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彩光の詩 第12話【予期せぬメロディ】

・校庭のざわめき:恋の始まりと準備の慌ただしさ


 9月の最終日、霧咲高校の校庭に設けられた小さなステージは、紅葉の桜並木と生徒たちのざわめきに包まれる。秋の夕陽がオレンジ色の光を投げ、音楽フェスティバル当日の熱気が漂う。昨日、怜が彩花に「好きだ」と告白し、彩花もその気持ちを受け入れたが、恋愛に奥手な二人の間には甘酸っぱいぎこちなさが漂う。視線が合うたび、互いに頬を染めて目を逸らし、ライブ準備の慌ただしさの中で言葉を交わす余裕がない。


 ステージ脇で、怜はギターのチューニングを入念に確認する。シャツの袖をまくり、緩めたネクタイが繊細な魅力を引き立てる。彩花さんと話したいのに、準備でタイミングが… 告白後の新たな関係に胸が弾みつつ、彼女との距離を縮められないもどかしさが心を締め付ける。


 隣で、(はやて)はギターのエフェクターを淡々と調整。ライブは面倒だが、観客の歓声は嫌いじゃない… 怜の緊張には気づかず、音作りに集中する。彩花はキーボードのセッティングを進め、メガネ越しの瞳は、緊張と期待で揺れる。昨日、怜に抱きしめられた温もりが蘇り、心が弾む。怜くんと話したい…でも、準備でバタバタしてて…どうやって…? 恋愛経験のない彼女にとって、告白後のぎこちなさが新たな試練だ。


 凛がギターとマイクの位置を確認しながら軽快に動き回る。白いシャツに青いネクタイ、紺色のプリーツスカートが、動きに合わせて軽やかに揺れる。彼女の明るい笑顔がステージ脇に活気を添え、彩花に声をかける。「彩花、準備OK? 今日、めっちゃ盛り上がるよ!」 彩花の緊張を察し、弾ける笑顔で続ける。「彩花の真面目なとこ、めっちゃ可愛いよ! 絶対最高のステージになるって!」 凛の無垢な情熱が彩花の心を和らげるが、彼女の輝く存在感にかすかな気後れを感じる。私、こんな風にはなれない…でも、怜くんは私の音を… 彩花は小さく頷き、「…うん、頑張るね」と呟く。


・ステージの熱:響き合う音


 ライブが始まり、NightReaverナイトリーヴァーの怜と颯が最初にステージに上がる。制服姿の二人がスポットライトに照らされ、怜の指が弦を滑り、鋭いアルペジオが校庭を切り裂く。颯の重低音リフが地面を震わせ、観客の歓声が波のように押し寄せる。 学園祭で披露した「Thunderサンダー Pulseパルス」に続き、怜が作曲した「Digディグ Stormストーム」を演奏。怜が用意したバックトラックによるシンセベースが重厚に響き、颯の力強いリフが絡む。「この『Dig Storm』、颯と出会った頃の俺の全てだ…夜な夜なPCで試行錯誤して作った初めての曲…」 彩花と話せなかったもどかしさを音に込め、彼女への想いを静かに表現する。この演奏、彩花さんに届いてほしい…


 彩花はステージ脇から怜の演奏を見つめ、胸が高まる。怜くんのギター…私のために弾いてくれてる気がする… 颯は淡々と演奏を始めたが、観客の熱狂に火がつき、ソロで派手なタッピングを繰り出し、会場を沸かせる。ライブ、悪くないな…怜もいい感じだ NightReaverの演奏が校庭を揺らし、拍手喝采が空に響く。観客の期待が膨らみ、BlossomEchoブロッサムエコーの出番を待つ。


 演奏後、颯は凛の依頼でマイクに向かい、気恥ずかしそうにアナウンス。「…えっと、次は…BlossomEchoです。よろしく…」 怜と颯はステージを降り、彩花と凛の出番を待つ。


 更衣室で、彩花と凛はライブ用の衣装に着替える。凛はレッドのサテンシャツと黒いプリーツスカートをまとい、動きに合わせてサテンが炎のように揺れる。彩花は淡いピンクのサテンシャツとプリーツスカートを身に着け、光を反射する滑らかな感触が静かな勇気をくれる。このサテン…私に力をくれる…怜くんに、届いてほしい… 凛の輝く衣装に気後れしながらも、怜への想いが彼女を支える。凛は彩花を見て、弾ける笑顔で言う。「彩花、そのピンク、めっちゃ似合ってる! 絶対可愛いよ! ステージ、盛り上げようね!」 彩花は小さく微笑み、「…うん、ありがとう、凛…」


・情熱のハーモニー:天使の微笑み


 ステージに上がる瞬間、凛が彩花の手を握り、「よし、行くよ!」と笑顔で言う。彩花は頷き、怜の視線をどこかで感じ、胸が高まる。BlossomEchoの新曲「Stardustスターダスト Breezeブリーズ」が初披露される。彩花が肩を揺らし、ロングヘアが鍵盤に合わせて揺れる。ピンクのサテンシャツが光り、彩花に勇気を注ぐ。 彼女の指が鍵盤を舞い、星屑のような輝きを紡ぐ。シンプルなコードからテンションコードを織り交ぜ、秋の夕陽のような切なさが凛の情熱的な歌声と響き合う。 凛がマイクを握り、ステージを駆け、彩花のハーモニーに乗って歌声を響かせる。レッドのサテンが翻り、笑顔が観客を煽る。


 彩花の緊張が溶け、怜への想いを鍵盤に刻む。私の音、怜くんに…! 「Stardust Breeze」は、怜のアルペジオに呼応した彩花の感性が結晶した曲だ。彼女のフットスイッチがリズムを刻み、エレピの温かみからピアノのアタック感へ瞬時に切り替わり、星空のような輝きを放つ。


 演奏に没入する彩花の唇に、静かな天使のような微笑みが無意識に浮かぶ。学園祭の初々しさから一変、余裕のある表情で複雑な和音を軽やかに響かせる。


 怜はステージ脇から目を輝かせる。あのセッションから生まれたフレーズが、こんなハーモニーに…! それに、あの微笑み…普段の内気な彩花さんとは別人みたいだ。まるで天使が音を紡いでる… 声量の弱いボーカルなら埋もれる複雑な和音なのに、彩花の音は凛を輝かせる。


 演奏が頂点に達し、彩花が華やかなアルペジオを刻み、音色が虹のように広がる。凛がサビを力強く歌い上げ、観客が息を呑み、拍手が沸き起こる。演奏が終わると、歓声が校庭を満たす。彩花と凛は笑顔で手を振り、ステージを降りる。彩花の心は、演奏の成功と怜への想いで高揚する。怜くん、見ててくれたよね…


・フィナーレのサプライズ:触れ合う心


 全てのバンドの演奏とパフォーマンスが終了し、フェスティバルのフィナーレとして、出演者全員で流行りのヒットソングを歌うセッションが始まる。だが、オリジナル曲にこだわる怜、彩花、颯、凛はヒットソングに疎く、ぎこちない笑顔でマイクを握る。狭いステージで四人が肩を寄せ合い、彩花のピンクのサテンが怜の腕に触れ、光が揺れる。滑らかな感触が怜の心を刺激し、倉庫での抱き合いの記憶が蘇る。彩花、こんな近くで… 彩花も怜のまくった袖と緩めたネクタイに心を奪われ、ドキドキが止まらない。


 颯は無表情で「ラララ」と口ずさみ、凛は歌詞を間違えつつ、笑ってごまかす。「やっちゃった! まあ、盛り上がればいいよね!」 四人のぎこちなさが観客の笑いを誘い、ステージは和やかな熱気に包まれる。フィナーレが終わり、拍手喝采の中、四人は笑顔で手を振ってステージを降りる。


・言葉を超えた絆:新たな一歩


 観客が帰り始め、校庭が静けさを取り戻す中、颯と凛は主催者に呼ばれてテントへ。怜と彩花はステージ近くで二人きりになる。夕暮れの校庭、彩花のピンクのサテンシャツが最後の陽光にキラキラと輝く。怜は彼女の姿に目を奪われ、告白時の勢いが戻る。「彩花さん…その…今日のサテンシャツ、めっちゃ似合ってる…。『Stardust Breeze』、すごかった…。俺、彩花さんの音、ほんと好きなんだ…」


 彩花は怜の言葉に息を呑み、喜びが胸を満たす。怜くん、私のサテン、好きって…? メガネを直し、はにかむ。「…怜くん、ありがとう…。私も…サテンシャツ、好き…。ね、怜くんも…着てみたらどうかな? 絶対、似合うよ…」


 怜の瞳が輝く。俺がサテンシャツ…? 彩花さんと同じ衣装で… 「…うん、試してみたいかも…。彩花さんと一緒にね…」 彩花は頷き、「うん…一緒に、ね…」と照れる。怜の言葉が彼女の心を温める。


 颯が凛と笑いながらテントから戻り、彼女の冗談に応えつつ呟く。「運営、グダグダすぎだろ。スケジュールめっちゃズレてたぞ。」 凛が笑う。「でも、観客の熱、最高だったよね!」 凛が彩花に目を向ける。「彩花、怜くんと楽しそう! ライブ、めっちゃよかったよね! 彩花って演奏に集中すると、菩薩みたいに微笑むんだよね、今日も菩薩スマイル全開だったし、もっと自信持っていいよ!」 彩花の頬が赤く染まる。「え、菩薩って…! 凛、からかわないで…」そんな風に弾けてるなんて、私、気づかなかった…


  怜は小さく笑う。菩薩の微笑み…? なんか、わかる気がする…彩花さんの優しさと音楽への愛情が見えた。あの笑顔、ほんと特別だった…


 彩花は、凛の「もっと自信持っていいよ!」に、胸が温まる。中学の冬、優奈が転校前に残した「もっと自信持ってね!」のメモがふと蘇る。優奈…今、何してるかな…颯は口元に笑みを浮かべ、内心で応援する。怜と彩花、お似合いだな…いい感じじゃん…


 夕暮れの校庭で、彩花と怜は互いの想いを共有し、関係が深まる予感を感じる。秋の音楽フェスティバルは、二人の新たな絆を刻み、未来のメロディを予感させた。


・次回予告:第13話 【怜の決断】(9月23日【火】20:00公開)


 衣替えの季節を迎え、怜と彩花の恋は順調に進む。だが、凛と怜の親しげなやり取りを目撃した彩花の心に、不協和音が鳴り響く。暗闇に沈む彩花を救うべく、怜はある提案を持ちかける。次回、「怜の決断」、青春の音が新たなドラマを紡ぐ!

・コメントのお願い


 初公開された新曲、フィナーレのハプニング、彩花の菩薩のような微笑み、どの瞬間があなたの心を震わせましたか? 彩花の次の試練、どんな展開を期待しますか? ぜひコメントで教えてください!

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音楽の知識に疎く、完全に理解できない部分があるのがもどかしいくらい、音楽描写に力を入れているのが分かります。経験者ですよね? わたしが行っていた高校の軽音部もコピー拒否のオリジナル絶対主義でしたw …
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