最終話・神様の依代と増えるヒロインの件
本日2本目です。
ニーヤと旅を始めてから、あっという間に一年という月日が経過していた。
その間、英二は草食生活に耐え抜き、ニーヤの尋常ならざる食費を稼ぐための金策と、理想の依代に関する情報収集に明け暮れていた。
そして今、英二はついに最終目的である王都から遥か離れた火山地帯へとたどり着いた。辺りは硫黄の匂いが立ち込め、岩肌が剥き出しの荒々しい景色が広がっている。
英二の周りには、いつものメンバーが控えている。
永遠の忠誠を誓う第一神徒・ニーヤ、無口だが英二に抱きついては妙にむっつりな行動を見せる二番目の仲間・ルルン、そして強引に旅に加わった変態的な情熱を持つ研究者・セラである。
「ここです神様!この灼熱の山に生息する魔物こそ、神様の次の依代に相応しい、至高の器なのです!」
ニーヤが汗だくになりながらボロボロになった地図を広げて声を弾ませる。
英二の目的はこの山に生息するというピクシードラゴンだった。
これまでの冒険で、ギルドの依頼は報酬が少なく頼りにならないことを実感。自ら理想の亡骸を狩りに行った方が早いという、あまりにも単純な事実にようやくたどり着いたのだ。
ピクシードラゴンは英二の理想をすべて満たしていた。
ガチな肉食であり、空中戦も可能で小回りが利く小型サイズ。さらにその姿は可愛らしさと、紛れもない竜種としての格好良さを同居させているというピクシードラゴン。
これこそ神の依代に相応しい、草食から卒業するための究極の器だった。
「可愛い見た目だが……、肉食のためだ!心を鬼にするぞ!」
その可愛い見た目を思うと殺傷することにやや躊躇いはあったが、今の依代である草食の似非ドラゴンではない完璧な体を手に入れるため、英二は心を鬼にして山を登った。
そして山頂付近の洞窟前でついにその魔物と遭遇した。
それは想像以上に神々しい姿をしていた。
真の竜種と呼ぶにふさわしい光沢のある羽を優雅に羽ばたかせ、体表はエメラルドの宝石のようにキラキラと輝いている。その威厳と比類なき美しさに英二は一瞬、魅入られてしまった。
(だがこれは次の体だ!躊躇しないと決めたのだ!美味しい肉のためなんだ!)
英二は心を鬼にしドランゴの体で咆哮を上げた後、蓄積した全身の神気を一点に集中させた。
キュオオオオン!
神気は一つの光の奔流となりピクシードラゴンの魂を一瞬で凍り付かせた。その体は崩れることなく美しいまま、ゆっくりと空から落ち、その場に静かに横たわった。
「これで……、やっと肉が……。美味い肉が食える!」
英二は草食生活からの解放と、理想の肉体獲得に安堵し喜び勇んで亡骸に近づいた。
しかし、安堵したのも束の間。
横たわったピクシードラゴンの体は、まばゆい光を放ちながらみるみるその形を変えていった。鱗はきめ細やかな肌に変わり、背中の宝石のような羽や逞しい尻尾だけはそのままに残った。
その姿はまるで女神様のように完璧な女の子になっていた。
全裸のまま丸まり眠っているような女の子。宝石のような羽は背中でぴくぴくと小刻みに動いている。
「ま、またヒロイン候補が……」
ニーヤは額を押さえながらつぶやき、セラの鞄から予備の研究用ローブを取り出すと、全裸の女の子に素早く被せた。事ある頃に肌をさらけ出す二人を相手取るニーヤには手馴れた作業だった。
ルルンは、新しいヒロイン登場に興味津々といった様子で、その子の頬をツンツンと指で触れている。その瞳には英二のライバルが増えたという認識よりも、純粋な好奇心が宿っていた。
そしてセラは興奮でローブをはだけさせながら目をギラギラと輝かせた。
「これは夢か!?魔物が人化だと!?さらに体から凝縮された神気の痕跡が!究極の魂の秘密が詰まっている!慰謝料はもういりません!私の全財産を捧げます!この子を、私の研究に……、娘さんを、ください!」
アホなことを言いだすセラを、英二は当然のように無視する。
(理想の依代、また手に入らなかったのか……)
その心は深い落胆に沈んでいた。
こうして英二の依代探しは失敗に終わった。
新しい依代どころか新たな旅の仲間、元ピクシードラゴンで可愛らしい少女を加えてしまう結末。
「ぐぬぬ……、神様の旅は女性ばかり増えていきますね!まるでハーレムではありませんか!このプリティーエンジェルな私が嫉妬で爆発してしまう前に、早く次の体を探しに行きましょう!」
ニーヤの嘆きが火山地帯に寂しく響き渡る中、虹くじゃドランゴ神・加納英二の旅は、今日も明日も明後日も、理想の依代と増え続けるヒロインたちと共に続くのであった。
おしまい
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