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彩光の詩 第4話【雷鳴の序曲】

・教室の轟音:魂の響き


 霧咲高校の教室は、放課後の静寂に包まれ、夕陽の赤みがカーテンを透かして埃の舞う空気をほのかに照らす。窓際の机に置かれた小型アンプから、エレキギターの弦を震わせる轟音が響き、静けさを切り裂く。はやてれい、ハードロックユニット「NightReaverナイトリーヴァー」の二人は、学園祭のステージに向けてオリジナル曲「Thunder Pulse」を磨き上げていた。雷鳴のような重低音が教室を揺らし、彼らの魂を刻む。


 颯はがっしりした体を少し前傾させ、短く刈った黒髪の下で鋭い目がギターのネックを貫く。制服のシャツは袖をまくり、動きにキレのあるリーダー格の姿がそこにあった。ギターを低く構え、パワフルなリフを刻むその姿は、まるで伝説のメタルバンドの若き魂を彷彿とさせる。「怜、さっきのフィル、もう半拍早く入ってくれ。」低く落ち着いた声が、教室の空気を引き締める。「俺のリフに合わせて、もっと魂がぶつかり合う感じにしたいんだ。」この音、観客の心をぶち抜く…! 颯の瞳に、燃えるような情熱が宿る。


 怜は隣で、華奢な肩を少し縮こませながらギターを抱える。長めの前髪が美少年らしい顔を半分隠し、繊細な雰囲気を漂わせる。指が弦を滑り、情感豊かなアルペジオが颯のリフに寄り添うように響く。「うん、わかった…」怜の声は控えめだが、瞳には音楽への情熱が揺れる。颯の音に、俺の音、ちゃんと届くかな… 怜の心に、かすかな不安と闘志が交錯する。


 颯は小さく笑い、怜の肩を軽く叩く。「お前、キーボードやってただけあって、音に深みがあるんだよ。その繊細さが、うちのサウンドに色を付ける。絶対カッコよくなるって。」サッカー場でチームを引っ張った経験が、颯の言葉に力強さを与える。怜の音は、俺の雷鳴に魂を吹き込む… 颯は怜をハードロックの世界に引き込んだ兄貴分であり、怜の迷いを支える存在だった。


・制服の誓い:音で勝負する魂


「そういえば、ステージ衣装どうする? 俺、制服のままでいいと思うんだけど。」颯がギターを膝に置き、夕陽に目を細める。怜は前髪をそっとかき上げ、控えめに頷く。「うん、俺もそう思う。派手なの、ちょっと苦手だし…制服なら動きやすいし、颯と息を合わせやすいよね。」


 颯はニヤリと笑い、ギターの弦を軽く弾いた。バーン!と響く音が教室を震わせる。「だろ? 俺たちは音で勝負だ。衣装なんかに頼らず、ギターの轟きで観客の心をぶち抜くぞ!」 彼の瞳は燃え、怜を巻き込んで雷鳴のようなステージを夢見た。「もう一回、頭から合わせてみよう!」


 二人の練習は、校舎裏の静かな片隅や空き教室で続いた。人目を避け、ひたすら音を重ねる。颯が骨太なリフを刻み、怜が繊細なアルペジオで奥行きを添える。怜がリズムを外しても、颯は「気にすんな、次だ!」と笑い、怜は小さく頷いて弦を握り直す。リズムマシンのビートを軸に、重厚なツインギターのサウンドが教室を満たし、「NightReaver」の世界観を固めていった。颯のギター、まるで雷が地面を割るみたい…。 怜は心の中で呟き、颯の背中を見つめる。俺の音、ちゃんと届くかな…でも、颯と一緒なら、絶対響くはず…。 彼の指が弦を強く弾き、初めての自信が胸に灯る。


・運命の交錯


 颯と怜の目標はシンプルだった――学園祭で「自分たちの音」を響かせること。観客の目は気にせず、ただ魂を音にぶつける。「NightReaver」は、教室の片隅で生まれた小さな夢だったが、雷鳴のように大きく響く可能性を秘めていた。

 同じ学園、同じクラスにいながら、颯と怜は「BlossomEcho」の凛と彩花と交わる機会はなかった。凛の明るい笑顔は教室を照らし、颯や怜もその存在に気づいていたが、言葉を交わすことはなかった。彩花は凛のそばに影のように寄り添い、颯や怜とは目も合わず、互いの世界は平行線のままだった。


 だが、学園祭のステージが近づくにつれ、運命の糸が静かに絡み始める。ある放課後、校舎裏でギターを調整していた颯と怜は、音楽室から漏れるメロディを耳にした。彩花のキーボードが紡ぐ柔らかな音と、凛の力強い歌声が響き合う。颯はギターを手に立ち止まり、呟いた。「…あの音、めっちゃ心に響くな。学園祭のバンドなんて、流行りの曲をコピーするだけだと思ってたけど、これはマジで本物だ。面白くなってきたぜ。」


 怜は目を細め、音楽室の窓を見つめる。「うん、なんか…心が揺れる音だね。あのキーボード、優しくて、でも力強い。誰が弾いてるんだろ…」怜の心に、初めての好奇心が芽生える。


 二人は知らなかった。自分たちの雷鳴のようなハードロックが、凛と彩花の花びらのようなサウンドと、同じステージで交錯する運命を。凛と彩花もまた、教室の片隅で黙々とギターを弾く二人の少年が、どんな魂を音に込めているのか知らなかった。


 夕陽が沈み、教室にアンプの残響だけが残る。颯はギターをケースにしまい、怜に声をかけた。「怜、俺たちの音、絶対響くぜ。学園祭、ぶちかまそう!」 怜は小さく微笑み、ギターを抱きしめるように頷いた。「うん、颯と一緒なら、きっとやれるはず!」


・次回予告:第5話【星と雷鳴のステージ】(8月26日【火】20:00公開)


 いよいよ学園祭当日! 「BlossomEcho」の彩花は、生まれて初めてのライブに震えながらステージへ。だが、鍵盤に触れた瞬間、彼女は天才的な輝きを放ち、体育館を星空のような音で満たす! 凛の情熱的な歌声、怜の注がれる視線、颯の雷鳴のようなギター。4人の魂がぶつかり合い、どんな青春のハーモニーを響かせるのか? 次回、「星と雷鳴のステージ」、心揺さぶるライブが始まる!

・コメントのお願い


 颯と怜の雷鳴のような「Thunder Pulse」や、BlossomEchoとの運命の交錯、どの瞬間があなたの心を震わせましたか? ぜひコメントで教えてください!

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