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ギロの街へ

ギロの街に到着。

街道は何事も無く通ってこれた。

実際小説とかじゃヒロインとかが魔物や盗賊に襲われて、それを助けて一緒に街まで来るって流れがあるんだろうが、現実はそんなにポンポンとイベントなんて起こらないものだよな。


ちなみに俺にはヒロインとか出てこなくていい。

だって面倒くさいじゃん。

そういう娘って大概美人の冒険者とか姫様とか逃げ出した奴隷とかだろ?

でもって結構周りから評判がよかったりその子に恋慕してる奴とかいて絡まれたりとかするんだ。

そんなことに巻き込まれたくは無い。

俺の好みは何処にでもいるような普通の町娘のような娘がいい。

顔も普通、性格も普通、周りの評価も普通。そんな娘がいい。


とまぁ、俺の好みはこのさい関係ない。


現在俺達はギロの街の門の前にいる。

大きな門の前に桟橋がかかっており、門の前から桟橋の終わり際まで人の列がならんでいた。

何だろうと思い、列の最後尾にいる顎鬚を蓄えた商人のおっさんに話し掛けた。


「すいません。これは何の列ですか?」


「うん? これは街に入るための審査待ちをしているんだか、知らないのかい?」


やっぱり街に入るために審査するのは常識なのか……まあ異世界物の小説では常識だしな。


「ああ、そうなんですか。実は俺達辺境の田舎からやってきたんで、常識に疎くて……」


「なるほど。じゃあ、進むのにまだ時間が掛かりそうだし説明してあげよう」


説明してくれるのか、いいおっさんだな。


「説明と言ってもそんなに難しくは無いよ。門のところに人の頭くらいの水晶玉があるからそれに触れるだけさ。触れれば水晶玉が赤か青に光る。赤なら犯罪歴有り、青なら無しと判断されるんだ。」


触るだけなのか。

調べるのは犯罪歴だけか。


「青ならそのまま入れるけど赤くなってしまったら門番の詰所につれていかれるんだ。まあ、赤が出てもすぐ捕まったりはしないから安心しなよ、罪を償ったり改心したと判断された人でも赤くなるから、詰所で詳しく調べられて問題ないと判断されたら通してもらえるよ」


「身分証を見せたりとか金を払うとか無いんですか?」


「うーん、少なくてもこの国では無いかな。帝国ならやってそうだけど……」


「分かりました、ありがとうございます」


俺は快く教えてくれたおっさんにお礼を言った。


「いや、いいさ。…………ところでさっきから気になってたんだが、後ろに居る『ソレ』は一体なんだい?」


「後ろ? 何かあります?」


俺は後ろを見たが何も変わったところは無い。

しいて言えばかっちんが妙にぎこちない動きでブレイクダンスを踊っているくらいか……。


「いやいやいや、君の真後ろで妙な動きをしている物体なんだけど!?」


「……え!?」


かっちんは今ギフトの『モブ』を使っているはずだから何やってても違和感が無いように見える筈なんだけど。

現におっさん以外の人達は全員スルーしてるし……。


「(なあ! かっちん今ギフト使ってるよな? おっさん何か気づいたみたいなんだけど)」


俺はかっちんに腕輪の通話機能を使ってそう言った。


《(んあ? ちゃんとモブってるよ。たぶんさっきヒロトが「『俺達』辺境の田舎から~」って言ったから俺を認識しちゃったんじゃないか?)》


は? どういうことだ? 認識?


「(よくわからないんだが……)」


《(俺のギフト『モブ』は俺個人を認識しちゃったら効果が無くなるんだよ。モブって群集って意味だからその他大勢の中に紛れ込んでいれば気づかれないけど、俺個人を集中すれば一発でばれるよ)》


はあ? じゃあおっさんはさっき俺が『俺達』って言ったから他に人が居るのかって思って、俺の後ろに居るかっちんを認識した。だからからばれたのか!?


「(じゃあ、盗賊の時は何でばれなかったんだ?)」


《(最初は皆酔っ払っていたし、途中気づかれてちょっと騒ぎになったけど……、いやぁ俺の涙の感動秘話を話したら皆泣いて同情して受け入れてくれたんよ。それから皆と義兄弟の盃を交わして義兄弟になったってわけさ)》


つまり有る事無い事……いや、無い事無い事吹き込んで無理やり誤魔化したって事だ。

詐欺師の能力とギフト、フル活用したな。




「な、なあ君。大丈夫か……?」


俺がいきなり固まり喋らなくなった事に心配して話しかけてくれた。


「あ、ああ。すいません大丈夫です。その、あの……。俺の後ろに居る物は呪いを掛けられた俺の友人です呪いの所為でこんな外見になってしまって呪いを解くために田舎を出てきたんです!」


いきなり話しかけられてとっさに出鱈目を言ってしまった。


《は!? え、おい?》


かっちんもいきなりの俺の言葉に素で驚いていた。


「……そうだったのか。それは辛いだろうね。君!きっといつかは元の姿に戻ると信じて希望を捨てずに頑張って行くんだよ!」


そう言っておっさんは目に涙を浮かべ、かっちんの手を取り励ましていた。


《は、はあ。アリガトウゴザイマス……》


珍しくかっちんは戸惑っていた。




そんなこんなで列は進み。

おっさんも審査が通って、頑張れよーという声と共に門をくぐって行った。


次は俺の番か……。

ドキドキしながら水晶玉に手を添えた。

まあこの世界に来る前も来てからも犯罪なんてやっていないから大丈夫だろうけど……。


結果はもちろん青。

門をくぐった所でかっちんを待つ。


「うわあ! 何だコイツは!?」


あ、門番もかっちんを認識してしまったみたいで驚いている。

その所為か周りの人達の視線もかっちんに集中しはじめて大騒ぎに……。


まあ、自分であんな格好になったんだ、自業自得だな。

たぶん大丈夫だろう。


とりあえず、その後おっさんと同じように呪いの所為だと説明して事なきを得た……。が!


かっちんの結果…………赤。


おいいいいいいいいぃぃぃぃ!?

どういうことだ?

アイツ何やらかしたんだ!?


俺が目にしたのはうなだれながら門番さんに連れて行かれるかっちんの後姿だった……。

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