み涙目になりながらイヤイヤと首を横に振る。


「……と、言うわけなので今の仲間との間に確執を作るのも不味いので。すいません、こちらから呼び止めてしまったのに……」


そう言ってロキは深々と頭を下げた。

そんな申し訳無さそうにしているロキを見て、俺は溜息をつき。


「いや、むしろウチの相棒(バカ)が迷惑をかけたし、謝るのはこっちの方だよ」


正直俺はまったく悪くないのだが、相棒(アホ)を止められなかった罪悪感があったので謝罪の念を込めて頭を下げた。


そして忘れていたとはいえ、かっちんの行動を予測出来ていたはずなんだが、こっちの世界に来てアイツが彼女の事を一言も言わなかった事で失念していたのだ。


「それと、パーティには入れないけど困ったら言ってくれ。アイツ抜きで手伝える事があったら、微力ながら協力するよ」


普段の俺なら面倒事は極力避けるのだが、今回の事で罪悪感があるのでそう言っておく。


まだこの世界に慣れていないが、簡単な事位なら手伝ってもいいか。

折角この世界に来て好意的に接してきてくれているんだ、持ちつ持たれつ助け合いした方がいいに決まっている。


俺達が困ったときに助けて貰う為にもな……。


そんな打算的な考えがよぎったがこの際少しくらいいいだろう。


「ありがとうございます。では、もし何かあったらお互いに協力しましょう。……彼抜きで」


ロキも苦笑いをしながら最後の言葉を念押しした。


俺も同じく苦笑いしながら、了解と返す。


「では、彼が戻ってくる前に僕等は行きますね」


そう言って席を立った。

ミニャンさんはまだ立ち直っていないようで、スンスンと鼻を鳴らしながらホタとシユンに支えられながら立つ。


最後に皆と挨拶を交わして別れる。


ロキを先頭にホタとミニャンさんが続き、シユンが一礼して皆を追う。

そして最後に着ぐるみが後ろに続いてギルドを出て…………ちょっと待て。



俺は急いで追いかけ、着ぐるみの首根っこを引っ掴み床に叩きつけた。

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