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彩光の詩 第8話【揺れる心のメロディ】

・秋風吹き抜ける教室:想いのざわめき


 涼やかな秋風が紅葉の桜並木をそよぐ季節。霧咲高校の夕暮れの教室は、窓から差し込む茜色の光に染まり、埃の舞う空気を静かな温もりが包む。秋風がカーテンを揺らし、彩花のロングヘアがそっと流れる。シルバーフレームのメガネ越しに、怜の静かな瞳が脳裏に浮かぶ。怜くんのセッション…あの音、心をこんなに軽くしてくれた… 初めて男性に感じた意識に、彩花の心臓がドキリと跳ねる。


 だが、彩花の胸にはもう一つの想いが渦巻く。凛の情熱的な笑顔、学園祭で輝く赤いサテンシャツ、力強い歌声。凛…まるで太陽みたい… 学園祭の記憶が蘇り、凛の軽やかな動きに心を奪われた瞬間が胸を締め付ける。凛と一緒にいると、怖いものなんてない…あのサテンの輝き、私に勇気をくれた… 憧れが募る。私、凛みたいに輝けるかな…?


・サテンの記憶:少女時代の光


 彩花のサテンへの想いは、小学5年生の音楽発表会に遡る。母親のラベンダー色のサテンドレスが照明に輝き、抱きついた滑らかな感触が「特別」を刻んだ。お母さんのドレス…あの温もりが、私を強くしてくれた… サテンは彩花にとって「自信」の象徴。学園祭のピンクのサテン衣装が、凛と一緒に新たな自分を導いた。あの衣装を着ると、強くなれる… 凛の情熱、怜の音が、彩花の心を輝かせる。


 放課後の図書室、彩花は静かな一角で本を開く。秋の紅葉が窓越しに揺れ、心がざわめく。怜くんの音、凛の情熱…私の心を動かす人たち。そして、図書室で笑い合った中学時代の親友…あの温かな笑顔がよぎる。凛に憧れ、彼女に心を開き、怜には私の音を聴いてほしい…三人目だ、こんな風に心を許せるなんて… 内気な性格が言葉をためらう。少女時代、友達が少なく、絵本の世界に逃げていた。あのドキドキ、音楽なら伝えられる…


・届けられた光:新曲の予感


 放課後、彩花は音楽室に向かう。秋の夕陽が窓から差し込み、キーボードの鍵盤を茜色に染める。怜くんとのセッション…あの音、私の心を自由にしてくれた… 彩花はキーボードに触れ、静かにメロディを紡ぐ。怜の言葉が蘇る。「最初の曲のイントロ、音色がキラキラ変わる感じ、めっちゃセンスいいよね。」


 あのイントロの音の変化、凛でさえ何度も練習してやっと気付いたのに…怜くんは一度で…! 彩花の胸が熱くなり、頬が染まる。私の音をこんなに深く捉えてくれるなんて…ふと、彼女の指が新たなフレーズを生み出す。心の奥から湧き上がる旋律、怜の静かなアルペジオと凛の情熱的な歌声が交錯するようなメロディだ。この音…私の気持ちそのもの…! 彩花のメガネが夕陽に光り、決意が芽生える。私の音、もっと遠くに届けたい…!


 彩花が鍵盤を叩く音に、音楽室のドアがそっと開く。振り返ると誰もいないが、机の上に小さなメモが置かれている。


「君の音は、心の奥をそっと照らす。もっと響かせて。」


 とだけ書かれ、差出人の名はない。彩花の胸がざわめき、鼓動が速まる。誰…? 怜くん? それとも…中学時代、こんなメモを交換したことがあったっけ… メモを握りしめ、頬が熱くなる。私の音、誰かに届いた…? 音楽室の静寂の中で、彼女は決意を新たにする。


 私の音で、誰かの心を動かしたい…怜くんとも、凛とも、もっと響き合いたい…!


 彩花はメモをカバンにしまい、キーボードに向き直る。次のステージ、もっと自分を出したい…! 彼女の指が鍵盤を滑り、新たなフレーズが響く。


 このフレーズ…新しい曲が生まれる! 夕陽が桜並木を照らし、彩花の瞳が輝く。私の音、誰かの心に届くんだ…!


・次回予告:第9話【揺れる心の余韻】(9月9日【火】20:00公開)


 彩花の心に芽生えた新たな決意。謎のメモが、過去の友への想いを呼び覚ます。そして、凛の心に秘めた、彩花への想いとは? 次回、「揺れる心の余韻」、彩花の音が新たな光を放つ!

・コメントのお願い


 彩花の新たな決意、母との記憶、謎のメモ、どの瞬間が心に響きましたか? 次のステージやメモの差出人、どんな展開を期待しますか? ぜひコメントで教えてください!

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― 新着の感想 ―
誰かに届いてほしいという思い、誰かに届いたかもと言う喜びが緻密なタッチで表現されていてとても共感が持てます。 表現者としてのこの想いは音楽でも小説でも共通していますね。 文字を読むときはBGMもかけず…
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