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彩光の詩 ~Eternal Echoes~  作者: 絹咲 メガネ
彩光の詩 1st STAGE ~Eternal Echoes~
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1st STAGE 第14話【赤い翼のサプライズ】

 秋の音楽室で、二人の音が静かに響き合う。

 

 怜からのサプライズが、彩花の翼になる。


 新曲「Autumn Whisper」に込めた想い、そしてコメント欄が懐かしい記憶を呼び起こす。


 恋と友情が交錯する、切なく温かな一章。

・音楽室の聖域:響き合う絆・


 10月中旬、霧咲きりさき高校の音楽室は夕暮れの茜色に染まる。


 怜と彩花の聖域だ。


 秋風が紅葉の桜並木をそよぐ中、怜のギターが繊細なアルペジオを爪弾き、彩花のキーボードが透明で温かなメロディを紡ぐ。


 怜は彩花の制服姿と、メガネが夕陽に知的に光る姿に心がそっと揺れる。


 彩花の音は秋の情景を呼び、優しく心に響く……


こんな音と一緒に音楽できるなんて……


 彩花は鍵盤を見つめ、怜の緩めたネクタイとブレザーのカジュアルなスタイルに胸が温かく高鳴る。


 怜のギターに心がそっと揺れる……


私、こんな音、怜と作れるなんて…… 幼い頃、母さんが弾く古いピアノの童謡に合わせて絵本をめくった。


あの音、物語のページみたいにキラキラしてた……ピアノ教室の堅いレッスンは苦手だったけど、母さんが『彩花の音は物語みたいね』って笑ってくれた。


その日から、音で心を解放するのが好きになった……


怜のギターも、なんだかそんな物語を紡いでるみたい……


 告白の温もりと音楽室での時間が、彼女の心を希望で満たす。



・赤い翼のサプライズ・


 ある日、怜は音楽室の隅に赤いボディのシンセサイザー「Northノース Elementエレメント3」を持ち込む。


 10年落ちの中古品だが、インストゥルメンタルに最適な深みのある音色を持つプロ用機材だ。


 怜は新しいギターの購入を諦め、CDショップのアルバイトで貯めたお金で、彩花の誕生日を祝うためにこれを選んだ。


彩花の才能を、もっと遠くへ飛ばしたい…… このシンセ、彼女の翼になる……


「彩花、これ見て……!」


 前髪をかき上げ、照れながら笑う。


「彩花の音、もっと遠くに届けたくて…… これ、少し早いけど、誕生日プレゼント。North Element3、プロ用のシンセサイザーだよ。試してみない?」


 彩花は目を丸くし、赤い筐体に触れる。


 鮮やかな赤が夕陽に映え、心を掴む。


怜が私の誕生日を……? この赤……私を飛ばしてくれる翼みたい……!


 メガネを直し、興奮が胸を高まらせる。


「怜……これ、ほんとに……? 誕生日プレゼント……? すごい……!」


 声が弾み、目を輝かせる。


 シンセをアンプにつなぎながら、怜は優しく微笑む。


「彩花なら絶対すごい音になるよ。プリセットから試してみたら? 彩花の感覚なら、すぐにマスターできるって!」


 彩花は深呼吸し、Element3の前に座る。


無数のスライダーやコントロールノブが、まるで宇宙船の操縦席みたい……


 指先が震える。



――これがプロの世界。怜が、私のために……



 彩花はそっと鍵盤に触れた。


 最初に響いたのは、温かみのあるエレクトリックピアノの音。息を吹きかけたように柔らかく、指のタッチに敏感に応える。


 澄みわたったパッド音が広がり、ブラスは、奏者の息遣いまで感じられるリアルな響きで、胸の奥に直接染み込んでくる。


ロータリースピーカー……?


 オルガンの音を試しながら、彩花は直感でスライダーを操作した。


 低音の倍音が厚みを増し、心をゆさぶるうねりが加わる。


 フットスイッチを踏むと、揺らぎの速さが変わり、秋風が渦を巻くように音がうねる。


KASHIMAカシマ TONEトーンの平板なオルガンとは違う――この音は、息をしている。


 彩花は目を閉じた。


 口元に、天使のような微笑みが自然に浮かぶ。


 パッド音をレイヤーで重ね、コーラスを深くかける。


 彩花は感覚だけで、新しい音の世界を切り開いていく。


 怜は息を呑んで見つめていた。


何も教えていないのに――彩花は、まるでこのシンセを何年も使い続けてきたように、自由に、鮮やかに、音を紡いでいる。


天才だ……、こんな天才、本当にいるんだ……


 彩花は微笑みを浮かべたまま、ゆっくり目を開けた。


 怜の視線を感じ、頬をほのかに染める。


「このシンセ……怜のギターと一緒に演奏したら…… 私たちの音、もっと遠くまで届くよね?」


 彼女の指が再び動き、紅葉の森を思わせる即興のハーモニーが音楽室を満たす。


 夕陽が二人の影を長く伸ばし、新しい音が、静かに、確かに、未来を予感させた。



Autumnオータム Whisperウィスパー:新たな輝き・


 二人は「North Element3」を使い、初の楽曲「Autumnオータム Whisperウィスパー」を作曲。


 彩花の提案した紅葉のイメージを基に、怜のギターが秋風のように流れ、彩花のキーボードが葉の揺れる音を奏でるインストゥルメンタルが誕生した。


 音楽室で何度も試奏を重ね、音を磨く。


 録音を終え「Crystalクリスタル Veilヴェール」として動画サイトにアップロードする夜、音楽室で画面を見つめ、緊張と期待で手を握り合う。


「これ……みんなに届くかな……?」


 彩花の声が小さく震える。


「絶対届くよ。彩花の紅葉の音、俺のギターと一緒に……最高だもん」


 怜の笑顔が、彼女の不安を包む。


「Autumn Whisper」は爆発的な注目こそ集めなかったが、歌のない透明なサウンドがコアな音楽ファンの心を掴む。


 コメント欄には「心に響く透明な音」「ギターとキーボードの絡みが絶妙」「秋の夜にぴったりの曲」と温かい声が集まる。


 ある夜、彩花はスマホでコメントをチェックし、目を輝かせる。


「怜! コメント増えてる……!」


 一つのコメントに目が止まる。


「このキーボードの音、どこか懐かしい…… 中学の図書室で、夕陽の中で笑った誰かを思い出す。もう一度会えたら……ユウナ」


ユウナ……優奈……?


 懐かしい名前が胸を締め付ける。


 中学時代の親友、明るい笑顔で図書室を照らした優奈の記憶が、霧のように蘇る。


 転校で突然いなくなった彼女…… あの笑顔、リボンの揺れる制服、秘密を共有したメモの感触……


この「ユウナ」は、優奈なの……? それとも、ただの偶然……?


 彩花の指がスマホを握りしめ、心がざわめく。


 あの夕陽の図書室で交わした約束…… 彼女の声が、遠くで響くようだ。


 コメントの言葉が、彩花の音に隠された過去をそっと呼び覚ます。


「怜……このコメント、なんか……懐かしい感じがする……」


 彩花はメガネを直し、声を震わせる。


 怜は彼女の手を握り、「彩花の音、誰かの心に届いてるんだ。すごいよ……」と励ます。



・ライブハウスの孤独:凛の喪失感・


 別の日の夜、商店街の地下にある小さなライブハウス「Roseローズ Neonネオン」は、激しいバンドの演奏と観客の熱気でざわめく。


 ドラムの重低音が胸を叩き、ギターのリフが空気を切り裂く。


 凛は一人、客席の隅に座り、膝に肘をついて物思いにふける。


彩花……「Crystal Veil」の動画、めっちゃよかった……


 だが、BlossomEchoブロッサムエコーは彩花の不在で活動が縮小し、凛はソロで曲作りを進めるも、思うように進まない。


 彩花のキーボードの才能がいかに大きかったか…… 彼女の優しいメロディが私の歌をどう引き立てていたか……


 フェスティバルのピンクの輝き、教室での知的な制服姿が、凛の心を静かにざわめかせる。


彩花の笑顔……いつも私の歌を支えてくれてた……

会えないだけで、こんなに寂しいなんて……


 ふと壁に貼られたポスターに目を留める。


Neonネオン Sparksスパークス Nightナイト 来月開催! 新進気鋭のアマチュアバンド大募集!』と赤いネオン文字が躍り、添えられたキーボードのイラストが彩花を思い出させる。


彩花……また一緒に音を響かせたい……


 凛の瞳は、ライブの照明に揺れながら、彩花への深い友情と喪失感で滲む。


 同じライブハウスを訪れていた颯は、自身の曲の参考にするため、ステージの演奏に耳を傾ける。


このビート、タイトだ…… ドラムのフィル、俺の曲に活かせる……


 ふと客席を見渡すと、隅でステージには目もくれず、複雑な表情でポスターを眺める凛の姿が目に入る。


凛……いつもあんな明るいのに、珍しく元気ないな……


 気遣いがよぎるが、声をかけず、クールに見守る。


俺は俺の音楽を突き詰める。それが仲間への応援だ



・凛の願い:揺れる心・


 翌日の昼休み、教室は生徒たちの笑い声で賑わう。


 彩花は窓際で「Crystal Veil」の新曲のアイデアをノートに書き留める。


怜との音楽…… ほんと幸せ……


 だが、ユウナと書かれたコメントと凛への淡い憧れが心をざわめかせる。


そういえば、最近の凛、あまり話しかけてこなくなった。元気ないのかな……?


 優奈を失ったあの寂しさが蘇る……


凛と離れたくない……


 彩花は勇気を振り絞り、凛に声をかける。


「凛、最近元気ない? また一緒に歌いたいな……」


 凛の目がパッと輝く。


「彩花、ほんと? めっちゃ嬉しい……!」


 深呼吸し、真剣な瞳で続ける。


「彩花、怜との『Crystal Veil』、見たよ。めっちゃよかった……! あの透明な音、彩花と怜の優しさが伝わってくる……」


 声に熱がこもり、だがすぐにトーンが落ちる。


「最近、ソロ活動やってたけど…… やっぱり彩花のキーボードがないと…… 私の音楽、物足りないんだ……。『BlossomEcho』、また一緒にやりたい……。

来月、『Rose Neon』の『Neon Sparks Night』ってイベントでさ、アマチュアバンドのライブあるんだ。」


 凛は少し目を細めて、懐かしそうに笑う。


「実は……店長が、うちの母さんと昔一緒にバンドやってた人でね。彩花と録ったデモ聴いてもらったら、『お前の母ちゃんに似てるな』って笑って、特別枠で出させてくれることになった! 友達もチケット買ってくれるって言ってるし、気軽に出れるよ! 彩花、一緒にどう?」


 彩花の心が弾む。


凛……私とまた……?


凛の母さんも音楽やってたんだ……

だから凛は、こんなに音楽に真っ直ぐなんだね……


 凛の真剣な眼差しに、かつての淡い憧れが蘇る。


私、凛のこと…… まだ意識してる…… でも、怜との時間も…… どっちも失いたくない……



・葛藤と決断:新たな旋律・


 放課後、彩花は音楽室の窓辺で一人、夕陽を見つめる。


 凛の情熱と怜への愛が交錯する。


ライブハウスのステージ、緊張する…… 知らない人の前で、ちゃんと響くかな……

でも、凛と輝きたい! 優奈を失ったあの寂しさ、繰り返したくない……


 教室の窓際、数人の生徒が残る中で、彩花は怜に決断を伝える。


「怜…… 凛と話して…… 来月まで『BlossomEcho』の活動に専念しようと思うの。凛とライブハウスで演奏したい……。だから……『Crystal Veil』、ちょっとだけ中断して……いい……?」


 怜は一瞬驚き、胸が締め付けられる。


彩花…… 凛と……?


 恋人としての絆と配信の成功に喜びを感じていただけに、寂しさがこみ上げる。


 だが、彩花の真剣な瞳を見て、彼女の気持ちを尊重したいと思う。


「うん……分かった。凛との友情……大事だもんね。俺、応援するよ……」


 笑顔を見せるが、寂しげな瞳で彩花を見つめる。


 彩花は怜の優しさに胸が温まり、安堵する。


「怜……ありがとう。終わったら、すぐ『Crystal Veil』、新しい曲で再開しようね…… 紅葉の続き、作りたいな!」


 二人の視線が絡み合い、夕陽が音楽室を柔らかく照らす。

・次回予告:第15話「魅惑のライバー」(9月30日【火】20:00公開)


 彩花が凛の願いを受け入れ、BlossomEchoのライブへ突き進む! 「Crystal Veil」は一時休止も、怜と彩花の絆は揺るがない…はずだった。

 ツインボーカルで開花する彩花と凛の音に、怜の心が揺れる。次回、「魅惑のライバー」、青春の旋律が新たなドラマを切り開く!


・読者の皆さまへ


 彩花と怜の「Autumn Whisper」、ユウナと名乗るコメント、凛の願い、どの瞬間があなたの心を震わせましたか? BlossomEchoのライブ、彩花たちのどんな輝きを期待しますか? ぜひその想いを聞かせてください。どんな小さな言葉でも、すごく嬉しいです。

 二人の愛と音のハーモニーを、次回も、一緒に見守ってください。

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― 新着の感想 ―
恋か友情か、はたまた創作の幅の揺れか? しかしホントに秋らしい彩花の曲を聞いてみたいです!
凛もようやく月の大切さに気が付いたんですね。目の前に当たり前にあるものほど失うまではその大切さに気が付かないものです。 物語も終盤に差し掛かり、まだ波乱のにおいがする終わり方ですが大団円で終わるにせ…
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