一.始まりは、いつも唐突である
「迎えに来た」
どこもかしこも真っ白な世界。
自分が立っている場所が上なのか下なのか、それさえもわからない世界に、朗々と響き渡る声。
目の前にいる唯一の黒から発せられた声だ。
背後に光を背負っているせいで、顔がよくわからない。
男なのか、女なのか。それさえも判別できなかった。人影という言葉をそのまま具現化したようだなと思う。
けど、そんなことはどうでもいい。
目の前にいる人影は、どこかに連れていこうとしている、それだけわかれば十分だろう。
「どこに行く?」
返事はなかった。
……まさか、無理矢理連れていく気か?
ふふっと笑いが漏れた。
そんなこと、そう簡単にできると思っているのか?
にやりと笑みを浮かべる。何故かボクには余裕があった。
簡単に連れてかれてたまるか。
◇
「……ぜは……風早」
誰かが呼ぶ声が聞こえて顔を上げた。世界の眩しさに顔をしかめる。
「大丈夫か、風早」
担任教師が、教壇から声を投げかけていた。
「大丈夫です」
四方から向けられる視線を無視し返事をする。
自分でも何故こうなっているのか理解できなかった。
寝ていたのか、それとも……。
「本当か? 顔色悪いぞ」
「大丈夫です」
僕は同じ言葉を繰り返した。
その言葉に含まれた棘を察知したのか、それともそれほど気にしていなかったのか。どちらにしろ、担任教師はそれっきり何も言わなかった。
何か夢を見ていた気がする。
けど、どんな夢だったのか思い出せなかった。




