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《君に出会えて》

後ろを振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。


背丈は俺と同じくらい。

髪は肩に掛かるかどうかほど。

目は少しツリ気味だがキツイという印象はまったく無い。


俺はその女性を見て驚いた。


「タ、タマミさん!?」


そう、その人は俺の知り合いに瓜二つの姿をしていた。


「タマミ? ちがうにゃ、私はミニャンだにゃ」


そう答えた女性をよく見ると頭から猫耳が生えていた。


「いえ、すいません……。知り合いにそっくりだったもんで」


そう言って頭をかきながら改めてタマミさん……いや、ミニャンさんをみた。

うん、やっぱり似ている。


「そうだったんですか。とりあえず紹介します。僕達の仲間のミニャンです」


「ミニャンだにゃ。見ての通り猫人族、職業はシーフをしてるにゃ。趣味は寝る事。よろしくにゃ」


そう言って手を差し出してきた。


「ああ、よろしく。俺はヒロト・サイトウ、魔術師だ」


ミニャンの手を取り握手をする。


「これで僕らのパーティは全員だよ。ところでヒロトの仲間はいつ頃来るんだい?」


ロキがそう言ったと同時にかっちんから連絡が入る。


《終わったんだが何処にいる?》


「(今ギルドにいる。大通りを進んでドラゴンと剣の描かれた三階建ての建物だ)」


《了解》


「ああ、もう用も終わってるはずだから。もう少しすれば着くはずだよ」







かっちんを待っている間、三人と雑談をしていた。

主に冒険者という仕事について教えてもらっていた。


そして、


《着いた。中にいるか?》


「(ああ、入ってきな。入って右側のテーブルにいるよ)」


その通信のすぐ後に入り口にかっちんの姿が見えた。

俺はロキ達に仲間が来たことを伝え、かっちんに手招きした。


《おう、待たせたな》


入り口に背を向けていたロキ達三人も振り返りかっちんを見据えた。


「「「「《……え?》」」」」


顔を見合わせた四人はピタッと固まった。

ロキ達四人はかっちんの着ぐるみ姿を見て。

かっちんはミニャンさんの姿を見て……。



ロキ達は少ししたら落ち着き始めた。

さっきの雑談中にかっちんの事も話していたのだ。

呪いに掛かったから外見は気にするなと……。


しかし四人は話しを聞いていて理解していたが、見た瞬間は戸惑ったみたいだな。



「かっちん、この人は《とうあああぁぁまあああぁぁみいいいぃぃ!!!!》」



かっちんはいきなり叫び声……いや、雄叫びを上げながらミニャンさんに飛び掛った。


「にゃ!?」


ミニャンさんはいきなりの事で目を見開き、一瞬身体をビクンと跳ね上げたが猫人族特有の俊敏さで間一髪避けることが出来た。


避けられた事でかっちんは床に倒れ込んだが、ゆっくりと身体を起こし四つん這いの体勢で固まった。




俺とかっちんが呼んだ『タマミ(さん)』とは本名『間壁 珠美』。

俺達のいた世界の知り合いであり……。



かっちんの……。


かっちんの彼女だ……。


《…………タ…………タ……マ……ミ…………タ、マ、ミ、タマミ……タマミ……タマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミタマミ……タタタタタタタタタタタマタマタマタマタタマタマタタマタタママママタタマタマタママタタマミミミミィィィィィィィィィィ……》




この時点で周りの人達もかっちんに注目し、皆がかっちんを認識した。


「お、おい!何だありゃ?」


「マジかよ、何で魔物が此処に?」


「あんな鳴き声聞いたことねぇぞ……」


ざわめきが大きくなる。


しかし次の瞬間。


ぐりんっ!と着ぐるみの頭部が百八十度回転し、こちらを見据えた。


「ひっ!?」


ミニャンさんが短く悲鳴を上げる。


それもそのはず。半回転したかっちんの頭部、その視線の先にはミニャンさんがガッチリとロックオンされているのだから。


かっちんがミニャンさんに視線を送ってから時間が止まった。

周りの人達のざわめきも止まった。


そして数秒か、はたまた十数秒か……。

ミニャンさんは蛇に睨まれた蛙状態。


誰かがゴクッと唾を飲み込んだ瞬間。


《タ~マ~ミ~~~!!!》


かっちんは這いつくばったまま背中から向かって来る。

しかし頭部はミニャンさんに向いたままなのが気持ちが悪い。



カサカサカサカサという擬音が聞こえてきそうな動きを見て、


「いやあああああああ!」


「ひいいいいいぃぃぃ……」


「ぎゃああああああ!!!」


と周りが阿鼻叫喚の地獄絵図となった。


特に大きな悲鳴を上げているのは襲われている張本人のミニャンさんだ。


「にゃあああああああああ!? 何なのにゃ!? 何なのにゃ!?」


ミニャンさんは血の気が失せた青白い顔で、涙を流しながら必死に逃げる。


《ドウアアアアアァァァモウアアアアアァァァムイイイイイイィィィ》


腹から響き渡る重低音の叫びを上げながら追いかけるかっちん。


意を決してギルドの扉を蹴破り外に飛び出すミニャンさん。

その後を追って這ったまま飛び出していくかっちん。


二人が居なくなったギルドは誰しもが固まり、黙って扉を見つめている。

静寂が包み込んでいた。





後日、猫人族の女性を執拗に追いかける物の怪が現れるという都市伝説が街中に広まったとかなんとか……。

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