プロローグ
あまり考えなかったが、死というのは案外近くにあるらしい。
それも、私の場合は走馬灯を見る暇も無かった。
高校から帰る為、駅に友達と居る時だ。騒いでいた中学生の肘に押され線路に落ちた。
そして無情にも特急列車が私に突っ込んだ。
痛む暇は無かった。本当にいきなりだった。最後に聞こえたのはブレーキ音と友人たちの絶叫。
ああ。私、死んだんだな。
虫っぽい鳴き声と川の流れが聞こえ、私は目を覚ました。すると私の顔のすぐ隣ではネコっぽい生き物が魚を咥えていた。
どうしてだろう、ネコはただ魚を咥えているだけなのだが何故か嫌な予感がした。
すると次の瞬間にはネコは私の頬を一度思いっきり引っ掻いた。
凄く痛い。そこを右手で撫でてみると指先に血が付いた。
私はそこで初めて自分の状況を理解した。どうやら仰向けに寝ていたらしい。空を見ると夕焼け。あたりは森。すぐ前には川。
どこだろう。と考えながら起き上がるとネコは魚を貪りながら立ち去る。
やるだけやって逃げたな。と私はため息を吐き、脚を一歩踏み出し違和感を覚える。何か腰が重い。見ると腰にはベルト、装飾の派手な剣が鞘に収まっていた。
何か、服装もおかしい。剣士? いやそれにしてはあまりに装飾が派手。言ってしまえばコスプレだ。前にしたロールプレイングゲームに近い。
私は剣から目を離し後ろを見ると、階段があった。階段を上った先には外灯いや、ガス灯に近い。何にせよ見覚えが無い。
ガス灯の続く先には木の柵。近づくと崖になっていた。崖下には白い霧。その中に点々と光るオレンジの光を見つけ何かと覗き込む。すると霧の中を何かが駆け抜け火が消えた。直後、霧の中から何かが飛び出し私の前を空へと飛び去った。
私はそれを見て腰を抜かした。レンガの様な茶色の鱗。黄色に光る鋭い眼光。伸びた爪。巨大な翼。
ファンタジックなそれは間違いなく飛竜だった。
「ここ・・・日本じゃない」
絞り出した声だった。やっと理解でき、思い出した。本当に私は死んだんだな、と。




