第3章:言葉を覚えるための戦い
村の中へと案内された俺は、木造の小さな家に通された。中には年配の女性がいて、俺をじろじろと観察している。
老人が何かを説明すると、女性は「ふむ……」と腕を組み、戸棚から黒くて硬そうなパンのようなものを取り出した。
そして、俺に手渡しながら言った。
「ルーガ」
「ルーガ?」
言葉の意味は分からないが、たぶん「食べろ」ということだろう。俺はおそるおそるパンを口に運んだ。固い。めちゃくちゃ固い。まるで石みたいだ。
だが、ここで食べないと、この村の人たちの信頼を失うかもしれない。覚悟を決めて、歯を立てる。
「がっ……! か、固っ……!!」
前歯が折れそうになりながらも、なんとか噛みちぎる。味は……まぁ、悪くはない。水がほしくなるほどパサパサしているが、空腹には勝てない。
女性は満足げに頷いた。
「ルーガ」
「ルーガ……」
つまり、これは「ルーガ」という食べ物なのか?
言葉を覚えるチャンスだ。俺はパンを指さし、「ルーガ」と言った。
「ルーガ!」
女性は嬉しそうに微笑み、頷いた。
よし、ひとつ単語をゲット!
その後、俺は身の回りのものを指さしながら、村人に言葉を教えてもらうことにした。
「水は?」
「ロア」
「木は?」
「ギン」
「これは?」
「バルグ」
指差しながらひたすら繰り返し、少しずつ単語を覚えていく。
異世界で生き抜くためには、まず言葉を理解しなければならない。俺は必死に覚え続けた。
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