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刹那に色を  作者: はるの そらと
春ノ章 ユウ
2/50

一.始まりは、いつも唐突である


「迎えに来た」

 どこもかしこも真っ白な世界。

 自分が立っている場所が上なのか下なのか、それさえもわからない世界に、朗々と響き渡る声。

 目の前にいる唯一の黒から発せられた声だ。

 背後に光を背負っているせいで、顔がよくわからない。

 男なのか、女なのか。それさえも判別できなかった。人影という言葉をそのまま具現化したようだなと思う。

 けど、そんなことはどうでもいい。

 目の前にいる人影は、どこかに連れていこうとしている、それだけわかれば十分だろう。

「どこに行く?」

 返事はなかった。

 ……まさか、無理矢理連れていく気か?

ふふっと笑いが漏れた。

 そんなこと、そう簡単にできると思っているのか?

 にやりと笑みを浮かべる。何故かボクには余裕があった。

 簡単に連れてかれてたまるか。


   ◇


「……ぜは……風早」

 誰かが呼ぶ声が聞こえて顔を上げた。世界の眩しさに顔をしかめる。

「大丈夫か、風早」

 担任教師が、教壇から声を投げかけていた。

「大丈夫です」

 四方から向けられる視線を無視し返事をする。

 自分でも何故こうなっているのか理解できなかった。

 寝ていたのか、それとも……。

「本当か? 顔色悪いぞ」

「大丈夫です」

 僕は同じ言葉を繰り返した。

 その言葉に含まれた棘を察知したのか、それともそれほど気にしていなかったのか。どちらにしろ、担任教師はそれっきり何も言わなかった。

 何か夢を見ていた気がする。

 けど、どんな夢だったのか思い出せなかった。



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