第7話 2人パーティから3人パーティーへ
ファンタジーを頭に置いていると書いてて難しかったですが、かなり楽しいです。
魔法や魔物。その異世界の地図は考えていると楽しいです。
私たちの居た場所から1時間と経たない場所に洞窟はあった。私たち3人は洞窟の入り口が見える草むらの陰。洞窟の入り口には見張りであろうゴブリン5体。あの程度なら魔法だけで倒せる。カノンを突っ込ませる必要もない。
それはカノンも理解したらしく、私は無言で剣を抜くと炎魔法を発動させ、ファイアウィップをゴブリンへ振り回す。ゴブリンは悲鳴を上げながら灰に変わり、それを見てカノンとミルフィは草むらから出て来る。
基本的に戦闘に於いて魔法を使っての攻撃は私が担当している。理由は簡単。
カノンはあんまり魔法が得意ではないからだ。
「お見事です」
「すっげぇ! 魔法すげぇッ!」
拍手しながらのカノンの称賛に続き、感激しているミルフィ。
「そういやミルフィ、戦闘経験は?」
実は聞いていなかった。結構重要な事だと思うけど。
「うん……ゴブリン3体と一回戦った位」
答えながらミルフィは結構でっかいハンマーを見せる。
さて、そのハンマーどっから持ってきたんだろ。
「さ、2人とも洞窟へ入りましょう」
楽しそうにワクワクしたカノンに言われ、私とミルフィは続き、洞窟へ入った。
ゴブリンの巣。となっている割に、昔は炭鉱か何かだったのだろうか、足元にはレールが走り、脇にはトロッコが倒れて、壁には火の点いたたいまつ。ゴブリンは暗闇ではたいまつを持つ。自分の視界を確保する為だ。
そのおかげで洞窟は明るく、進む分には助かっている。
洞窟を進み始めて30分。先行していたカノンが足を止め、後続の私たちに平手を向け「来ます」とだけ言った。
ミルフィが震える手でハンマーを構え、それを横目に私は剣を抜き、いつでも魔法が発動できる態勢に入る。
すると程なくゴブリン10体が叫びながらたいまつを手に走って来る。
「カノン! ブレードに炎属性を付与するよ!」
「はい!」
頷いたカノンに向け、剣の切っ先を向け、炎魔法発動させると、飛び出した半透明な炎がカノンのブレードに付与され、刀身がオレンジに光る。
カノンはそのブレードを振るい、ゴブリンへ突撃し、まるで乱舞の様に舞いながら切り裂いて行く。
「ミルフィ、行ける?」
私が聞くと、ミルフィは頷きハンマーを振り上げ突撃し、カノンに向き背を見せていたゴブリンを不意打ちで倒す。
「やった!」
とミルフィは喜ぶが、いつの間にか別に来たゴブリンに囲まれている。
仕方ない。手助けしてやろう。
私は風魔法でゴブリンを蹴散らそう、と思ったのだが、想定外だった。
ミルフィはバッタバッタとゴブリンをなぎ倒している。
戦闘経験は……関係なしですか
「怖い怖い怖いーッ!」
叫びながらハンマーを振り回し、的確にゴブリンを叩き潰している。
つか、あんたのが怖いよ
「凄い」
流石のカノンもそう声を漏らすがジト目だ。多分引いてる。
そんなこんなで数分後、攻めてきたゴブリンは全て倒し、カノンはスッキリした顔。一方ミルフィは息を切らし、肩で息をしている。
「怖かった」
私は君の方が怖い。
「怖かったって言ってもミルフィは結構倒してましたよね?」
ミルフィの肩をポンと叩き、カノンが言うとミルフィはハンマーを下ろす。
「でもマジで怖かったし! 魔物相手に戦って平然としてるあんたら凄いよ!」
怖い怖い叫びながらハンマー振り回してた君が言っても……
「そんな事より、先を急ぎましょう? 日が暮れちゃいますよ?」
「そうだね。ミルフィ行くよ。大丈夫?」
「うぅ……大丈夫だし」
あんまりミルフィは大丈夫そうじゃないがそうも言ってられない。下手に時間を食って日が暮れてしまえば、視界の悪い中で魔物と戦闘になりかねない。
暗い中で戦うのって、結構怖いんだよね。
最初に洞窟内でゴブリンの襲撃に遭ってから恐らくは20分ほどだろう。案外単調な洞窟で目的の薬草のある奥地までは一本道だった。
着いた先で待っていたのは先ほどとは比べ物にならない数のゴブリンとその親玉。
まぁ、数が居たところで敵ではないがミルフィは震えあがっている。
仕方ない、少し楽にしてやろう。と思い私はサイクロプスとの戦闘で使った氷の槍を使用し、手近な数体を串刺しにし、それを合図にカノンが突っ込む。
「ミルフィ行ける?」
私が聞くと何か言葉にならない悲鳴を上げ、ミルフィはハンマーを振り回しながら突っ込む。カノンはそれをフォローするようにゴブリンを切り裂き、私は更にそれを魔法でフォローする。
一種の連携プレー。と言っても過言ではないであろう戦闘開始より数十分後。ゴブリンはすべて片付き、目的の薬草を手に入れた。
ちなみにミルフィはハンマーの振り回し過ぎでオエオエ言っている。
「ほら、ミルフィしっかりしてください」
カノンに肩を支えられ、ミルフィは口元を抑える。いつゲロッてしまうか心配だが、すぐに出てカノンの母親の為にこの薬草を使わなければならない。
元来た道を戻り、数十分後、洞窟から出て、ミルフィの案内で彼女の家へ向かった。彼女の家は森を北に抜けた村の一角にあった。多分、洞窟から1時間くらい。
彼女は寝込んでいる母親の元へ行き、私とカノンは医者の元へ行き、薬草を渡し、すぐに薬を調合してもらった。
それを手に、私とカノンはミルフィの家へ向かうと信じられない光景が目に入った。
寝込んでいた筈の彼女の母親が料理をしている。
優しそうなお母さんだなぁ。
私とカノンはミルフィを見る。
オイ、どういう事だ?
とカノンは無言の圧力を掛けると彼女の母親が私たちに気づき、一礼した。
「お騒がせしました。何でも手伝ってもらったようで」
「はぁ」
「いえいえ」
私とカノンは言うが納得していない。
「いやぁ……どうも病気じゃなくて食あたりだったみたいでさ」
自分の後頭部を撫でながらのカノンは苦笑いで私たちに言う。
「病気って……医者の勘違いと私の早とちりで、ね?」
「ね? じゃありませんよ! 普通に無駄足ですよ!」
まぁ、カノンの言う通りだ。無駄足だ。でも彼女の母親が無事で良かったよ。
「はぁ、じゃあもう大丈夫なワケ?」
呆れ気味に私が聞くとミルフィは「うん」と頷いた。
ならもうこの村に居る理由は……ないや。
「カノン。もう行く?」
「はい……はぁ、どっと疲れました」
本気で疲れたようでカノンは肩を落とし、ため息を吐いた。私たちはお邪魔しました。と言い玄関の扉を開ける。すると「ちょっと待って下さい」とミルフィの母親に止められる。
「お二人には此方の事情で大変ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ございません」
「い、いえ。お母様が無事ならそれで」
「そう言っていただければ幸いです。そして、これは図々しいお願いなのですが……ウチのミルフィを連れて行っては戴けませんか?」
は?
「ミルフィはこの小さい村で育って、まだ世界を良く知りません。先ほどあなた方の事はミルフィから聞きました。無理を承知でです。どうか、お願いできないでしょうか?」
取りあえず、私はカノンを見た。カノンはどこか予想していたようで諦めの笑みを浮かべた。多分、オッケーなのだろう。
私も別にカノンがオッケーなら断る理由は無い。
後はミルフィの意思なのだが……
彼女は呆気に取られている。
想定外の不意打ちんだろうなぁ
「えっと……私たちは構わないけど、ミルフィ?」
「ふぇッ?」
「私たちの旅。着いてくる?」
「えっ? えっ? お母さん?」
私が再度聞くとミルフィは母親を見る。
「行ってらっしゃい。旅で世界を見てきた方が良いわよ」
優しい笑みで言われ、ミルフィは目を輝かせ私たちを見ると駆け寄ってくる。
「ホントに行っていいんだな? 着いて行って良いんだな?」
「うん。良いよ」
少し、笑みを浮かべ私が答えるとミルフィは満面の笑みで「また宜しく!」と言って来た。
カノンを見ると、諦めではない笑みを浮かべている。
何やかんやで歓迎しいる様だ。
私自身、歓迎している。
「さ、お二人とも。良かったら明日までここで身体を休めて行ってください」
ミルフィの母親の誘いに乗っかり、私たちは一晩世話になる事になった。
カノンだけでも賑やかだったのだが、更に賑やかになりそうだ。
パーティー増えました。