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彩光の詩 ~Eternal Echoes~  作者: 絹咲 メガネ
彩光の詩 1st STAGE ~Eternal Echoes~
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1st STAGE 第1話【母の影と新たな光】

 音楽に導かれた17歳の少女――かなでは、葛藤を抱えながら、かつて音楽に生きた若者たちの恋と友情の調べに耳を澄ます。


 情熱の歌声、繊細なギター、そして、天才キーボーディストと呼ばれた一人の少女。


 愛と友情が織りなす青春のドラマが、今、ここに幕を開ける!

・プロローグ:霧咲きりさきの秋、響かない音・


 10月の霧咲の街は、柔らかな陽光が桜並木の紅葉を揺らし、遠くの山々が茜色に染まる。


 17歳の少女、かなでは、スケッチブックを抱えて廃校となった霧咲高校へ向かっていた。


 ショートカットの髪を軽くウェーブさせ、慣れないコンタクトレンズに目を細めながら。


 大きな瞳には、母・彩花あやかの情熱と父・れいの優しさが宿る。


 けれど、その奥には葛藤が揺らめいていた。


 母・彩花は天才キーボーディストとして名を馳せ、数々のメジャーアーティストと共演している。


 赤いフレームのメガネがトレードマークの彩花は、ステージに立つたび、その知的な輝きが観客を魅了する。


 不定期のソロライブには熱心なファンが詰めかけ、「彩花の魔法」と称される演奏に心を掴まれる。


 ライブ後、笑顔でファンにサインする母の姿は、奏にとって誇りだった。


 同時に―― 遠い存在でもあった。


母さんの輝き……私には眩しすぎる。


 スポットライトに照らされ、歓声に包まれる母を見るたび、心が締め付けられる。


私の音は、誰も聴いてくれない……


 学校の廊下では、すれ違う生徒の囁きが耳に刺さる。


「奏ちゃん、さすが彩花さんの娘!」

「昨夜のライブ、最高だったよね」


 軽音部でキーボードを弾く奏のSNSには、冷たいコメントが並ぶ。


『彩花の劣化コピー』


 鍵盤を叩くたび、母の影が心を覆う。嫉妬と無力感が、胸の奥で軋んだ。


 ある夜、夕食の席で感情が爆発した。


「私、音楽、辞める!」


 奏は赤いフレームのメガネを外し、テーブルに叩きつけた。


 硬い音が響き、レンズが光を反射する。


――母とお揃いの、このメガネ……

いつも母さんの影を背負わされてるみたいで、嫌だった……


「いつも母さんの影ばかり! 私の音、誰も認めてくれない…… 母さんみたいになれない私に、音楽なんて何の意味があるの?」


 涙が溢れ、奏は部屋に駆け込んだ。


 ベッドに倒れ込み、枕を濡らす。


彩花の魔法……私には呪いでしかない。


 心の叫びは、静寂に溶けていった。


 リビングに残された彩花は、娘の言葉に胸をえぐられた。


 静かに目を潤ませ、奏の部屋の方を優しく見つめる。


 高校時代の自分を思い出す―― 内気で、ステージに立つのが怖かった日々。


 親友の凛、恋人の怜、旧友の優奈に支えられて、ようやく音を信じられたあの頃。


 ふと、5歳の奏の笑顔が浮かんだ。小さな手をキーボードに伸ばし、目を輝かせて言った。


「ママ、お姫様みたい! 奏も、ママみたいな音作りたい!」


 夫の怜が、彩花の手を優しく握る。


「奏は強い。お前が自分を信じたように、奏も自分の音を見つけるよ。」


 彩花は震える声で呟いた。


「奏……あなたの心、いつか響く……」



・新たな一歩 あおいとの出会い・


 翌日、奏はメガネをコンタクトに変え、髪を軽くウェーブさせた。


 もう、彩花の娘とは呼ばせない。


 軽音部を辞め、美術部へ入部した。


 キャンバスに向かう時間は、音楽の重圧から解放してくれる。


ここなら、ただの奏でいられる。


 絵筆が動くたび、心が軽くなっていく。


 母の影に縛られず、私だけの色を描ける――初めての自由に、胸が震えた。


 美術部で出会ったのは、同級生のあおいだった。


 青い髪留めとスケッチブックがトレードマークの、太陽のように明るい少女。


「奏、絵めっちゃ繊細! こんな心揺さぶる絵、初めて見たよ!」


 葵の純粋な言葉に、奏の心に光が差し込んだ。


――私のこと、ちゃんと見てくれる。誰かと比べない、ただの奏として。


 放課後、二人は教室に残って絵を描きながら語り合った。


 好きな漫画、夢、くだらない日常の話。


「奏の絵、なんか……音が聞こえるみたい!」


 葵の笑顔に、奏は久しぶりに心から笑った。


葵と一緒なら、ありのままでいられる。


 母の影も、SNSの言葉も、少し遠ざかった。初めて、自分の居場所ができた気がした。



・試練の第一歩 霧咲高校へ・


 ある日、美術部の写生旅行が決まった。行き先は、廃校となった霧咲高校。


「廃校ってロマンチック! どんな絵描こうかな?」


 葵が興奮する横で、奏は胸に重さを感じた。


霧咲高校……母さんの青春の場所。父さんとの出会いの場所。


彩花の伝説が生まれた場所だ。


行きたくない。母の輝く過去に、また飲み込まれそうで。


 それでも、葵の笑顔に押されて、奏は校舎へ足を踏み入れた。


 秋の風が髪を揺らし、夕陽が古い窓ガラスを茜色に染める。


 廃校の静寂の中、奏の心に小さな音が響いた。


母さんはここで、どんな音を奏でたんだろう……


 母の過去と向き合う恐怖が、かすかな好奇心に変わっていく。


「彩花の魔法」が育まれた場所で。


 奏の新たな旋律が、静かに芽生えようとしていた。

・次回予告:第2話【音楽室の邂逅】(8月15日【金】20:00公開予定)


 霧咲高校の廃校、両親の青春が響く場所。奏が足を踏み入れた音楽室で、夕陽に輝く鍵盤が彼女を呼ぶ。

 そこで見たものはなにか? 奏の葛藤が音に変わる瞬間、どんな旋律が生まれるのか?

 次回【音楽室の邂逅】涙と希望の共鳴が、奏の未来を切り開く!


・読者の皆さまへ


奏の葛藤や葵との出会い、霧咲高校の静かな音楽室……

この第1話で、あなたの心に残った瞬間はありましたか? どんな小さな感想でも嬉しいです。

奏の新たな旋律を一緒に想像しながら、次回をお待ちしています。

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― 新着の感想 ―
奏さんの葛藤ですかね 私の周りには眩しくなるほどの偉大な人は居ないので 想像でしか考えることしかできませんが どうしても差が埋まらない どうしても届かない存在 それが母であること 比較されるのは…
拝読しました!偉大な母・彩花の影に苦しむ奏の葛藤が痛いほど伝わってきました。 だからこそ、葵との出会いと絵から音が聞こえるという言葉が、奏にとってどれほどの救いになったか……その光の温かさに胸が熱くな…
音がない小説で、音楽を表現するのって凄く難しい題材だと思うので、それを書いてるだけで凄いなと思いました。これからも小説、楽しみにしております!
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