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第6話 旅の始まりと出会った女の子

 さて、こっからやっと本当に旅のスタート。自分的にはここからは第二部、といった感じです。

 よければお付き合いください。

 そして、感想など、意見、指摘など頂いたモノは変更出来る時にしていこうと思います。

 さぁ、旅だ。と息巻いてみた。そして思った。


 どこ行きゃいいんだろう? 


「行く場所分かんないならローラー作戦しかないんじゃない?」


 言った私に他人事だと思っているだろうマーロットさんのこの言葉だ。


「だって実際そうでしょうよ。目的がデカすぎるからねぇ。何か引っかかるまで旅するしかないでしょう?」


 まぁ、実際そうだ。正論だよね。


「取り敢えずあんた達、ローゼンバーグは全部制覇した方が良いよね」


 首都には何も無かったが、シャムさんやマーロットさんの言葉は聞けた。それだけで十分といえば十分だろう。


「カノン。旅長くなるけど、良い?」

「構いません。アキハさんにどこまでも着いて行きます」


 すっごく頼もしい。


「じゃあ、用意は済んでるし、挨拶だけ済ませて行こうか?」

「分かりました」




「あらぁ、残念だわぁ。あんた達ともうお別れなんて、あたしショックよ」


 旅に出る事言うと頬に手を当てシャムさんは言った。


「私も残念です。首都で唯一お酒を出してくれる店だったのに」

「あら、そうなの? ケチよねぇ他の店」

「ねぇ~?」


 さて、カノンとシャムさんは何を分かりあっているのだろう。


「アキハちゃんも、飲みたくなったら戻ってらっしゃい。あんた達は9割引きサービスよ」


 シャムさんは親指を立てるが、9割引き? 大丈夫か?

 正直、お金に関してはあまり不自由はない。依頼達成の貯金。鉱山での宝石の山を換金したお金。

 使う暇があまり無かったのを思い出す。旅館は只になり、この店ではほぼ9割引き。

 もう減らない減らない。


「そっかぁ、旅ねぇ。旅は良いわよ。色々な場所を見て自分を見つめ直し、人との繋がりを実感し、成長する。でもね、辛い事も一杯あるからね。あんた達。負けんじゃないわよ」


 過去に経験があるであろうシャムさんの言葉は真摯に受け止め、私は頷く。


「あ、そうそう。旅に出るなら餞別あげなきゃ」


 良いですよ。と言う前にシャムさんはそれを取り出した。


「はい、携帯用コンパクト料理セット」


 ゲームのアイテム? みたいなそれを私は受け取り開いてみる。フライパン等の調理器具各種。大きくも無い箱はリュックに引っかけられる。


「料理は女の嗜みよ? 旅で自分と料理の腕を磨きなさいな」

「はい。ありがとうございます」

 

 取りあえず、そこから私たちは店を出てギルドメンバーなんかに挨拶をして回り、2時間程たってやっと挨拶が終わり、首都の外へ出る関所の前に来る。槍を構えた憲兵が立っている。


 今生の別れではないので、見送りはしない、との事。


「さて、行きましょうかアキハさん」

「うん」


 意気揚々と足を踏み出し出ようとすると憲兵に止められた。


「通行許可書見せて?」


 しまった、宿舎に忘れた。そこからダッシュで戻り、宿舎から許可書を取り、やっと外へ出られた。






 まず向かうのは北。東の帝国はローゼンバーグを回り終えてからにしようと決めているからだ。そして今は首都近くの森の中に居る。


「やっぱり森の中は良いですね~。心が洗われるみたいです」


 そう爽やかにカノンは言うのだが、かれこれ森に入って1時間。数回の魔物の襲撃に遭い、カノンの様に森林浴は楽しめない。


「結構長いよねこの森」

「はい、この森は広いですから。しかも、西、東、南に出るよりも北へ出る方が長いですから。あと1時間は歩きますよ」


 先は長いようだ。

 私はふと上を見る。木々の間から木漏れ日が差し込み、少し眩しい。そしてこれまたふと思い出した。


 昔はよく近所の遊歩道のある森で遊んだ。

 たまにこうやって日本での事が思い出される。その度、私は思う。帰りたい、皆に会いたい。家族に会いたい。

 そしてこれも思う。


 今が楽しい。


 多分、これは思ってはいけなかったのだろうが、それは事実だ。今までなかった刺激的な生活は、私を楽しませている。


 私の横を歩くカノンもそうだ。常に私を笑顔にさせてくれる。

 もし、帰れるってなったらどうなんだろう?

 カノンやオリバー、関わった人間ともう会えなくなる、と聞いて私はどう思うだろう?

 

 多分、泣くと思う。


「わー! アキハさん見て下さい!」


 突然のカノンの声に見ると、彼女は先を指さしており、そこに目を向ける。


「ほら! 人が倒れてますよ!」


 助けろこのバカ! と私は心で呟くと倒れている人間へ駆け寄った。

 

「ちょっと! 大丈夫!?」

 

 私はその倒れている人間へ呼びかける。女の子の様だ。髪は赤のロングを結ってポニーテール。

 そんな子を抱き起し揺するが動かない。

 そんな私に「アキハさん! これを!」とカノンは刺激臭のする缶詰を渡して来た。ああ、蓋は開いてるよ。

 見ると魚の缶詰の様で、その子の鼻に押し付けるようにすると、その子は目を覚まし「くさッ!!」と叫びながら飛び跳ねた。


「あ、起きた……効くねコレ」


 そう言いながら私はカノンに缶詰を返す。


「でしょ? でも食べると美味しいんですよ」


 受け取り、カノンは魚を摘み上げ、口に放り込む。それを苦笑いで見て、視線を女の子へ向けると四つん這いで咳き込んでいる。

 よっぽど臭かったんだなぁ……ごめん。


「臭かった?」

「すっげぇ臭かったよ!」


 私の問いに女の子は答えながら起き上がった。結構元気みたいだ。


「ねぇ、何で倒れてたの?」

「は? 倒れてねえよ。ちょっと転寝してたら魔物に荷物全部奪われて腹減ってただけだよ!」


 細かい事情説明だが、何て間抜けな奴だ。と私は思い、苦笑いが更に引きつった。


「あなたこの森に来た理由は?」


 気になったので聞いてみたのだが、彼女は顔を顰め、私はカノンを見た。


「込み入った事情があるみたいですね。ゲプッ!」


 ゲップするなら手で隠しなさい。と思いながら女の子を見る。

 魔物に荷物を奪われた。と言っていた。


 放っておくのも何か嫌だなぁ。


「出過ぎた事かもしんないけど、荷物無いんでしょ? ある程度なら協力出来るかもよ?」

「ホントか?」


 案外食いついてきた。本心からなので頷く。


「だから、あなたがここに居る目的を教えて?」


 優しく聞いてみると、彼女は口を開いた。

 

「この森の北側なんだけどさ、ゴブリンの巣になってる洞窟があるんだよ。その奥に生えてる薬草が欲しいんだ」

「どうしてそれが?」


 カノンが聞いた。


「母親が病気で、医者を呼んだんだが、その必要な薬草が足りないから。あたしが取りに行こうって。買おうにも金が無いし」

 

 成程ね。と思い息を吐きながらカノンを見ると同じ意見の様だ。

 聞いてしまったからにはお節介を焼かずにはいられない。


「その洞窟に生えてる薬草が欲しいわけよね」

「私たちが協力するよ」


 私、カノンが順にいうと彼女は驚いていた。


「協力って! これはあたしの問題で!」

「勿論。全部が全部面倒見る気は無いよ。でも、1人じゃ厳しいんじゃない?」


 言うと彼女は「うぅ」と怯んだ。図星の様だ。


「どうする?」


 私が確かめるように聞くと彼女は一度私に礼をし


「あたしはミルフィ。……言葉に甘える。協力してほしい」


 それを聞いて私とカノンは顔を見合わせ、ミルフィを見る。


「私はサクラバアキハ。そしてこのゴスロリの子はカノン・ローレイン。宜しく」


 自己紹介をするとミルフィは「ああ! 宜しく!」と笑顔で返してくれた。

 結構可愛い顔をするもんだなぁ。と思いながらその洞窟へと足を進めた。

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