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運って、よくわからないや。

作者: 蟹地獄
掲載日:2026/04/19

あの日の俺は、見事に散っていた。

春の陽気に浮かれて、「今年は当たる気がする」なんて根拠のない自信を胸に挑んだ競馬のG1、皐月賞。

新聞を何度も読み返し、パドック映像も見て、「これは来る」と確信して買った馬券たちは、ゴール板を前にしてことごとく俺を裏切った。

テレビの向こうで歓喜する人々とは対照的に、俺は畳の上で静かに崩れ落ちた。

「……終わったな」

財布の中身も、気持ちも、きれいにスカスカだった。

その後はもう、何をしても上の空だった。

コンビニで買った安い弁当も味がしない。

スマホを見ても、的中報告ばかりが目に入ってイラつく。

SNSを閉じて、天井を見つめる。

「今日はもうダメだな…」

そう呟いて、ふて寝を決め込もうとした、そのときだった。


ピポーン。


インターホンが鳴った。

「……誰だよこんな時間に」

重い体を引きずってドアを開けると、そこには見知らぬ配達員が立っていた。

「宅配便でーす」

覚えがない。

だが、差し出された箱には確かに俺の名前が書いてある。

「え、これ何ですか?」

「さあ、こちらでは…」

半信半疑で受け取り、部屋に戻って箱を開ける。

中から出てきたのは……

大量のカップラーメンだった。

しかも、見たこともない高級ラインのやつが山ほど。

「……は?」

一枚の紙が入っていた。

『キャンペーン当選おめでとうございます!』

そういえば、何週間か前に、なんとなく応募した記憶があった。

レシートを撮って送るだけの、あのやつだ。

「いや、マジかよ……」

思わず笑ってしまった。

昼間に競馬でやられた金額と、だいたい同じくらいの価値がありそうな量だったからだ。

「こんな形で回収するとはな…」

さらに笑えたのは、その直後だった。

スマホに通知が来る。

【本日の歩数:9,999歩】

「いや、あと1歩でキリいいやつじゃん!」

思わず立ち上がり、部屋の中で一歩だけ歩く。

【10,000歩達成!】

「しょうもなっ!」

声に出して笑った。

その瞬間、なんだか全部どうでもよくなった。

競馬は外した。金も減った。

けど、なぜかラーメンは増えたし、歩数はキリがいい。

「まあ、こんな日もあるか」

俺はその夜、当たった高級カップラーメンをひとつ開けた。

やけに美味かった。

敗北の味じゃなくて、ちょっとだけ救われた日の味がした。


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