2nd GATE 第5話【青春の音と永遠の守り人】
この物語は、彩花の“魔法”を傍らで見つめ、その秘密を知ってしまった少年の視点で語られます。
怜が高橋 怜として生きた17歳から30歳までの、たった一度の青春と、永遠の愛。――「あの音に出会わなければ、俺の人生は違っていた」怜が彩花のキーボードに心を奪われた瞬間から、すべてが始まった。
この話は、怜が“彩花の魔法”に一生を捧げるまでの、長い長いラブレターです。
(本文にはGrokによるAI生成イラストの挿絵を挿入しております)
・霧咲高校、2年生の学園祭当日
霧咲の街は、秋の涼やかな風に揺れ、色づく桜の木々が学園祭の喧騒を静かに見守る。
17歳の怜は繊細な佇まいで、学園祭のステージに立つ準備をする。怜の心は、音楽への情熱と、初めてのステージへの緊張、そして同級生の少女・佐藤 彩花への淡い想いで、激しく揺れ動く。
この音が、怜の運命を変えた。
中学時代の怜は、繊細な心を持て余し、教室の片隅で静かに過ごしていた。音楽だけが彼の逃げ場だった。
中学生の夏、バンドのキーボードに憧れて通信講座を始めた。
毎晩、リビングの隅でヘッドホンをしてスケールを弾き、「Cメジャースケールは指使い3-4で」「左手はオクターブで支えて」と教材に沿う。
練習曲を提出し、添削結果が戻るたび上達を実感したが、ある日の音楽室、同級生が軽やかにショパンを弾きこなす姿に胸がざわめく。
同じ鍵盤なのに、怜の音は機械的で指がもたつく。
「……俺にはセンスがないのか」
課題を録音する手が重くなった。やがてキーボードは、通信講座のための楽器ではなくなった
内蔵シーケンサーを起動し、ベースとドラムを打ち込む。コード進行を決めて、その上にオリジナルメロディを重ねていく。
生の演奏よりも、曲そのものを「作る」ことの方が、怜の心を深く揺さぶった。鍵盤は、もはや怜の「作曲ツール」に変わっていた。
ヘッドホンから漏れるのは、もう誰かの曲じゃない。自分の内側から這い出してきた、名もなき感情の塊だ。
しかし、怜の情熱は父親との間に、波紋を広げる。
怜の父・渉は堅実な会社員で、「音楽は趣味でいい」と考える現実派。
だが、かつては父もロックを愛し、古い洋楽の名盤を聞きながら、得意げに知識を語ってくれた。あの頃の父の目は輝いていた。
「怜、ジャン・ローズがロックにオルガンを革命的に持ち込んだんだ。それまでのロックはギターが主役だったけど、キーボードも、同じ土俵で戦えるってはじめて証明した!」父の声は熱く、怜の心を震わせた。
だが、今の父は違う。
「怜、こんな時間まで何やってるんだ? 音楽は趣味でいい。安定した仕事に就くために、ちゃんと進学しろ。」
父親の声は穏やかだが、怜の夢を切り裂く重さがある。あのロックを愛した父が、怜の情熱を諭す…
怜は鍵盤を見つめ、唇を噛む。
「父さん…音楽は、俺の心を自由にするんだ。俺、音楽で自分を表現したい…!」
彼の声は震え、決意が滲む。
父親はため息をつき、「進学して、将来を考えろ。夢だけじゃ食っていけない」と言い残し、部屋を出る。
怜はパネルに写る波形を見つめるが、父の言葉が棘のように刺さる…
・運命の合宿・雷鳴の出会い
高校1年、霧咲高校に入学した怜は、翌日の合宿で出会った颯と、音楽の話題で意気投合する。サッカーで鍛えた長身の颯は、寡黙だが努力家で、エレキギターを始めたばかりだった。
放課後の音楽室で颯がハードロックのリフを弾き始め、怜は衝撃を受ける。
弦の震えが腹に響き、ピッキングの瞬間、全身がリズムに奪われる。フレットスライドでコードが変わり、スケールも指をずらすだけで別のキーに移れる。黒鍵白鍵の区別などない。
颯から借りたギターを持つと、ネックが掌にフィットし、弦の振動が腹に伝う。
ピックが巻弦を擦る感触、歪んだアンプのサウンドは、まるで「生き物」のように思えた。
鍵盤は「正確さ」をギターは「身体」を求める。
怜は気づいた。キーボードで培った知識、コード、リズム、構成をギターに乗せれば「自分の音楽」になる。
キーボードを自在に弾きこなす夢は諦めたが、無駄じゃなかった。ギターは頭の中の音楽を、身体で鳴らす道になる!
怜は颯のハードロックやヘビーメタルのリフに感化され、キーボードを置いてギターを手に取る。
俺も、負けたくない…!
放課後の音楽室。颯がアンプのボリュームを上げ、怜の前に立つ。
「怜、スケール練習はな、一度でもミスったら絶対に最初からやり直すんだ! 途中でごまかすと、脳が『間違えてもOK』って覚えちまう。クロマチックを160BPMで10周やったら130に戻って更に2周。これを1セット5回繰り返せば、必ず速く弾けるようになる。」
颯の指導は、いかにも体育会系らしい厳しさを持ちつつも、怜を納得させるだけの説得力を持っていた。
颯は豪快に笑いながら、怜の親弓をネックの裏側に立て、正しいポジションを刻み込む。「痛くても逃げんなよ。指にタコができたら、それが勲章だ!」
怜は苦笑いしながらも、颯の熱に当てられて目を輝かせる。「…わかった。颯、俺、絶対に追いつくから!」
その日から、怜はシーケンサーの打ち込みで作成したリズムパターンを流しながら、夜遅くまでコードやスケール練習に没頭した。
・NightReaverの誕生
ある夜、怜は颯のリフに感化された初の自作曲「Dig Storm」を完成させる。疾走感のあるドラムパートと重厚なシンセベースが融合し、ギターリフを際立たせるハードロックの曲調だ。
サンプリング音源で表現されたエレキギターのサウンドはチープだが、颯と俺のギターを重ねれば、俺たちの世界が始まる…!
新学期が始まる放課後の教室で、怜は颯に「Dig Storm」を聴かせる。
颯の目が輝き、「怜、この曲、めっちゃ熱いな! 俺たちのギターとこの打ち込み、合わせたらやばいぜ!」と興奮する。
二人はツインギターのハードロックユニット「NightReaver」を結成し、学園祭に向けて新曲「Thunder Pulse」を共同で作曲する。颯のリフに怜のシンセパッドとドラムが絡み、雷鳴のようなエネルギーが響き合う。
二人は「Thunder Pulse」を携え、初めてのステージを目指す。
颯が笑う。「怜、俺たちの音、絶対でっかく響くぜ!」
怜は頷き、颯…お前と一緒なら、どこまででも行ける…この絆が、俺の武器だ…! と心を燃やす。
・彩花との出会い
学園祭当日、霧咲高校の体育館は観客の熱気で溢れ、歓声が嵐のように渦巻く。衣装選びに無頓着な怜と颯は、制服姿のままステージに立つ。怜の端正な顔立ちは、緊張でわずかに青ざめ、ギターを握る手が震える。
初めてのステージ…失敗したら、すべて終わる…! 颯が肩を叩き、「怜、俺たちの音、絶対届く。信じろ」と囁く。怜は頷き、深呼吸する。
「Thunder Pulse」の演奏が始まると、颯のリフが力強く爆発し、怜のアルペジオが空間を切り裂く。観客の歓声が上がり、怜の心は高揚の渦に飲み込まれる。
この音…怜たちの青春だ…だが、怜の高揚感は、自身のライブのひとつ前のステージに囚われていた。
――同級生の女子二人組による音楽ユニット「BlossomEcho」――
ピンクのサテンシャツに身を包んだ彩花が、シルバーフレームのメガネ越しの真剣な眼差しでキーボードを弾く。サラサラの黒髪が揺れ、彼女の透明なメロディが会場を、星屑のように包み込む。
彩花さん…! 怜の心臓がドキリと激しく跳ね、サテンの光沢がステージの光に映える姿に、魂を奪われる。
彩花の演奏は、怜が中学以来夢見ていた「完璧な音」そのものだった。
――あの音…俺の心を全部持っていく――
彼女の指が鍵盤を滑り、「Blooming Days」が凛の力強い歌声と重なり、まるで自分自身の中にある全ての感情が爆発するように思えた。怜の心は彩花の音と姿に囚われ、初めての恋心が燃え上がる…!
・音楽室の秘密のセッション
数日後の放課後、怜は音楽室で一人、ギターの弦を交換する。彩花さんの音…まだ耳に残ってる…心臓が、止まらない…! と胸が激しく高鳴る。
ドアが静かに開き、彩花が現れる。白いシャツに青いネクタイ、紺のプリーツスカートが夕陽に映え、彼女は少し照れながら言う。
「あの、高橋…怜くんだよね? 学園祭のライブ、見たよ。ハードロックってあんまり聴いたことがなかったけど…なんか、すごい世界に引き込まれた気がした。」
彩花さんが…俺の音を…! 怜の頬が熱くなり、言葉を絞り出す。
「彩花さん…俺、彩花さんのキーボード、ほんとすごいと思った。『Blooming Days』、まるで星空みたいで…」二人は互いの音楽に感銘を受けたことを語り合う。
怜の心臓がドキドキと爆発的に高鳴る。彼女がキーボードに触れ、「怜くんのギター、ちょっと聴いてみたい…合わせられるかな?」と提案する。怜は驚きつつ、ギターを構える。「う、うん…やってみる…!」
彩花の優しいアルペジオで始まり、怜のギターが力強いコードで寄り添う。音が重なり合い、まるで二人の心が激しく会話するよう。彩花さんの音、こんなに優しくて…俺のギター、包んでくれる…! 怜は目を閉じ、即興でメロディを紡ぐ。
彩花が笑顔で、「怜くん、このフレーズ…なんか、夕暮れみたいだね」と言う。怜は頷き、「彩花さんの音、星空みたい…」と返す
夕陽が音楽室をオレンジ色に染め、二人の旋律が青春の新たなページをに開く。
・愛の目覚め
練習のあとの片付けの時間、怜と彩花は音楽倉庫で楽器を整理する。狭い空間に、キーボードとギターのケースが積み重なり、埃っぽい空気が漂う。彩花の白いブラウスと紺のプリーツスカートが彼女の内気な美しさを引き立てる。
怜はネクタイを緩め、シャツの袖をまくる。彩花さんと、こんな近くで…心臓が、破裂しそうだ…! キーボードスタンドを運ぶ中、彩花がバランスを崩し、怜が咄嗟に支える。二人の手が触れ合い、怜の心を熱くする。彩花さん…
彩花の頬が赤らみ、彼女は目を伏せる。「怜くん…ごめん、ドジっちゃって…」彩花さんの手、こんなに温かい…! 怜は勇気を振り絞り、震える声で言う。
「彩花さん…俺、彩花さんの音、ほんとに大好きだ。…いや、音だけじゃなくて、彩花さんそのものが…」言葉が途切れ、怜の顔が真っ赤になる。
彩花は驚き、目を大きく見開くが、ゆっくり微笑む。
「怜くんのギター…真剣に音楽やってる姿…大好きで…。あのステージで、怜くんの音に心が震えた。私も…怜くんと…もっと音楽を一緒にやりたい…」
二人の視線が絡み合い、倉庫の静寂に心臓の鼓動だけが静かに、熱く響く。
怜はそっと彩花の手を握り、彼女もまたその手を握り返す。彩花さん…俺の音、彩花さんに届いた…! この瞬間、怜の恋心は愛へと変わり、音楽と心が一つになる。
・刃に気づいた夜
怜は、彩花の音にどこまでも魅せられた。
ある夜、怜は一人、音楽室で録音した、彩花の『Blooming Days』を聴いていた。彩花の指が鍵盤を滑り、フットスイッチで音色を瞬時に切り替える。
静かなアルペジオの中で、突然鋭いピアノのアタックで膨らむ。
怜は息を呑んだ。
美しい。あまりにも、美しすぎて――怜の胸の奥が疼く。
――夢だけでは食っていけない。音楽は諦めろ――
突然、父の言葉が頭をよぎる。俺に音楽を教えてくれた親父がなぜ!? やめろ、やめてくれ…。
彩花の音が止み、怜は我に返った。
彩花の音は、優しすぎて、聴く人の心の奥底に眠る傷を、そっと、でも確実に抉ってしまう。怜は震える手でイヤホンを外した。
「……彩花は、気づいてない」自分の音が、どれだけ人を傷つける可能性があるか。
この音を凛が初めて聴いたとき、マイクを落とし、涙を流して震えていたという。ただ感動しただけじゃない。彩花の音が、凛の心の奥に眠っていた、大切な何かを、優しく、でも容赦なく触ったからだ。
怜は確信した。彩花は、自分の音の“刃”に気づいていない。
きっと、その刃は彩花自身も傷つけてしまう。
怜の頭に浮かぶのは――27歳で突然この世を去った、伝説のギタリストの姿だった。
ステージで炎のように燃え、でも誰にも本当の孤独を語らず、最後は静かに消えてしまった、あの男。
彩花の音も、あんな風に、誰かを救うために燃え尽きてしまうかもしれない。
だから俺が、彩花の音を、燃え尽きさせない。
――これが、俺の役目だ。
怜は静かに呟いた。「彩花さん……俺が、君の音を守る」
・二人だけの結界
翌日、怜は校舎を歩きながら、胸の奥に灯った決意を、静かに握りしめていた。
ここ数日、彩花とは話せていない。
今日こそ話そう。そう決意して教室に入ると、そこには恥ずかしそうにメガネを直しながら、微笑む彩花がいた。
「ごめんね。なんか…私、もっとちゃんと話したいなって…」 声は小さく、メガネ越しの瞳が揺れる。
怜は驚き「大丈夫だよ、彩花…。」自然と呼び捨てで呼んでいた。
怜は勇気を振り絞り、続ける。
「彩花…一緒に音楽ユニット、結成しないか? 彩花のキーボード、俺、めっちゃ好きなんだ。 優しくて、心に響く音。でも……」
言葉を一瞬だけ止めて、彩花の瞳を見つめ、静かに続けた。
「俺と二人だけで、彩花が思う存分、自分の音を鳴らせる場所を作りたい。誰にも遠慮しなくていい、彩花の音だけが自由に響く、俺たちだけの聖域を」
彩花の瞳が揺れ、涙がこぼれた。
「怜……」
怜は優しく微笑み、そっと彩花の手を取った。
「ユニット名は、もう決めてる。Crystal Veil ――水晶のヴェール。透明で、でも誰にも壊せない、彩花の音を守るための、俺だけの結界」
彩花は嗚咽をこらえながら、怜の手を強く握り返した。
「怜……ありがとう。私、怜となら……自分の音を、ちゃんと好きになれそう」
怜は心に誓う。
――俺が、ずっと傍にいる。彩花の音が誰かを傷つけないように、彩花自身が傷つかないように、一生、守る。
二人は、誰も知らない、まだ小さな、でも永遠に続く音を、その日、確かに始めた。
・霧咲ストリートソニックの絆
数ヶ月後の2月、霧咲シティプラザで開催された「霧咲ストリートソニック」に、「BlossomEcho」が参加する。
彩花はピンクのサテンシャツに黒のプリーツスカート、凛は赤いサテンシャツに同じミニスカートで、キーボードと歌声が響き合う。美織のデザインしたポスターが会場を飾り、観客の熱気が地下街を、嵐のように満たす。
ライブのクライマックス、彩花が観客に語りかける。「今日は、特別なゲストを呼びます! 私の…大切な人、怜!」
観客がどよめく中、怜がステージに上がる。颯が密かに用意したギターを抱え、照れた笑みを浮かべる。
彩花も照れながら、「怜と私のユニット、『Crystal Veil』の曲を、特別に一曲だけ披露します。聴いてください」と囁く。
「Autumn Whisper」が流れ始める。
彩花のキーボードが優しく鳴り、凛のコーラスが寄り添い、怜のギターが、まるで彩花の音を抱きしめるように重なる。
怜は目を閉じ、あの音楽室で誓った言葉を思い出す。
――俺が、彩花の音を守る。
そして今、その音が、誰かを傷つけることなく、多くの人に届いている。
会場が涙と歓声に包まれる。
・未来への旋律
「霧咲ストリートソニック」の成功を機に、「BlossomEcho」はセミプロとして活動を広げ、霧咲の若者たちの心を掴む。
彩花のキーボードは、地元のライブハウスで輝きを増し、凛の歌声は観客を熱狂させる。怜と彩花の「Crystal Veil」はTubeStreamでインストファンの心を掴み、愛を音で紡ぎ続ける。
怜は父親の願いを聞き入れ、大学に進学するが、音楽への情熱は抑えきれなかった。
昼は大学の講義に通い、夜はカフェや配送のアルバイト。学費を稼ぎ、夜間の音楽学校で音楽理論とレコーディング技術を学んだ。
徹夜でミキシングに没頭する怜の目は、疲れよりも。彩花の音を守る決意で輝いていた。
大学卒業後、怜は大手レコード会社にレコーディングエンジニアとして入社。
スタジオのコンソールに向かい、アーティストの音を磨き上げるたび、怜は思う。――俺は、彩花の音を守るために、この場所にいる。
怜の誠実な姿勢は同僚やアーティストの信頼を勝ち取り、業界での人脈を広げていった。
24歳の春、桜並木のベンチで、 怜は彩花にプロポーズする。
「彩花、俺の音も、人生も、君と一緒じゃなきゃ完成しない。学園祭で、君の指が鍵盤を滑るのを見たとき、俺の心は初めて自由になった。彩花、俺の全ての音、全ての人生を、ともに共鳴させたい。二人で未来を奏でていこう!」
彩花は涙を浮かべ、微笑む。「怜くん…私も、怜と一緒に、ずっと未来を奏でたい。」
二人は結婚し、翌年、娘・奏が生まれる。怜は25歳で独立し、小さなレーベル「Cobalt Waves」を立ち上げる。
だが、子育てとレーベルの運営は、怜に重い試練を課した。
夜泣きする奏を抱きながら、若手アーティストのデモ音源を聴く怜の目は、疲労と情熱で揺れる。
彩花…奏…俺、絶対諦めない…!
だが、怜の誠実な人柄が奇跡を呼んだ。かつての音楽仲間や業界の先輩たちが、次々と手を差し伸べてくれた。
レーベルは成長し、若手アーティストのデビューが次々と実現。怜は気鋭のプロデューサーとして名を馳せ、彩花の音楽を世界に届ける夢を共有する。
・彩花の飛躍
高校卒業から13年、霧咲のライブハウス「Stellar Notes」で、彩花の初ソロライブが開催される。
怜はプロデューサーとして裏方を奔走し、「彩花の魔法」を最高の音で響かせる。客席には、颯や凛、彩花の旧友の優奈の姿があり、準備を終えた怜も、5歳の奏とともに腰かけた。
彩花のキーボードが星空のようなメロディを紡ぐと、観客の心が一つになる。怜は彩花の輝きを見つめ、胸が熱くなる。彩花…俺たちの音、こんな遠くまで来たんだ…!
・この音を届けるために
ある秋の夕暮れ、怜はギターを背負い、懐かしい霧咲高校の音楽室を訪れた。
校舎は老朽化が進み、「近いうちに取り壊しか、文化財保存か」で揺れているという噂だった。
埃っぽい鍵盤、古びたスピーカー、夕陽に染まるカーテン。
怜は静かにギターで「Autumn Whisper」を弾き始める。
彩花が隣に並び、赤いショルダーキーボードを肩に担ぎ、音を重ねる。二人の旋律が、青春の記憶と響き合う。
彩花が柔らかく微笑み、言う。
「この音楽室、特別だよね。なぜか、ここに来ると、高校生になった奏がキーボードを弾いてる姿が浮かぶの。変よね、笑っちゃう。」
怜は驚き、穏やかに頷いた。そして、静かに呟いた。
「……この音楽室を、残してほしい。いつか奏にも、ここを見てもらいたい」
彩花が怜の手を握り返す。
「うん……私たちの音が、奏にも届くように」
夕陽が、二人の背中を優しく照らした。
霧咲の星空に、永遠に続く旋律が、静かに、確かに、響き始めた。
・次回予告:彩光の詩 2nd GATE 第6話【心の旋律 優奈の癒し】(12月12日【金】20:00公開)
怜が彩花へのプロポーズを迫るとき、24歳の心理カウンセラー・中村優奈は、音楽療法ワークショップ「Harmony Haven」で若者たちの心を癒す。図書室のメモが紡ぐ、涙と笑顔の永遠の絆。優奈と彩花の友情は、心の闇を照らす希望の旋律となるのか――?
音楽と愛に包まれた、怜の半生に寄り添っていただいて、本当にありがとうございます。あなたの心にどんな音が残ったか、ぜひ教えてください。




