表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公、最悪。  作者: とは
2/3

Episode1 ディアナ・アステリア


「ディアナー! そろそろ起きなさーい!」


 母の怒号が聞こえる。というか、「でぃあな」って、誰だ?


「…………………………」


「いい加減起きな! 今何時だと思ってんの!?」


「……………なんじ?」


「朝の10時! いつもは7時には起きているでしょう! なんでこんな日に限って寝坊するの!」


「こんなひって…なんのひ?」


 まるでさっぱりわからない。こんな日って、いったい何の日だ。


 「もう! 今日は『魔力選別の儀(マジック・ジェネラ)』でしょ!」


 まじっく、じぇねら…どこかで聞いたことあんな。

 いや、絶対に聞いたことあるな。


「早く準備なさい、ディアナ!」


「……でぃあなって、わたしのなまえ?」


「名前って…何当たり前のこと再確認してるの?」


「え…まじで?」


 一気に眠気が覚めるとともになんとも現実と言い難い事実が発覚し、一気に気分が落ち込む。

 簡単に言えば、絶対に怒らないと思っていたことが起きてしまったような、そんなとてつもなく気まずい気分。

 布団から這い出て、水瓶を覗く。水鏡となって自分の姿が映るからだ。

 そこには、見たこともないはずの子供の顔が映っていた。


「うわぁ…、最悪だ…。」


「顔がかい? もともと最悪だろう。早く準備しちまいな。」


 そこには、悪役主人公と呼ばれた「ディアナ・アストリア」の顔がはっきりと映っていた。


 悪役令嬢下剋上として有名な「私は世界を取り返す」という原作が小説で、アニメ・ゲーム化までもした超有名な「わたせか」。その物語の悪役令嬢であり主人公でもあるベレニス・クレメンタインは、本来の主人公ディアナ・アストリアによって濡れ衣を着せられ、処刑されてしまう。が、なぜか10歳のある日まで時間が逆行する。ベレニスはその巻き戻った時間を自分が処刑される現実を変え、濡れ衣を着せてきたディアナを断罪するために動くというお話である。

 このお話の悪役であるディアナ・アストリアは、その後見事に(まんまと)ベレニスに断罪され、国外追放されてしまうというなんとも心苦しい結末となる。

 そう、私はこの


(なんでディアナになってるの…!? あぁ、混乱で頭クラクラしてきた…。)


 水鏡に写っていた自身の顔はゲームに出てきたディアナそっくりではないか…!

 私、新見芽郁、白血病にて只今絶賛闘病中だったよな…?。なんで、私こんなところいるんだろう。


(え、第一、私は病院のベットの上だったよね!? そろそろ死ぬなって思ってた頃だったよね!? いやたしかに一回死んだはずだよね!? ……て、ことは…!?)


 ダムが決壊したかのような大きな声で思わずこぼしてしまう。


「転生したってことぉぉぉぉぉぉ―――!?」


「ディー! 静かに!」


「あ、ごめんなさい。」


 衝撃の事実に驚きが隠せない。

 まぁ、受け入れるしか方法はない。


 どうやら私は、お話の中ですごく複雑な立ち位置の存在に転生したようだ。






 ディアナへの転生が判明してから5分。私は今、馬車に乗っている。なぜなら、今日は『魔力選別の儀(マジック・ジェネラ)』の日だからだ。


 私がいつまでたっても着替えないことに痺れを切らした母に少し綺麗な服を着せられ、なけなしのパンとチーズ、少し多めのお小遣いが入った少し大きい鞄をかけられ、ディアナを俵持ちしたかと思ったら、今度は馬車に突っ込まれた。

 馬車の主にお金を渡すと、「じゃ、頑張っといでー」といっておくりだされた。


 なんとも素早い動きだった。思わず感心した。


 『魔力選別の儀(マジック・ジェネラ)』とは名前の通り、自分の魔力の特性を確認する儀式だ。その年齢に達した子どもたち全員が王都の協会でやるという、一大イベントだ。


 この世界には、火、水、風、土、闇、光の6種類の魔力の特性がある。お察しの通り、レア度が高いのが闇と光の魔力である。

 闇の魔力は火、水、風、土の魔力に対しては優位だが、光の魔力に対しては劣位だ。

 反対に光の魔力は闇の魔力に対しては優位だが、火、水、風、土の魔力に対しては劣位だ。

 その他諸々は割愛させていただこう。


 王都までは、日が昇りきった後に着くだろう。だがここで1つ問題がある。


(それまでなにしていればいいんだ…?)


 そう、王都までの道のりは、なんと言っても暇なのだ!


 『魔力選別の儀(マジック・ジェネラ)』をしに行くだけのなんとも面白みのない旅だ。お小遣いはもらったが、今はまだつぎ込む場所もない。


 転生してからの初めての難関は、暇な時間と戦うという、好奇心旺盛な芽郁、いや、ディアナとっては苦行だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ