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朔の誕生日

※あと5話で豹変します。

『6月6日!俺の誕生日!!!女子に手料理食わせてもらう権利がある!!』

朔が一人で盛り上がっていた。

まあ誕生日だし多少は浮かれるよね。

「澪!!」

うん?私呼ばれた?

みんなこちらを見ている。えっと聞いてなかった。

「えっと?」

「最高の誕生日のために手料理お願いな!」

「な゛っ!?」

反射的に声が漏れた。自分でもどこから出てきたのか分からない。

「べ、べべ別に、私じゃなくてもいいんじゃない?」

灯の方を見ながら言う。灯は目を見開いて首を超高速で横に振っていた。むりむりむりむり。

蓮は澪の足元にいるムギを撫でながら、

「そうだね、誕生日を無事に迎えられるといいね。ううん、最高に本望な誕生日になるかもしれないね」

ゆっくり微笑みながらそう話している。

「澪、大丈夫!落ち着いてやればとれるわ!」

蓮さん!?とれるとは何のことを指しているんでしょうか??

ヤバい、早く断るか話題を逸らさないと!

「わ、私はそんな料理得意じゃないし」

「得意とかそういうのじゃなくて、『女子に作ってもらった』これが大事なんだよ!」

ええええええええええ!?

これは蓮!蓮を頼るしか!

視線を蓮の方に向ける。ワクワクしながら、

「大丈夫!何かあるからその時だよ!」

何かあることは確定なんですかー!?

「も、もちろん灯も手伝ってくれるよね?」

「えええええ!?」

「いや、そのつもりだが?俺は澪と灯にお願いしようと思って」

詰んだ。

「大丈夫だよ、ムギ。あの2人ならちゃんとや(殺)ってくれるわ」

私は何を期待されてるんでしょうか!?蓮さん!??

「ところで、何を作ってもらうの?」

蓮が会話を進める。

「うーんと、そうだなぁ。6月6日だからそれっぽいやつ!」

透が笑っている。ムギは私が見ても心配そうに見える。

そうだ!ムギに助けてもらおう!

「ムギ?」

「試食はしないって」

蓮が即答して、

「ちょうど悪魔の数字みたいだし、それっぽいやつを作ったらいいんじゃない?」

と続けてくる。

私の持っている情報としては、6月6日の悪魔を連想させる誕生日に私が灯と一緒にそれっぽいやつを作る。

前回のお花見の時は玉子焼きすらできなかったのに?

透の方へ視線を送ってみた。

静かに目を閉じて合掌していた。

おぉっと!?

なぜか私と灯で朔の誕生日に手料理を作ることになった。自分で言うのもなんだけど、キッチンから生きて帰れる自信がない。

灯はもっと役に立たないし。頼りの蓮はなんかウキウキしてるし、ムギは心配そうに見ている。

透が「大丈夫だ!」と励ましてくれた。でも「誕生日以降も生きてる!」という意味深な付け加え方をした。朔本人は完全に浮かれている。

「灯、何作ろうか?」

「初夏っぽい食べ物で朔っぽいものよね?」

「難しいよね」

「よねー」

とりあえずメニューを決めよう。

「青椒肉絲?」

灯がタブレットで検索したのを見せてくる。

「読めないね」

「野菜をサッと油通しすれば色鮮やかになるんだって」

「そんな技があるなんて!」

けど、私はしたくない。仕方もわからないし。

「でもさ、この前はさ、玉子焼き作ろうとして蓮にすごい怒られたじゃん?あまり難しいことはできないってことよ!」

「というと?」

「できるだけ手を加えない方が成功率は上がるってことじゃない?」

おおおおおお!!

「手を加えない初夏の料理といえば!?」

「たまごかけごはーー」

「誕生日にそれはひどくないw」

「でも私は死にたくないよー」

たしかに、これは私たちが生きてキッチンから出られるかどうかもかかっているんだ!

「できるだけ手をかけないけど夏を感じられる料理?」

私たちは自然と目が合った。

『冷やし中華!』

これなら大丈夫だと思う。麺をゆがいてきゅうりをのせて玉子とハムを添えたら終わり!

希望が見えてきた。

メニューは『冷やし中華』に決まった。

「これなら大丈夫!失敗はしにくいはず!」

「私たちが選ばれた時点で失敗だからこれ以上の失敗はないよ!」

「灯?それは励ましてくれてるの?」

「うん!」


◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇


誕生日当日になった。

私と灯は材料を持って朔の家へ。朔の計らいで両親は不在になっているらしい。予定なことを。

蓮がムギに何やら耳打ちしている。危険が迫ったら言うように言っているんだろうな、たぶん。

今日は家の中にいるのが勿体ないくらいいい天気だった。どうせならと透がパラソルを準備して、その周りを蓮が飾りつけ始めた。

「これで料理がきたら最高だな!」

朔は浮かれている。

「余裕だな、朔」

「夢で見たんだ!俺も透も蓮も笑ってたぞ。最高の誕生日になるんだ」

あのー?私と灯が入っていませんが?

「その時澪と灯は何してたの?」

「なんか抱き合って百合百合してたぞ?」

「これから百合百合するんだって」

透が半笑いだ。

「ムギ、流石にご両親に悪いから家焼きそうだったら呼んでね」

ムギの頭を撫でるとムギも何か言っている。

「これは今日の主役のご希望だから仕方ないの。私も断腸の思いでこの2人に試練を与えているの」

「それは嘘だよね、目が笑ってるし」

「いい?お花見の時に私たちが理不尽に料理することになって我が家が2回火事になりかけてたのよ?その原因を作った朔の誕生日に2人が選ばれた!これはもう、や(殺)るしかないじゃない!」

「確かに2回火事にしかけたけど」

「けど?」

ヤバい!あの目だ、言葉の圧で見なくてもわかる。これは目を合わせたらダメなやつ。視線を逸らして灯の方を見ると灯はしっかりあの目に射抜かれていた。

「ごめんなさい、今日は『まだ』何もやってないから」

「行くよ」

灯の手を引いてキッチンへ逃げるように向かった。灯は体がうまく動かないのか、手にかかる体重がいつもより重たく感じた。


◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇


(蓮目線)

澪と灯がキッチンへ行く。ついていくムギが不安そうだった。

2回も目の前で炎上してたから不安にもなるか。私だって無事で終わるとは微塵も思っていない。ただ今回は前回と違う。作るメニューが『冷やし中華』らしい。錦糸卵が不安だけど、その他は使っても『お湯』。火事の心配はないはず。

それにムギには「卵を使い出したら教えて」と言ってある。卵を手に取るところで教えてもらえれば前回のような状況にはならないはず。

そう思ったら落ち着く。卵を焼く工程まではリスクがない(はずだ)から。

「そういや前回は何があった?」

透が蓮に訊く。

「前回?あんたが私を『犯人』って言ってきた日?」

「そう、その日。俺は灯の『殺さないで』しか知らなかったから」

「玉子焼き作るのに揚げ物できるくらい油注いで、火がついた状態で『玉子に殻が入った』って言ってたかな?」

「あ…」

「フライパンから火が上がって私の家は危うく火事よ。澪と灯がそれぞれ1回ずつやってくれたわ」

「ほう」

「なにかいうことはない?って『優しく』訊いたら『殺さないで』ですって」

「蓮は優しく言ったつもりかもだがよっぽど怖いぞ」

「そんなことありませんわよ?」

「ゾワってするから止めろ」

「俺の知らないところでそんなことがあったのか!」

朔が話に乱入してきた。

「あの日、あんたのおかげで大変だったんだから」

「透まで倒れてたから何があった?って思ってたわ」

「でも今日は大丈夫よ」

蓮が微笑む。透も笑う。

「たしかに今日は怖い監督もいないから澪や灯ものびのびできるだろうし、今日は素晴らしい日になる」

だいぶ、断片的に聞いて都合のいいように解釈してる気がする。が、今日はそれの方が都合がいい。3人とも笑っているのにみんな違う感情だった。

ムギが走ってくる。

「お望みの展開になりそうよ、朔?」

そう言って蓮はキッチンへ走って行った。

◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇

キッチンについた。

さて、冷やし中華か。食べることはあっても作るのは初めて。

ムギが不安そうに見つめてくる。

大丈夫!私も不安だから。

だから助けてよー、蓮ー。

「冷やし中華だから用意するのは麺ときゅうりと錦糸卵とハムだね、失敗しようがないと思うから大丈夫」

灯の言葉に抑揚はなく淡々と話す。よくみると顔が引き攣ってるし足が震えている。あれ?大丈夫?

まず最初は何をやろうか。

大息をついていると灯が準備し始めた。フライパンに油を注ぎ火をつけてきゅうりをその中へ入れた。どぷんとなんか重たい音がした気がする。

「野菜の色を鮮やかにする油通しだって」

「たしかそんなことも言ってたわね、でも大丈夫なの?」

「何が?」

「油通しをするってどうするか分かってやってる?」

「全然?」

「全然!?」

あんなに怖がってたのになんでそんな怖いことは平然と出来ちゃうの!?

これ、よく見たら目がグルグルで感情がおかしくなってしまってるんじゃ……

「ほら、平和だし大丈夫だよ」

この落ち着きがなんか怖い。

ムギの上目遣いの視線が刺さる。蓮じゃないけど、大丈夫かなぁって不安なんだろうな。

ぱちぱちぱちぱち。

フライパンから音が出始めた。きゅうりの周りに気泡が出てきている。

「そ、そろそろいいんじゃない?」

「え?もういいのかな?」

そう言いながらゆっくりと何かを探し始めた。

「何を探してるの?」

「長いお箸無いかなって思って。ほら、普通の箸じゃ熱いじゃん?」

「たしかにね、どこにあるんだろう?」

「ねー」

抑揚がない上に動きがゆっくりで感情が読めない。

ばちばちばちばち。

フライパンから聞こえてくる音が激しくなってきた。

当の私たちは引き出しを開けてみるが菜箸は見つからない。すぐ使えるところに置いてあると思うんだけどな。引き出しを開けて、見つからなくて、扉を開いて、見つからなくて。

ばちばちばちばち。

コンロ下の扉に手をかけようとした時に腕に油がはねてきた。熱い。

フライパンからは激しい気泡が出てきていて四方に油を跳ね回している。

「あ、灯?これってまずくない?」

「ん?うん?」

油でベトベトになりながら火を消した。激しく白煙が上がってきていたが幸い火が上がる前に消火できた。火を消してもきゅうりはぱちぱち音を立てながら気泡に包まれている。

とりあえず火事になる前に消火できた。よかった。

ほっと胸を撫で下ろす。そして菜箸探しに戻った。

「………」

灯が菜箸探しを中断して無言で麺をフライパンに入れる。ジュウゥゥ。そして点火して菜箸探しに戻った。

引き出しを開けて奥の方に菜箸を見つけた。よかった。

菜箸できゅうりを取り出せる。あれ?身に覚えのない麺が入っている。あと見覚えのない黒い物体が。

ゴクリ。

「灯?麺入れた?」

「うん、一緒に湯がいたら時短になるよ」

「でもこれ油……」

麺をほぐそうと箸を入れるが皿うどんのような揚げ麺になっている。あと周囲が焦げて黒くもなっていた。

「私の知ってる麺じゃなくなってるんだけど?」

「ん?うん。私は男の人分からない」

「ん?」

会話が噛み合っていない。灯?

目は開いている。声に抑揚はなくて上の空。意識ちゃんとある?

こんな灯でもいないと困るんだから、キッチンに1人ってすごい怖いんだから!

「この後は禁止された卵だったよね」

「錦糸卵のこと?」

「ううん?禁止された卵のこと」

「ううん!?」

「卵を割って、お箸で混ぜてー」

「灯?大丈夫?」

見た目には大丈夫ではない。どうしよう。灯はゆっくりと動いているが意思も覇気も感じられない。

ムギが吠えながら部屋を飛び出していった。

ムギー!!

やばいよ、私1人でこの状況!

どうしたらいい!?どうしたら!

周りを見回す。灯が虚な目で卵を溶いている。

「えい!」

膝カックンしてみた。膝が簡単に折れて床につく。持っていた卵のボウルが宙を舞った。

「あいたたたた」

膝を抑えながら灯の声が元に戻った。よかった。いつもの灯だ。

灯が膝をつきながら私を見上げている。

「あれ?」

「大丈夫?」

ガチャ。

ジュワ!ボン!バチバチバチバチ!

すごい音が後方から聞こえてくる。

振り返るとフライパンの中に灯が持っていたボウルが不時着して、玉子が蒸発、爆発していた。

『きゃああああああ!!』

私と灯はお互い抱き合いながら悲鳴をあげていた。

「やれやれ、どうしてこうなるのやら」

蓮が頭をかいていた。周囲を見回し飛び跳ねた油まみれの蓋を見つけ、盾にしながらコンロの火を止めた。ゆっくり振り返る。

「ここは私の家じゃないけど、何か言うことは?」

ゆっくり静かに訊ねる。

「よがっだー。死ぬかとおぼっだー」

顔と服に油が飛び散っていることなんてお構いなしに灯は蓮に抱きついている。

「できるだけ口出ししないようにしようと思ったけど、やっぱ危険だわ。私が監督しとかないと家がなくなりそう」

ため息混じりに言う。

「ムギには2人が卵を持ったら呼びにくるように言ってあったのよ。それまでは油使わないだろうしね?」

2人を交互に見ながら言う。

「それまでは油、使わないだろうしね?」

なんで2回言ったの?いや、分かるけどさ。

「後は作業としては何が残ってるの?」

「後は麺を冷水で締めてハムを切るだけ」

「ふーん、麺は?」

「あの中」

私は火の手が上がっていたフライパンを指差した。

「えっと、ごめんね、理解が追いつかない。あの中に入ってるのは?」

蓮は頭を抱えている。

「きゅうりと、麺と、溶き卵」

「………。ふー」

蓮は目を閉じて深呼吸している。

「まずはハムからいこうか。大丈夫、すぐ終わるわ。私が見ておく必要もないくらいよ。灯、切ってみて」

「私!?」

蓮はまな板にハムを3枚重ね、包丁の握り手の部分を灯に向けて手渡した。引き攣った笑顔で受け取る。

「大丈夫、こうやって左手で握り込むようにハムを押さえて第二関節に包丁の側面を当てながら切ったら指が切れることはないから」

ガタガタガタガタ。くるり。

「助けて、やっぱ怖い」

包丁の刃の部分を蓮の方に向けて蓮に助けを求め歩きはじめた。

これ、ドラマとかで殺人のシーンで見るやつだ。

「バッ!来るな来るな来るなー!」

蓮は包丁を持った灯に追いかけられてキッチンから出て行った。

「………。」

さすがに何もしないのは良くないよね?

冷やし中華だから、麺を冷やさないと。

私はフライパンを手に取って中身をザルに流した。

ドンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!ドンッ!

凄まじい爆発音がキッチンに響き続けた。私の視界は白い湯気で覆われている。私は胸の前でフライパンをシンクの方へ傾けていた。フライパン越しに何かがぶつかってきているのを感じる。麺をしめるってこんなに怖くて大変な作業だっけ!?えっと、お水お水。

「こっちは何やってる!?」

蓮がすごい形相で走って戻ってきた。蛇口に手を伸ばしているのを見て蓮はギョッとして、言葉より先にスライディングしてきた。私は足払いされて体勢を崩した。

視線を上げると、蓮が灯に追いかけられていた。

「置け!まず包丁から手を離して!」

「怖いぃぃいぃ!」

「あんたの方が怖いわ!」

また居なくなった。キッチンにひとり残された私。

えっと、何か違ったのかな?白い湯気がたってる状況でお水はまずかったのかな?

シンクはバチバチすごい音を発して白い湯気を上げ続けている。湯気が落ち着いてきた。もういいかな?

私は蛇口から水を流した。

ばちばちばちびち!

さっきまでとは比べられないくらい凄まじい湯気がキッチンを包んだ。警報器が鳴ってスプリンクラーが作動する。

冷やし中華からハムはなくなりました。


◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇


「料理は見た目も大事だからな」

朔はウッキウキだ。ずぶ濡れの私は恐る恐る蓋を開ける。

真っ黒。

ぱっと見は何が運ばれてきたのか分からない。黒いものの上に黒いものが乗っていて、ホームセンターで木炭を買ったような感じになっている。

「……あれ?」

澪さん?話が違うんじゃないですか?

朔が目で訴えてくる。思わず視線を逸らす。

「善処しました」

とだけ言った。

「すごいな……」

朔のテンションが下がって声がこわばっている。

「あれあれー?朔ご所望の『女子の手料理』が来たのにテンション低くない?」

蓮が逆にウッキウキだ。笑顔で青筋たてて、禍々しいオーラが体を包んでいるように見える。

「見た目が……」

「そっか、そしたら目隠ししたらいいよ♪タオル借りるね」

蓮はタオルで手際よく朔の目隠しをやっていく。

「でも目隠ししてたら上手く食べれないよね?そーだ!優しい私が食べさせてあげよう!」

黒い怖い黒い怖い。

「さて、この黒いのはなんだろう?」

蓮の箸が伸びる。サクッといい音を立てた。

「あ!サクッていった!香ばしそう!あれ?中まで真っ黒だw澪、これは?」

「えっと、きゅうり!……たぶん」

「きゅうり!きゅうりだって!wやっぱり冷やし中華だもんねー!後具材は?」

「錦糸卵と」

「すごい!錦糸卵入ってるんだって!具材完璧!見た目はともかく具材は完璧に冷やし中華だね!」

蓮が箸で何やら薄皮の大きな物体を持ち上げる。

「澪さん?これは?」

「あ、それが錦糸卵」

「wwwww。錦糸卵大きくない!?あ!玉子の中空洞だw風で飛んでいったw」

玉子だったものが微風に攫われていく。

「みwたwこwとwなwいw!ヤバいwwしwぬww」

蓮が笑いながら膝が砕ける。足に力が入らないのか立ち上がれなくなっている。朔は蓮の実況を聞いて変な汗をかいている。

ヒーヒー言いながら涙を拭ってやっと立てた。まだ膝は笑っている。

「さて、朔!w何から食べようか!w」

「食べないって選択はーー」

「きゅうり!」

言い終わる前に蓮がきゅうり(と思うもの)を朔の口に押し込んだ。

「もが!?………、ん?」

予想に反して朔の反応は静かだった。自分で目隠しを解き、皿を眺める。

「これ………、よな?」

そして手を伸ばして小さい麺らしきものを口に運んだ。

「サクサクとしてスナックっぽい。なんか、思ったよりは大丈夫かも」

「は!?」

蓮は驚いて真っ黒の冷やし中華を覗き込む。

「そんなわけーー」

「そんなわけあるか!」

蓮が覗き込んだところで朔の右手が頭を捕まえて左手で冷やし中華を蓮の口に押し込んだ。蓮は咄嗟に口を閉ざしていた。

「(へっへーん、残念でした)」

蓮の目が笑っている。

透が蓮達に近づいて一枚の紙を広げた。朔の抜き打ちテストの答案だった。

「きゃは、それはーーー」

口が空いた隙を逃すまいと朔は蓮の口に炭を押し込んでいく。

「もが!?もがもがもが!!」

反則とでも?さっきのお返しとばかりに朔が悪い顔をしている。

さすがの蓮も力では朔に勝てなかった。

読んでいただきありがとうございます。

次話「夏 遊園地」もよければ。

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