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「ねぇ!絶対絶対絶対毒舌くんじゃん!なんで無視すんの!?」
「僕にあなたみたいなチャラくて馬鹿そうな知り合いいないんで。人違いですね。さようなら」
「嘘ー!さっきオレの姿見て"げっ"って言ったじゃん!絶対覚えてるじゃん!オレ聞いてたからね!?」
昼休み、廊下。
なんとオレは、もう二度と会えないと思っていた相手に再会した。
そう。あの日。夢の中で出会った彼と。
やっぱりあれは夢であって夢じゃなかったんだ。
しかし相手はなぜかオレの事を知らん振りする。
みっともなく必死に腰にしがみつき体重をかけるが彼は一向にこちらを見ようともしない。歩みを止めようともしない。
ただオレもオレで手を離す気が無いのでそのままズルズルと体が引きずられる。
毒舌くん体幹強いな。
間違えている訳が無い。
姿も声も口調も、夢の中で出会った彼そのものだった。
逃がしてたまるか!
「お願い!1分だけでもいいから話聞いてくれない!?」
「嫌」
「30秒!」
「嫌」
「10秒!」
「嫌」
「5分!」
「増えてるし」
「お願い!このままモヤモヤしたまんまで終わらせたくないんだよ!!」
毒舌くんの歩みがふと止まる。
「なんでオレが夢に閉じ込められたのか理由もわかんないし、毒舌くんが何者なのか、あのバケモンが何なのかわかんない事だらけなんだって!それを聞けるのは毒舌くんだけなんだって!気になって気になって最近授業中の昼寝できてないんだよ!!おーねーがーーいーーー!!!!」
「なぁ、鏑木さっきから何言ってんの?」
後ろから声がする。
あ、そうだ。オレクラスメイトと一緒にいたんだった。
「ち、ちょっと声が大きいって……」
もしかして何か聞かれたらまずい話だったのだろうか。
毒舌くんは辺りをキョロキョロと見渡す。
するとようやくオレと目が合う。
少し顔を顰め考えるような素振りを見せると大袈裟にひとつ、ため息をついた。
「………………はぁ…………すみません、この人少し借ります。」
毒舌くんはオレのクラスメイトにそう伝え丁寧にお辞儀をすると、オレの腕を掴みどこかへと歩き出した。
根負けしたようだ。しつこさには自信がある。
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「…ここまで来れば誰もいないか…。」
毒舌くんはそう一息ついた。
連れてこられたのは生徒棟から離れ渡り廊下を挟んだ所にある職員棟。
技術室や化学室など移動教室の際に訪れる事はよくあるが、わざわざ昼食をここで取る人はそうそういない。
おかげで人の気配も影も全く無く、ここにいるのは毒舌くんとオレの二人だけなようだ。
掴まれていた手を離されると毒舌くんはぐるりと振り返りオレを睨みつけた。
一歩こちらへ踏み出され距離を詰められる。
反射的に後ずさると後ろの壁に踵があたる。
すると耳音でドン、と壁が打ち付けられたような音がした。
その衝撃で思わず目を瞑る。
恐る恐るまぶたを持ち上げ横を見ると、すぐそこには毒舌くんの腕があった。
これ、いわゆる壁ドンだ。オレのが背が高いから圧迫感はないけど。
おふざけ以外で壁ドンされるのは初めてだ…
毒舌くん、もしかして意外とロマンチスト?オレ、今から告白されちゃう!?
しかし目の前の男はロマンの欠片もない恐ろしい形相をしている。流石に違うようだ。
毒舌くんは少し苛立っているような低い声で言った。
「ねえ、なんでわざわざ自分から面倒事に首突っ込もうとする訳?」
「?どういう意味?」
分からないと素直に伝えると毒舌くんは更に眉間に皺を寄せる。
そして続けて喋り出す。
「…僕は確かに、君があの日夢の中で出会った“毒舌くん”で間違いない。」
お、ようやく認めてくれた。
「あの世界は君にとって見たことが無い物や経験した事が無い事象で溢れていて、謎だらけだったからつい君の知的好奇心がくすぐられちゃうのもわかる。
でもね、そんな軽い気持ちで知ろうとしていい世界じゃないんだよ」
メンチを切るみたいにずいっと顔を少し近づけられる。
そしてゆっくりと、オレに尋ねた。
「鏑木京、君はあの夢を少しでも怖いと思わなかったの?」
静かな廊下に毒舌くんの声だけが響く。
「目の前で友人が真っ二つにされた時。」
「知り合いが次々自分に襲いかかった時。化け物に一番恐れていた言葉を囁かれた時。手足を拘束されて動けなくなった時。」
「“怖くなかった“なんて言葉は言わせない。君は確かに怯えた目をしていた。」
「あの時、君が刀を取るのが1分でも遅かったらどうなってたと思う?」
あの時。
写真立てを壊そうとした時の事だろう。
今目の前の少年が指しているあの状況は確かに恐ろしいものだった。
できればもう二度と体験したくない。思い出すだけで身の毛がよだつ。
だって、一つでも選択を間違えていれば
「君も僕も、あの場で死んでた」
つんと冷たい空気が辺りを満たす。
そう。
オレもこの子も死の淵に立たされたのだ。
「どう?怖気付いた?」
顔を覗き込まれると半笑いで問いかけられる。
もしかして今、オレは怯えた顔をしているのだろうか。
脅されている。これ以上余計な事は聞くんじゃないよ、と。
「怖いならこの世界にはもう関わらないこと」
毒舌くんはゆっくりと壁から手を離す。
そしてそっぽを向くとどこかへ立ち去ろうと歩みを始めた。
緊張で力が入っていた肩をホッと撫で下ろした。
コツンと控えめな足音が廊下にたつ。
「僕にもね」
軽く振り返り、オレを睨みつけると最後の釘を刺された。
おかしい。
仲良くなるつもりだったのに、今の数分で余計に関係が悪化したように思える。
「あっ、メロンパン食べる?」
持っていたパンの山から一つ差し出したが毒舌くんは無視してそのまま去って行った。
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昼休みの教室。
昨日はあの阿呆に絡まれて穏やかに昼食をとれなかった。
同じ学校とはいえ中等部と高等部で階が分かれているため、遭遇する機会はそうそうないだろうと油断していた。
そもそも、夢の中で出会った人の姿を鮮明に覚えていられる人は中々いない。
夢は目覚めてから時間が経つにつれ記憶が曖昧になり、いずれ完全に忘れてしまう物だ。
だからもし仮に会ってしまったとしても、向こうは僕に気づかないだろうと。そう噛んでいたというのに。
あいつは本来なら忘れているはずの僕の事を何故か認識し、まるで友達かのように話しかけてきた。
面倒な人は面倒な事を呼び寄せる。
そして面倒な事は面倒な人を呼び寄せる。悪循環。
平穏に日々を送りたいならまずああいう阿呆面とは距離を置いた方が良い。
だからわざと突き放した。
彼とは本当にあれきりにする。
そもそもあの出来事を「ただの悪い夢」で終わらせた方が彼の為でもある。
夢は夢でしかない。
彼の願いも、夢も、あの日で終わってしまったけれどそれは彼の全てでは無い。
彼の人生はこれからも続いていくのだから。
「白渡くん。そこで高等部の先輩が白渡くんの事呼んでるよ。」
「.....................うん、どうも。」
クラスメイトに声をかけられた。
伝えることだけ伝えると気まずげに駆け足でどこかへ去っていく。
僕は普段から周りに冷たい態度をとっているから、それ相応の対応をされるのは当たり前と言えば当たり前だ。
“高等部の先輩“か。
嫌な予感がする。
いや、大穴で「落し物拾ったよ」とかそういう類の呼び出しでは無いだろうか。
もし次顔を上げた時、あの阿呆面が目の前にいたらどうしよう。
あそこまで突き放したんだ。さすがに無いだろう。
有る事無い事色々な可能性を思い浮かべながら教室の扉を開いた。
「アラセくん!一緒にお昼食ーーーーーーーーーべよ!」
こういう時の嫌な勘とは大抵当たる物だ。
目の前には予想通りの人物が…鏑木京がいた。
...あの日、こいつと出会った時点で、面倒事は避けようが無かったのかもしれない。
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結果として、僕は流されるままこいつと一緒に昼食をとる事になった。
屋上へ続く階段に腰をかけ、弁当を包んでいる布の結び目を解く。
突っ込みたいことは山程あるが、まずは…
「何で僕の名前知ってるの」
鏑木京は口にしていたパンを一口飲み込むとからりとした笑顔を浮かべた。
「え?うちの中等部って事は分かってたし聞いて回った」
当たり前じゃない?みたいな顔をしてけらけらと笑う。
ここ、綉花帝学園は中等部から高等部まで全てあわせて在校生が1000人以上はいる。
ひと学年で6クラスは平均してある上、僕は顔が広いわけでも目立つわけでも無い。
普通はスタートラインの時点で諦める。
それに加えて、昨日こいつにとった態度からしてもそこまでして僕に会いたいとは思わないだろう。
なのに一人一人に聞き回ったと?馬鹿なんじゃないのか。
「何その無駄な行動力.........」
「オレの嗅覚を舐めないでよね〜!名前は…白渡 紫羅欄しらと あらせくんでしょ?」
「は?どこまで嗅ぎ回ってんの?これ以上他に何か知ってたら流石に気持ち悪いんだけど」
「いやいや、知ってんのはクラスと名前だけだって」
あはー!と声を上げながら頭をかいている。こいつがここまで面倒な人だとは。
こんな事になるとはちっとも予想がつかなかった。
僕は少し頭を抱えため息をつく。
「…君にとって僕はそこまでいい印象でもなんでもないと思うけど。
君が僕にここまでするのは、何か特別な理由でもある訳?」
鏑木京は少し驚いた顔になった後、自慢げな顔で答える。
「ありますともありますとも」
人差し指を立て、チッチッチ、と左右に揺らす。
「だって、あの日アラセくんがいなかったらオレ死んでたって事でしょ?」
「まあ、そういう事にはなる。」
「オレらの関係って、アラセくんが命の恩人で、オレが助けられた人ってことじゃん。」
伏せていた顔をわずかに上げると目が合う。
するとこいつは屈託のない笑みを浮かべ両手を広げた。
「ここでこの縁終わらせるのって、なんかすげーもったいなくない?せっかくすぐ会える距離にいるんだしさ!」
「本気で嫌って言うんならやめる。でもその前に恩返しくらいはさせて!軽くでもいいから!」
鏑木京は両手をパンっと重ねると一つ念じるように礼をする。
なんでそこまで僕に対して必死なんだ。
「ありがとー」の一言で済ませて終わりにすればいいだろう。なんで仲良くなりたがる。なんで自ら手間を増やす。
この場で僕が「嫌」と言ってしまえばこいつはその言葉通り、僕には関わってこなくなるのだろう。
友達付き合いというのは昔から苦手だし好きでは無い。
適当な理由をつけてこいつを拒もう。
口を開きかけた。
その時、ふと、いつの日かの兄の言葉が頭をよぎった。
『受け取れる物はしっかり受け取る。
そして返せる物はしっかり返す。
縁って、それの繰り返しで線に成っていく物だからね。』
なんで今、そんな事を思い出したんだろう。
兄...いや、カスミの場合、誰かに何かを与えるばかりで受け取る事が頭に無さそうだけど。
でも彼はいつも言う。
"人との縁を大切に"と。
少し悩んだ。
こいつとはまだ関わりも少なく、片手で数えられるほどしか会った事がないが、悪い奴では無いというのは分かっている。
ただそれ以上に僕は人との関わりが億劫なのだ。
こうしてあれも違うそれも違うと悩んでいても刻々と時間は進んでいく。
その間、鏑木京はご機嫌な様子でこちらの返答を待っていた。
その様子を見たら、どうにもらしくない考えが一番に頭に浮かんだ。
「.........じゃあ、キョウ。放課後少し付き合って。」
僕はそう伝えた。
ああ、こんな事にするつもりは無かったのに。
悩んだ末の返答が正しかったのかはわからない。
しかし目の前の男は嬉しそうにガッツポーズを決めた。
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しつこく付き纏った結果、アラセくんはとうとう折れてくれた。
ホームルームが終わり校門で待ち合わせたところ、「いく場所は僕が決める」と言われたのでオレはつられるがまま歩き出した。
どこへ連れて行かれるんだろう。カラオケ?ゲーセン?焼肉食べ放題ぐらいなら奢ってやれる。
想像できる限りの様々なよくある娯楽を思い浮かべるが、実際到着したのは全く予想もしていない場所だった。
「えー!?なんでスーパー!?」
学校の最寄駅から3駅挟んだところにあるスーパー。
オレが物心つく頃にはすでに建っていたスーパー。
小さい頃母とよく訪れた記憶がある。
ここらじゃ一番大きくて品揃えがいい。
いや、便利だしいい場所っちゃいい場所だけど、学生が放課後に遊びに来る場所では無いでしょ。
「家の人からおつかい頼まれてる。買い物付き合って。」
「えー!?そんな事でいいの!?もっととんでもないお願いしてくれたっていいのに!!」
ぶつくさ言いながらもオレとアラセくんはスーパーの中へと入って行く。
「いや、荷物結構多くなるから運ぶの手伝って欲しいのと…」
少し歩くとアラセくんはあるところで立ち止まった。
「ほら、あれ。」
そしてどこかを指差す。
そして指差された先に目線を向けるとそこには大きな人だかりができていた。
規制線…いや、ゴールテープ?が張られ、そこからはみ出さぬよう抜け駆けぬようにと店員さんが目を光らせている。
皆どこか落ち着かない様子でソワソワと足踏みをしたり、辺りをキョロキョロと見回したりしている。
「タイムセールって事ね…」
「おひとり様2つまでのところ、君がいてくれれば4つ買える。」
「はいはいお安いご用〜!ちなみになんのタイムセール?」
「豆腐。」
「豆腐!!!!?卵とかじゃなくって!!?豆腐のためだけにみんなあそこまで頑張ってんの!?」
「は?豆腐馬鹿にしてんの?舐めないでもらえる?」
信じられない、という顔で睨みつけられる。
豆腐。いやまあ、美味しいとは思うけど、わざわざタイムセールをしなくても元々の値段がまあまあ安いような。ここまでするほどでは無いというか。
「知らないの?ここのスーパーの豆腐はそんじょそこらの豆腐とは格が違うの。一般常識だけど。」
「そうですぞあんちゃん!ここのスーパーは基本的に品質が良い物が揃えられてる中でも豆腐は別格でござるwwww流石アラセ氏wwwよく言ってやったでござるwwwwwデュフwwwww」
「誰!?」
「豆腐おじさん。ここらの豆腐界隈では有名な人だけど?どんだけ無知な訳?」
「いや誰!?」
気がつけばオレとアラセくんの背後には豆腐おじさんがいた。
「いやいやwww拙者よりアラセ氏の方がよっぽど有名人でござるwwww恐れ多いwwww」
豆腐おじさんは満更でもないという顔をし、ハンカチで額の汗を拭った。
「まずここの豆腐は使ってる大豆からそもそも他と違うの。大豆の生産量が一番多いのは北海道ってのは有名な話だから君も知ってると思うけど…その中でも厳選されたプラチナブランドの豆が使われてる。」
「生産者の大吉 豆子氏の顔はインターネット上でも公開されてますぞ!!拙者はそのご尊顔を毎日拝むためケータイの待受にしてるでござるwwwwwwデュフwwww」
「奇遇だね、僕も。」
「オ、オレがおかしいのかなあ…」
見たことがない世界を垣間見た気がする。
その後アラセくんは持ち前の機敏性と身体能力を駆使し、周りの制止に屈する事なく豆腐を4つ、無事獲得した。
オレの出る幕は無かった。
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荷物を片手にスーパーの扉を潜った。
西日が眩しく、手で光を遮る。
気がつけば時刻は17時半。
アラセくんが言った『荷物が多くなる』という言葉通り、豆腐以外にも日用品やら野菜やらやたら買う物が多く、結構長居してしまったらしい。
アラセくん、家の手伝いちゃんとしてんだ。偉いな。このぐらいの子って反抗期真っ只中な気もするけど。
「本当にそこまででいいの?重くない?オレ暇だし家まで運んでもいいけど!」
「余計な気遣いはいらない。」
「あは、暇つぶししたかっただけだけどね〜」
夕暮れのチャイムが鳴る。
聞き慣れたその音を耳に、横を並んで歩く少年を見つめた。
『助けてもらったお礼がしたい』
こうして彼を付き纏っているのはもちろんその理由もある、しかしそれだけじゃない。
なぜオレは夢に閉じ込められたのか。
誰が、何の為にやったのか。
あの時現実のオレの体では何が起きていたのか。
化け物がオレに囁いた“夢の底“とはなんなのか。
オレの中で考えるだけじゃわかりそうも無い疑問が沢山ある。
そしてこの少年はその疑問の答えを全て知っている。はず。
しかしそれら全てを差し置いてしまえるほど大きな気がかりがもう一つある。
『大切な人を苦しめている自分への戒め』
あの日、夢の中でアラセくんが言った言葉。
その言葉と、その時の表情がどうしても頭から離れずひっかかる。
どういう意味なのか、意図も背景も分からなかった。
分からないが、どうにか蟠りをほどいてあげられないだろうか。なぜかそう思った。
なんて思考を巡らせていると、ふとある物を忘れている事に気がつく。
「あーやべっ!忘れるとこだった!!」
立ち止まり、持っていた買い物袋に手を突っ込み漁る。
冷たい感触が指に触れるとオレはそれを引き上げ、見せびらかすように持ち上げた。
「じゃーん、アイス〜!」
真ん中に切り取り線が入っていて、二人で分けられるタイプのやつ。
アラセくんの会計とは別でこっそり買っていたのだ。
封を開け取り出し、両手でそれぞれの持ち手を握り、双方向に引っ張ればパキン、という音と共にアイスが割れる。
片方を差し出すと、アラセくんは戸惑いつつもそれを受け取った。
「と、オレの連絡先」
アイスと一緒に連絡先の書かれた紙切れを渡した。
するとアラセくんはまた眉間に皺をよせる。
一緒に渡したから勢いで受け取ってしまったらしい。
「ナンパ師みたいな手口…」
「まあまあ、登録するかしないかはアラセくん次第だし」
でも何となくはわかってる。この子は本気で拒んでいる訳じゃない。
何というか、少し天邪鬼で、素直になれないだけなんだろう。
アラセくんは紙に書かれた文字を見つめる。
少ししてから口を開いた。
「…まあ」
「登録するぐらいなら、別にいいけど」
そういうとアラセくんはその紙を丁寧に折りたたみ、ポケットにしまう。
そしてソーダアイスを1口齧った。
相変わらずのそっけなさに、思わず吹き出してしまった。
1.5章 「ほどけて」