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ギルド

かっちんが連れて行かれてからしばらくの間呆然と立ち尽くしていた俺は、不意に手首からの振動によって我に返った。


かっちんからの連絡だった。


《悪い、捕まった……》


そう一言だけ呟いたかっちんだが、焦っている様子はない。


「……いったい何をしでかしたんだよ」


俺は額にと手を置き、若干の呆れた声で言った。


《少し門番の人達と話しをしてみて、もしかしたらだけど盗賊との義兄弟の杯を交わした事で俺も盗賊としての前科が付いたのかもしれない》


話しによると、盗賊行為をしなくても仲間になっただけで前科が付くらしい。


一応情報収集のため盗賊の仲間になった振りをしたという経緯を門番に話したら、真偽を確かめるために嘘発見器的な魔道具をとりに行ったらしい。


《だから、まだ時間が掛かりそうだから先に街に入っていていいよ。終わり次第連絡する》


そう言ってかっちんは通信を切った。

まあ、嘘は言ってないから確認が取れ次第解放されるだろう。


さて、どうしようか……。

飯を食うにも宿を取るにも金がいるが、俺達は金を持っていない。


先立つ物がなければ今日は何も食えない上に野宿になる。


となると、ギルドか。


街の人に場所を聞いて向かった。






「ここか」


教えてもらった場所に行くと、三階建ての建物があった。

周りの建物に比べて一回り大きく、ドラゴンの下に剣を交差させたような看板が掲げてある。


俺は意を決して中に入った。


内装は入り口から見て手前に丸テーブルが十数あり、奥に受け付けが三つ程あった。

丸テーブルの半数には鎧やローブを着た冒険者らしき人達のグループが座っている。


さて、登録するには受付に行けばいいかな。

そう思い丸テーブルの間を縫うようにして奥に向かう。


ギルドで登録って言うと小説ではよく受付中に柄の悪い奴に絡まれるってイベントが起こるんだよな。

出来ればそんな面倒くさい事には関わりたくないし、さっさと登録して金を稼ぎに行かなきゃな。


と思っていたら、急に足が何かに引っかかって盛大に転んでしまった。


「ひゃひゃひゃ、おいおい兄さん何なんもない所で転んでるんだ?」


頭の上から馬鹿にしたような声が聞こえた。


ふと声のする方を見るとニヤニヤ笑いながら此方を見下ろす皮製の防具にみを包んだ出っ歯の男がいた。

頭の上にちょこんと乗った二つの丸い耳、頬から伸びる両側三本ずつの髭。


ネズミか?

おそらく獣人なんだろう。

この世界で初めて面と向かってみた見た獣人がこんな奴だなんてついてない……。


しかもこいつワザと足を引っ掛けやがったな。

まさか受け付けに着く前に絡まれるとは考えもしなかった。


……面倒くさいから相手にしないでさっさと受付に向かおう。


「ああ、心配させて申し訳ない。前に出した足が自分の足に引っかかって転んでしまったよ。よくあるんだ、気にしないでくれ」


そう言って立ち上がり何も無かったように男を横切り受付に向かおうとした。


一瞬ネズミの男はポカンとしていたが、馬鹿にされたと思ったのか顔を真っ赤にしながら


「テメェいい度胸してんじゃねえか! 魔術師が一人できやがって、前衛が居なきゃ戦えない臆病モンの分際で調子に乗ってんじゃねえぞ!」


そう言ってきた。


俺がローブを着ているので魔術師と断定したらしい。


俺はふと思った。

この世界の魔術師は立場が弱いのか?

爺さんからはそんなこと一言も聞いてなかったけど……。


「テメェらなんか長ったらしい詠唱さえ邪魔すれば何の役にも立たないゴミの癖によ!」


なるほどな、爺さんは確かに言ってたな。

魔法は詠唱しなければ使えない。

でも俺はギフトで詠唱破棄を貰っているから、爺さんも特には言わなかったのかもしれないな。


とりあえず早くこの厄介ごとから逃げたい。

周りを見渡すと、皆好奇の目をこちらに向けている。

いや、悪意のある目は一つも無い。

まるで見世物のようにこの後どうなるか、酒の肴の如く楽しみにしているようだ。


ちなみにネズミの男を睨みつけている目線もチラホラある。

その人達は皆ローブを着ていることから魔術師の人達らしい。


「あぁ? なんか言えよ。ひゃひゃひゃ、ビビッてんのか?」


俺が何も言わない事にコイツはなんか勘違いをしはじめた。

何かイラつくな、後で面倒くさくなりそうだけど……。


「エアーボール」


ドゴッ!


魔法名だけ言い空気の玉をぶち当てた。

ネズミの男が吹っ飛んで壁に叩きつけられた。

ピクピクと痙攣してるし、手加減したから生きている筈だ。


すると周りがざわつき始めた。


「おい、アイツ詠唱短縮したぞ!」


「マジかよ、ギフト持ちだぜ」


「しかもエアーボールって初級魔法だろ? 人があんなに吹っ飛ぶ威力ってどんだけだよ」



……既に面倒臭くなってきた。

何かギフト持ちだってばれたし。

詠唱短縮ってギフトあるんだ……。


あ、でもやっぱりエアーボールって名前あるんだ。

小説にありそうなのを即席で唱えたんだけど、初級魔法ね。覚えた。



「な、なあ君。ちょっといいかな?」


俺がそそくさと受付に行こうとした時に後ろから声をかけられた。




……またか! いい加減にしろ!! 俺を受付まで行かせろ!!!

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