執事は夜に来る
ほんのりBLちっくです。
苦手な人はご注意を。
その執事は夜に来る。
「また遅刻だぞ」
「申し訳ありません」
「少しは正したらどうだ?」
「善処いたします」
よくもまぁ、飽きずにこんなやり取りをするものだ。
彼が遅刻をする理由なんて分かりきっているし、それが改善できないことも知っているのに。
「それにしても大分良くなりましたね」
「何がだ?」
「夜の治安です。先代の頃とはまるで違う。子どもが肝試しをしている光景も見ましたよ」
執事はそう言いながらコーヒーを注ぐ。
僕はあまり夜が得意ではない。
気を抜けばすぐに船を漕ぎ出す。
それを彼はよく知っているのだ。
「坊ちゃまの功績でしょう」
「子どもがお前を見たら腰を抜かすだろうな」
照れ隠しの言葉に執事は微笑む。
「確かに。夜道で出会うには私は些か恐ろしい形をしておりますものね」
「私は幽霊というものは好きなように姿形を変えられるものだと思っていたが」
骸骨のように骨が浮く白い肌。
それを必死に覆い隠すために纏うスーツは夜に馴染むほどの黒。
それのせいで却って不気味な白い肌が強調されるよう。
晩年。
命を削りながらも私に仕えてくれた彼は死の瞬間を保存したような姿でばかり現れる。
いっそ現れるなら私が恋した姿で現れれば良いのに。
「恥ずかしながら」
彼は白い肌を赤く染めた。
まるで生きているようじゃないか。
「坊ちゃまがあんなにも私の身を案じていた視線が忘れられなくて」
「馬鹿馬鹿しい。こんなに早く、それもあっさりと再会するならばもっとこき使えばよかった」
私の言葉に彼は笑うばかりだ。
「さて。それでは今日もまた始めましょうか」
「二人の時間をな」
「いいえ。お仕事です」
馬鹿は死んでもなおらないというが。
彼の真面目っぷりだけは少しは変わってほしいものだった。




