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国を追われた元最強聖騎士、世界の果てで天使と出会う ~辺境に舞い降りた天使や女神たちと営む農村暮らし  作者: 鳴神衣織
【第一話】森での出会い

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11.あなたはどこから来たの?

 レンジャーギルドは一般的に、待合酒場とギルド業務二つを兼務している支部が多い。


 カラール村も例に漏れず、ギルド入ってすぐのところが酒場になっていて、丸テーブルと椅子がいくつか設置されている。


 その酒場部分から更に奥へ行くと、空きスペースが設けられ、左右の壁際に緊急の仕事が張り出される掲示板が置かれている。そして、そこを更に過ぎた店内最奥すべてが受付カウンターとなっていた。


 受付カウンターの右手側はカウンター内右手奥に作られている厨房から食事を運んでこられるようにと、カウンタードアだけとなっている。

 対して受付カウンター左手奥には支部長室や応接室などがある。


 グレアムたち三人はカウンター内に入ると、そのまま応接室へと移動し、ソファーの上にラフィを座らせた。

 その上で、きょとんとする彼女の前に大人二人がしゃがみ込む形となる。


「ねぇ、ラフィちゃん」


 子供の相手は慣れているマルレーネに任せておけば、すべて丸く収まる。

 そう思って、グレアムはさじを()――彼女にすべてを委ねることにした。


「……うん~? なんですか?」


 若干、舌っ足らずな愛らしい声が返ってくる。


「あなたがどこから来たのか、お姉さんに教えて欲しいな」

「ん~? んと、もりなのです」

「え?」


 どうやらマルレーネはラフィの言っている意味が理解できなかったようで、一瞬固まってしまった。しかし、すぐさま気を取り直す。


「うん。そうだよね。さっきまで森にいたよね」

「うん~」

「じゃぁ、その前はどこにいたのかわかるかな? お父さんとお母さんは?」


 にっこりと微笑みながら問いかける、聖女もかくやと思えるほどの優しげな声色だったが、何かを思い出したのか、ラフィは表情を曇らせ俯いてしまった。


「ラフィ……もりにいたのです。おとうたまとおかあたま、わるいひとたちにいじめられて、きえちゃったのです。ラフィのおむねのなかにいるのです……」


 ぼそぼそと呟くように、俯きながら彼女はそうマルレーネに答えた。そしてそのまま押し黙ってしまい、何も話してくれなくなってしまった。

 マルレーネはどうしていいかわからなくなってしまったようで、グレアムを見た。


「これって、どういうことでしょうか?」

「……わからない。だが、普通じゃないことは確かだろうな。身元もわからないし、ラフィが言う消えてしまったというのも意味不明だ。あの奴隷狩りどもも絡んでいるしな」

「そうですね……。もう少し時間をかければ、ラフィちゃんも気持ちが落ち着いて、わかるように説明してくれるのかもしれませんが……」


 だが、落ち着いても一向に要領が得られないかもしれないし、もしかしたら、彼女の親が今もなお、血眼(ちまなこ)になって探しているかもしれない。もしそうなら、早く親子を再会させてあげたかった。


「とりあえず、ラフィが言ってる意味もよくわからんから、一度、彼女に案内してもらって、もう一度、森に入った方がいいのかもしれないな。森の中にいたって言ってるし、もしかしたら、あそこに何かあるのかもしれない」


 アヴァローナの森には、幻獣が住む聖域があると言われている。何があっても不思議ではなかった。


「そう……ですね。ラフィちゃんが何を意図して、そう答えたのか私にはわからないですし、その辺もお願いしてよろしいでしょうか?」

「あぁ。薬草の件もあるしな。準備が出来次第、明日もう一度行ってみるよ」


 グレアムが微笑むと、マルレーネは軽く会釈をした。


「お願いします。ですがその前に、この子をこのままの格好でいさせるのもなんですし」


 そう言って、彼女は再びソファーに座るラフィを見た。

 グレアムもつられて見つめる。


 相変わらず、薄汚れた格好をしている幼子は、俯いたまま右手で左人差し指の爪をいじるようにしていた。

ギルドの基本的作りは大体どこも同じですが、カラール村は辺境にある田舎村なので、本当に規模が小さいギルドです。

普通の下町にある酒場に、ギルド業務が行えるカウンターがついている、といったイメージでしょうか。


【次回予告】

 12.妖精のように可愛らしい女の子

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