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第6話 不思議な質問

 サロン摘発から早数日。

 日に日に学園から姿を消す生徒も増えてきた。


 箝口令が敷かれているため、何が起きたのかを知る者はごくごく一人握りだ。

 食中毒や風邪など、集団感染を疑う声も多い。怖いわねぇと言いつつも、彼らの意識は完全に他のことに向いていた。


「ねぇ知ってる? メラニアさんのこと」

「ああ、子爵令嬢に取られたんでしょう」

「ちょっと頭がいいからって調子に乗るから捨てられるんだよ」

「王子にも睨まれてさ、あんなの妻にしようとなんて誰が思うかよ」

「大人しくしておけばいいものを」


 学園にいる間、聞こえてくるのはメラニアの婚約破棄騒動ばかり。

 わざとメラニアの耳に届くように話しているのだ。ルイとエルザが睨みを利かせてくれるが、話は広がっていくばかり。死に戻り前と同じだ。


 ただ一つ、全く異なることがあった。


「メラニア=ガルド、今後の受講のことで話がある。生徒会室まで来い」


 ジェルケイブス教授の授業直後。

 王子はメラニアの前に立ち、堂々と宣言した。

 その様子にはメラニアだけでなく、メラニアを囲んで嫌味を言おうとした令嬢達も目を丸くしていた。


「王子、私も」

「フランシスカはここに残ってくれ。彼女の友人への伝言を頼みたい」

「え」

「分かりました」


 王子がフランシスカの提案を断った?

 一日でも早く婚約者から夫になりたいと嘆いている王子が?

 メラニアはあまりの衝撃に思考が止まりそうになる。固まるメラニアに王子は苛立たしそうに声をかける。


「行くぞ」

「は、はい」


 宣言通り、生徒会室に通される。中には一人の男子生徒が待機していた。宰相の息子であり、情報収集の段階から手伝ってくれた一人でもあった。


 今日は学園の様子を調べるために来たのだろう。年はメラニア達よりも五つ上だが、生徒会OBの彼なら卒業生であっても不審に思われることはない。


 だがなぜこの場に……。

 少なくともいつものようにフランシスカの魅力を語られるだけではなさそうだ。


 どんな質問が来てもいいよう、気を引き締める。

 王子は生徒会長用の席にドカッと腰を下ろす。長い指を組み、メラニアに問いかける。


「メラニア嬢、私に何か言うことがあるのではないか?」

「陛下に口添えしてくださったこと、感謝いたします」


 メラニアは深々と頭を下げる。

 サロンの摘発が短期間で実行できた理由の一つは、王子の口添えがあったからだ。


 死に戻りによって得た情報など、本来すぐに信じてもらうことは難しい。そのために未来で知った情報をいくつか添えておいた。それが信頼に値する情報だと判断されたことが一つ。


 戻ってきた時間がちょうどジェルケイブス教授の授業中だったことで、メラニアの様子がおかしかったと王子が証言してくれたのが一つ。


 そこに父の集めた情報と仲間達、そして事件の重要性なども加わって今に至る。


「うむ。だが私が期待しているのはそこではない。報告書と共に、大事なメモを添えていただろう。君が時間を巻き戻った証拠としては十分だったが、確定した未来を変えるというのは非常にナンセンスだ。そうは思わないかい、メラニア嬢?」

「後期の授業からは王子と席を交換できるよう、ジェルケイブス教授に相談させていただきます」

「それだけでは足りん」

「……あのことは父以外に伝えるつもりはありません。善良な家臣の一人として、オークションの結果を漏らすこともしないと誓います」


『あのこと』とは、フランシスカが商団を運営していることだ。

 今の段階ではまだ立ち上げたばかりだが、だからこそ知る者は少ない。メラニアが持っている情報の中で、最も信頼される情報として添えさせてもらった。


 実際、価値があると判断されたのだろう。

 無論、父子ともに今後どこかに情報を漏らすつもりはない。


「彼女は皆に好意的に受け入れられていただろうか」

「フランシスカ様がいかに素晴らしい女性かは王子が誰よりもよくご存知かと」


 真っ直ぐと彼を見つめると、満足気に頷いた。


「それでは次の質問を。もしも時間を巻き戻す力を持つジュエルフラワーの種を手に入れたら、君はどうする?」


 どういう意味だろうか。質問の意図が分からない。

 ジュエルフラワーは咲くたびに異なる見た目の花を咲かせるように、種に宿る力もそれぞれ異なる。パンフレットにもそう書かれていた。メラニアは知識で知っているだけ。実際のところ、本当に不思議な力が宿っているのかは種の所有者にしか分からない。


 だが時間を巻き戻すなんてたいそうなことができるものなのか。

 もしジュエルフラワーにそんな力があれば、歴史が何度書き換えられていてもおかしくない。万全の警備が敷かれているとはいえ、観覧チケットが売られていたり、他国の重鎮も参加できるオークションが開かれたりするのも変な話だ。なんとしても国が阻止するはず。


 王子は一体何を試そうとしているのか。

 メラニアは疑問に思いつつも、素直に自分の考えを述べることにした。


「両親と相談して、その後はおそらく陛下に献上することになるかと思います」

「なぜだ。いざという時に備えようとは思わないのか?」

「もしも時間を戻さなければならない事態に直面したとして、私が時間を遡っても信頼を得るためには時間がかかります。それが命取りになりかねません。ならば陛下に献上し、国のため活用していただくのが一番かと」


 今回はたまたま事が上手く進んだだけ。

 時を戻ったキッカケが歴史的な事件や災害ではなく、個人の死であり、成し遂げなければならない明確な目的を持っていなかった点も大きい。


 運がよかったのだ。

 だが時間を戻さなければならない事態になった時、今回のように運だけに頼ってはいられない。目的を達成できる確率を少しでも高める必要がある。


 もちろんガルド家が適任だと判断された際は全力を尽くすつもりだが、適任者を選ぶにしても選択肢は多い方がいい。そう考えるとやはり王家に託すのが一番なのである。


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