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彩光の詩 第19話【雪の日の手紙】

・雪の街角


 2月に入り、霧咲の冬の街は雪がちらつく静けさに包まれる。駅前通りのイルミネーションが冷たい夜を彩る中、彩花はカフェ「ルミエール」を後にする。優奈との再会で心が軽くなり、彼女の夢を応援したい…怜と凛とも、もっと音楽を…と胸を弾ませる。オフホワイトのシャツが雪の光にきらめき、デニムのスカート、シルバーのメガネ越しの瞳が輝く。


 だが、心の奥で不安がそっと疼く。最近、怜との時間が減ってる…私がBlossomEchoブロッサムエコーに夢中だったからかな… 優奈の突然の転校がよぎり、胸がそっと疼く。もし、怜や凛を失ったら、また一人になる…?


 遠くから凛の弾ける笑い声が聞こえ、心が軽く揺れる。視線を向けると、雪が舞うイルミネーションの通りで、凛と怜が肩を寄せて歩いている。凛の赤いコートが雪に映え、怜の紺色のコートが彼女の肩に寄り添う。凛がスケッチブックを手に怜に見せ、「彩花、最近めっちゃ輝いてるよね!」と笑う声がかすかに聞こえる。怜が「ああ、でも恥ずかしいから、彩花には内緒で…」と返す。


内緒…? 何…? 彩花の心がちくりと疼き、胸が冷たく締まる。私がBlossomEchoに夢中になりすぎて、怜との時間を後回しにしたから… あの図書室の夕陽のような優奈の笑顔が、今も心に残る… 最近、怜との時間が減って、メッセージもそっけなかった… 私が、こんな状況を作ったんだ…


 彩花の胸がそっと締まり、涙が滲む。怜…私の恋人なのに…凛、親友なのに… 優奈との再会で整理された心が、嫉妬と不安の波に揺れる。


 彩花の心に、凛の言葉が頭をよぎる。


――彩花と怜、めっちゃラブラブじゃん? 恋、いいなって思うかな?――


凛、まさか…怜のこと?


私、凛の輝きに寄りそう影だったのかな… こんな心じゃ、誰も繋ぎ止められない… 彩花はメガネを外し、震える手で握り潰しそうになりながら、二人に歩み寄った。


「怜…凛…何してるの…?」と呟く。


 凛が彩花の声に気づき、驚いて振り返る。「彩花!? え、なに!?」怜も目を丸くし、慌てて近づく。「彩花、どしたの!?」だが、彩花の心は抑えきれず、「どうして…二人、こんな楽しそうに…? 怜…私の恋人なのに…凛、親友なのに…」彩花の声が詰まり、涙が滲む。言葉にならない不安に、彼女はしゃがみ込み、目を覆う。通行人が遠巻きに見つめる中、彩花の世界は裏切りの痛みで塗り潰される。


・凛の決意


 怜は彩花の涙に動揺し、胸がそっと締まる。「彩花、違う! 誤解だ! 俺と凛、偶然会って、ストリートライブの話してただけ!」彼が近づこうとするが、彩花は後ずさり、「そんな笑顔で…肩触って…! 怜、私のこと愛してるって言ったのに…!」と声を震わせる。一人になるのが怖い…


 凛も彩花の涙に心を痛め、ショックを受ける。「彩花、ほんとだよ! 私、怜と何もない! ライブで何か面白いサプライズできないかな? って相談してただけ!」だが、彩花は聞く耳を持たず、「二人で私のこと、忘れたかったの…?」と呟き、走り出そうとする。


 彩花の涙を見た凛は、強い衝動に駆られた。彩花…こんなに傷つけて…私が守りたい…! 彩花の剥き出しの感情に、彼女の心は愛情で溢れる。彩花をこんな風に泣かせたくない…! 「彩花、待って!」凛は雪の地面を蹴り、赤いコートを翻して走り出す彩花を追いかけた。路地裏で追いつき、背後から強く抱きしめた。「彩花、逃げないで! 私の話、聞いて!」


「凛…放して…! 私、置いてかれたの…?」彩花は泣きじゃくりながら抵抗するが、凛の腕は力強く、彼女の震える身体を包み込む。彩花…こんなに愛しいのに…でも、私、彩花の幸せを壊せない… 雪が凛のコートに溶け、彩花の心に温もりが戻る。


「彩花、ごめん…ほんと、怜と何もないよ… 彩花のこと、裏切るわけない。私…彩花のこと、ほんとに大好きだから…」凛の声は震え、耳元で囁く。彩花は凛の温もりに力が抜け、震える声で呟く。「本当に…?」凛…こんな私を… と心がそっとほだされる。凛の優しさ…こんなに深い… かつての想いが蘇り、私がこんな自分でも…凛は受け止めてくれる… と胸が熱くなる。「凛…ごめん、私、酷いこと言って…」彼女は凛の腕の中で嗚咽を静め、絆の深さを確認する。


 凛は彩花をそっと抱きしめたまま、雪の中で微笑む。雪が赤いコートに溶け、彼女の瞳が冬の星のように輝く。


 彩花の心が震え、本音がこぼれる。「凛…私ね、自分のこと、ずっと影みたいに薄い存在だと思ってた。凛の炎のような情熱のそばで、いつか見えなくなっちゃうんじゃないかって…怖かったの。」涙が雪と混じり、シルバーのメガネに光る。「こんな私、置いてかれるって…思っちゃった…」彩花の声が詰まり、凛の腕に力が抜ける。凛…こんな私を…


 凛は彩花を強く抱きしめ、耳元で囁く。「彩花…私の情熱、炎みたいに見えるかもしれないけど、ひとりじゃすぐ消えちゃうんだ。彩花に出会ってなかったら、私、ただの灰になってたよ。」彼女の声が震え、雪を溶かすような笑顔が続く。


「彩花のキーボード、あの桜の木の下で私のギターと響き合った… あの日の光が、私の炎を灯し続けてくれたんだ。」彼女の声は軽やかだが、深い愛が響く。


 「それに、怜くんは呆れるくらい彩花に夢中! 私みたいな可愛い子がそばにいても、彩花のことしか話さないんだから!」凛はいたずらっぽく笑い、凍えた空気を和らげる。


 彩花は凛の言葉にハッとし、怜…私、信じなきゃ… と我に返る。「凛…ごめん、ほんとに…。凛、こんな私でも…ありがとう…」 彼女は凛の手を握り、深い友情に心が温まる。


・怜との再会:愛の再確認


 彩花は凛に導かれ、駅前に戻る。怜は雪の中で立ち尽くし、彩花を心配そうに見つめる。「彩花…!」彼が駆け寄ると、彩花は怜の胸に飛び込む。「怜、ごめん…! 私、疑ったりして…」涙が怜の紺色のコートを濡らし、彼女は震える声で続ける。「怜のこと、大好きだから…!」


 怜は彩花を強く抱きしめ、「俺もごめん…。彩花を不安にさせた。俺、彩花のこと、ほんと愛してる。凛とは、ライブのサプライズ考えてただけだよ。」彼は雪に濡れた彩花のメガネをそっと拭き、優しく装着させる。二人は雪の街角で抱き合い、愛を再確認する。雪が二人の肩に優しく降り積もり、心の傷を癒す。


 凛は遠くから二人を見守り、彩花、それでいい…と微笑む。彼女の心は、彩花への想いを抑え、友情の深さを胸に刻む。


――私は彩花の親友。それでいい――


・雪の日の手紙


 ある週末の朝、彩花は郵便受けにシンプルな白い封筒を見つける。怜の繊細で力強い筆跡で「彩花へ」と書かれ、心臓がドキリと跳ねる。部屋に戻り、震える指で封を開けると、怜の真摯で熱い想いが綴られていた。


 彩花、いつもそばにいてくれてありがとう。誤解のことで、彩花を傷つけたこと、ほんとにごめん。彩花の涙を見た時、俺、彩花を絶対守りたいって、改めて思った。彩花の笑顔、彩花の音楽、彩花の全部…俺、めっちゃ愛してる。これからも、ずっと一緒にいたい。バレンタインデーの夕方、いつものスタジオで、ちゃんと話したい。怜


 手紙の端には、怜が描いた小さなキーボードとギターのイラストが、愛らしいアクセントとして添えられていた。


怜…こんな熱い気持ち、書いてくれて… 彩花の目が潤み、胸が熱くなる。彼女は手紙を胸に抱き、決意を固める。


次のスタジオ…怜に、私の全部を伝えたい…


・愛の聖域


 バレンタインデーの夕方、彩花と怜は貸しスタジオで再会する。雪が降りしきる冬の街の喧騒を背に、狭い部屋は柔らかな照明に包まれ、二人の情熱の聖域となる。彩花はオフホワイトのシャツにデニムのスカート、シルバーのメガネをかけ、髪を下ろす。潤んだ大きな瞳が、冬の光に映えて怜の心を奪う。怜は紺色のコートを脱ぎ、カジュアルなシャツとジーンズで現れ、穏やかな笑顔が優しさを際立たせる。


「怜…手紙、読んだよ。ありがとう…」彩花は頬を染め、照れながら微笑む。怜の気持ち…こんなに熱くて… 怜は少しぎこちなく笑い、「彩花、読んでくれて…なんか、めっちゃ恥ずかしいけど、ほんと、そう思ってる。彩花のこと、ずっと大切にしたい…」


 二人は新曲「Twilightトワイライト Serenadeセレナーデ」のアレンジに没頭する。彩花が「このメロディ、もっと柔らかくしてみたら?」と提案すると、怜は微笑み、「いいね、彩花の音、ほんと心に響く…」と弦を爪弾く。キーボードとギターの音が重なり、冬の星空を思わせる美しい旋律が広がる。二人の心がハーモニーを奏でるようだった。


・雪桜の素顔:愛の告白


 練習の後、二人はソファに寄り添う。彩花は震える指でメガネをそっと外し、髪を下ろした素顔で怜を見つめる。冬の光が彼女の瞳に溶け、雪の結晶のように揺れる。まるで冬の星空に桜が咲いたような美しさに、怜の心臓が強く打ち、その無垢な輝きに息を呑む。


 彩花の心がざわめく。これが本当の私…影も、迷いも、全部さらけ出して、怜に愛して欲しい… 彼女は静かに、しかし強く呟く。


「怜…この素顔、本当の私を見て欲しい。」


 怜は彩花の瞳に吸い込まれ、彼女の手を握り締める。彩花は怜の胸に顔を寄せ、心が温かく満たされる。怜…私の全部を受け止めてくれる… 怜は彩花の額に優しくキスをし、そっと抱きしめる。「彩花…俺、彩花のこと、ずっと愛してる。」彩花…俺の光… 彩花の素顔が雪の光に照らされ、冬の桜のように輝く。彼女は怜の頬にそっと手を添え、微笑む。「怜…私、こんな幸せ、初めて…。大好き…」雪の夜の静寂が、二人の絆を優しく包む。


 怜は彩花の髪を撫で、頬に軽くキスを返す。「彩花、俺も…君とこうやって、ほんと幸せ。ずっとそばにいるよ。」冬のスタジオは、二人の愛で温かく響き合い、雪の光がその瞬間を永遠に刻む。


・静かに燃える情熱:新たな絆へ


 怜の手紙が、彩花の心に愛の確信を刻んだ。凛への想いは音楽で繋がる友情として、優奈への想いは応援し合う絆として整理され、彩花は自分の心を受け入れる。


 だが、この雪の夜は、彩花の内に静かな革命を呼び起こす。


これまで、私は自分の一番のアンチだった… 凛の炎に、怜の愛に、優奈の笑顔に気圧されて、いつも自分を影に閉じ込めてきた… 迷いと涙が、ずっと心を縛っていた。でも、もう違う。 凛の温もりが、怜の言葉が、優奈の光が教えてくれた――


私こそが、自分自身の一番のファンにならなくてはいけないと。 私が自分を信じなければ、どんな音も、どんな愛も、輝けない…


 彩花は雪の降る窓を見上げ、深呼吸する。この素顔で、この心で、私は自分を信じる。 彼女の心に、力強い鼓動が響く。


「私は必ず、光輝くキーボーディストになる! 私の音で、みんなの心に光を届けたい!」


  雪が舞う中、彼女の声は静かだが揺るぎない。私の影は、もう怖くない。私の音は、私だけの光だから…


 雪の夜、怜との愛、凛との友情、優奈との絆は、彩花の心に新たなメロディを刻む。桜の蕾が春を待つように、「BlossomEcho」のストリートライブへと続く未来が、静かに輝き始める。


・次回予告:第20話「第1部 最終章前編:青春の光」(10月17日【金】20:00公開)


 霧咲シティプラザの煌びやかな照明と桜色の音色! 密かに用意されたサプライズが、怜の心を大いに揺さぶる! 運命的なストリートライブで、彩花の音はどんな光を放つのか? 次回、「第1部 最終章前編:青春の光」、二人のハーモニーが新たなドラマを切り開く!

・コメントのお願い


 彩花の嫉妬と凛の温かい抱擁、怜の手紙、彩花の心に芽生えた静かな革命、どの瞬間があなたの心を震わせましたか? ストリートライブでのサプライズ、彩花の決意、どんなドラマを期待しますか? ぜひコメントで教えてください!


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― 新着の感想 ―
あまりの甘さに口から砂糖を吐きましたw でも凛と彩花がそれぞれの立ち位置と言うか存在の重みを認識したのはよかった。 光があるから影がある、影があるから光はより映える。 太陽であろうと月であろうと、単…
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