第4章 不思議っ子とブチギレっ子
「お兄~ちゃん……」
背筋に冷たいものが走ったのだが……。
目の前に座る妹から睨み付けられてます、怖いです、マジで怖いです。
「誰なの? その子?」
その子呼ばわりだよ、完全に切れてるんじゃないかな……。
「恵美さん……です……」
「はぁ?」
「嫌、この子が苗字が恵美であって、決して恵美を呼んだわけではないのですが……」
帰ってこーい狼似ー、チョコなんか洗い落とす前に助けてくれー!
うん? 恵美さんが手を挙げてこっちを見てらしゃる!
「……夢乃って呼んでください」
「えっ! あ! はい!」
「お兄ちゃん~!」
「アウチュ! タイ! イタイ!」
机の下で足を踏まないでいただきたい、そしてそんな目で睨まないでいただきたい。
話をそらそう、じゃないと足の指が折れてしまう。
「……何か頼もうか……メニューを取ってくれ、えぇと……………………夢乃さん……」
『バキッ』
何かいやな音がしたが、気にしてはいけない。
「はい、どうぞ!」
「あ……ありがとう」
何故か手が震えているのだが……、たぶん前の鬼からの睨みつける攻撃だろう。
「さて何か頼むか……恵美、奢ってやるからその目をやめてくれ……」
「………………………………金無いくせに」
はぅ! ……核心を突かれたぜ!
「夢乃奢りましょうか?」
「滅相も無いっ! こんな可愛い子にそんな事させれません!」
「えぇ! あ……ありがとうございます……」
『ボキッ』
何かいやな音がしたが、気にしてはいけない、さっきより数倍の痛みをともなっているが、気にしない。
とっととメニューを開いて食うものを確認する、これ以上会話したら俺の足が持たない。
『表町おすすめ、表町カレーライス』
『表町グレープフルーツ』
『表町おすすめ、表町不人気、表町ハンバーグ』
「店員っ! 振り仮名ふってくれっ~!」
分からない、何がなんだか分からない、こんなメニューで大丈夫なのか?
おっ! 来たな店員。
「どうなさいました、お客様?」
「メニューに送り仮名振って欲しいんですけど」
「こんな漢字も読めないのかよ……失礼、こちらのメニューをご覧ください」
『キッズメニュー』
「なめとんかっ~~~~!」
「ごゆっくり」
「逃げるな~~! せめて背骨だけ折らせやがれっ!」
「お兄ちゃん、落ち着いて背骨折ったらこの人反対側にお辞儀できるようになっちゃうよ!」
「夢乃まず、お辞儀ができるような状態じゃないと思います!」
「「………………………………」」
思わず夢乃さんの顔を凝視してしまった、まさか普通につっこんでくるとは……。
「まあいいや、とりあえず振り仮名が振ってあるなら良いとしよう」
『表町おすすめ、表町カレーライス』
『表町グレープフルーツ』
『表町おすすめ、表町不人気、表町ハンバーグ』
予想以上だった。
「表町グレープフルーツしかまともなのが無いのか?」
てかまず、メニューが3個って駄目だろ。
「お兄ちゃん、そういえばどこでこの子と合ったの?」
「あぁ~! そうだ夢乃さん、話を聞くはずだったよね! 狼似がトイレに行ってるけど俺だけで大丈夫かな?」
「………………………………」
あれ駄目だったかな? もっと慎重に聞くべきだったか?
「駄目だったら、後で聞くけど……」
「いいえ、夢乃言います、ここで言わないと皆が危険になちゃうから」
夢乃さんは、顔をあげて俺に目線を合わせる。
「アタックキャッスルを壊してくださいっ!」
「………………………………」
本日二度目の凝視、恵美に関しては首を30度曲げてらっしゃる。
「あの~、めっっっっっっっっっっっちゃ詳しく説明してください」
「あぁ! すいません、どこから説明した方がよろしいでしょうか?」
「とりあえず、年と年齢と生まれた日を教えてくれない?」
「お兄ちゃん、それ全部同じ意味!」
「年は16歳で誕生日は11月29日です!」
「私と同い年! そしてお兄ちゃんなんでメモ取ってんの!」
後四ヵ月後じゃないか……、は! また話がずれてしまう……。
「出身は?」
「あっ………………………………」
あれ? またやらかしちゃったか俺?
「大丈夫? 無理しなくて良いからね」
「大丈夫です、夢乃の出身は………………三好です」
三好? どこだっけ? 地図とかあまり見ないからどこに何があるのか分かんないんだよな~。
「三好だと!」
おお! びっくりした~狼似か、やっと帰ってきたのか?
「狼似知ってるのか?」
「あぁ!…………2年前にニュースでな! え~と何て呼べばいい?」
「夢乃でいいです!」
「じゃあゆめっぴ、ゆめっぴが言う、三好は裏町からしか行けない町だよな」
「はい…………」
「ゆめっぴって馴れ馴れしいぞ狼似!」
「嫉妬すんな」
そんな、俺が嫉妬なんかする分けないに決まってんだろう。
「だが、三好は2年前に跡形もなく、消え去ったと聞いたが?」
「はい、この時代にはもう三好はありません……」
う! 何かトゲのある言い方だな。
「皆さんに2年前の三好を救って未来の三好救って欲しいんです!」
「やっぱりな、そんな事だろうと思ってたんだよ……」
『ガタ』
狼似が椅子に座る、だけど何でそんな事だろうと思ってたのだろうか、俺はもうすでに意味が分からないんだけど。
「どうやって過去に行くんだ?」
「はい、それはイーブルスを使います!」
「ふ~ん……」
なに喋ってんのこの人たち~! 悲しいよ俺、全くわかんない俺邪魔者か?
「1日くれ、話し合う」
俺に指を向けてくる狼似。 まず俺に説明してくれ!
「…………分かりました、また明日の昼、表町駅で会いましょう、失礼します!」
律儀にもちゃんと頭を下げて店を出て行く夢乃さん、可愛いな。
「さて、狼似どうゆうことかな?」
「そのまんまだろ、「助けて!」 って言われたんだ助けるよな下原」
「余計な詮索は無駄ってか、分かったよ狼似………………助けなきゃね」
「でも、何でか分からないが前にもこんな事があったような気がするんだよ」
「ふ~ん、変なの」
「だな」
さて、そろそろ帰るとするかな、明日の準備が必要だし……。
『ガタ』
俺と狼似が席を立ち出口に向かおうとしたら、後ろから声が。
「お兄ちゃん、狼似先輩、私のこと忘れてるよねっ!」
あ! そういえばいたな……。
それより、狼似に誤らなきゃいかんことが。
「狼似!」
「どうした?」
「訂正、この店より狼似のチョコ顔のほうがましだった!」
「………………………………そうか」
「今は無き町、三好か」
何故こんなとこにたどり着いたのか分からないが、ここに呼ばれていたようなきがする。
「殺風景だな」
何もない本当に何もない、町の中心から外に向かって逃げるように雑草が生えてるぐらいだ。
僕はその中心に立つと思った。
似ていると。
この場所と、自分の今の心はとっても似ている。
「? 何だこれ?」
僕は目に映った小さな錆びた鉄の破片を手に取る、それをしばらく眺めるとポッケに収める。
「ここ、いい場所だな」
それだけ、言うと僕は地面に寝転がり眠りに着いた。
この時だけ、僕は自分のことだけを大切にしていた。