第3章 不幸と幸福は紙一重
「うんで、うんで? どこ集合?」
「だから表町だって」
「表町のどこ?」
「あぁ~……表町って店」
ケータイで確認、便利だよねケータイ!
「何か……色々駄目じゃない? その店?」
「お前の顔よりは大丈夫だろう」
「なぁ! なんてことを!」
「こっち向いて喋るんじゃね~よ、チョコが飛ぶ」
「それ下原、ヒドイ」
そんな事は無い、俺は広~い心を持ってますよ。
「つか、さっさと抜けろ、後ろ詰まってんぞ!」
「切符が無いんだよ、さっき買った奴が……」
「買って来い」
「金貸して」
「何で?」
「1万しかない……」
「崩して来い!」
「心狭い……」
「うるさい、さっさとどけ、そして俺の妹の前に二度と現れるな」
「やなこった!」
いきなり強気になりやがって、キャラ統一しやがれ。
「下原? 迷っ」
「てない! 決して迷子などではない、俺が駅から5分の場所が分からず迷う筈が無い!」
「さっきの場所右だったんじゃ」
「左で合ってる!」
「そうっすか……」
この地図によると今俺はもう店に着いている筈なのだが、目の前に広がるのは広大な畑である。
「下原……地図逆……」
「…………」
ハッッッッッッッッズィィィィ!
「待て、わざとだ……こっちだ! 着いて来い!」
「無駄な時間だ……」
「何故こんな暗いところに出るんだ? 裏路地じゃん完全に。」
「嫌そんなはずは……」
「おーい……」
「俺が道を間違えるなど……」
「聞こえてない……、下原ちょっと地図よこせ!」
「あぁ!」
地図が俺の手から消えてしまう。
「…………すごいな下原」
「どうした? まさかもうすぐ近くなのか!」
「そこ曲がってみろ――」
「おっし!」
俺はすばらしい柔軟性で障害物をよけながら曲がる。
そこには、
「――ラブホがあるはずだ!」
「ノーンー! 何故騙した? 今必要だった? 出入り口ガラスだから、店員と目が合ちゃったよ!」
『ウィイイン』
「店員来たァァァー! 狼似逃げるぞ……って居ないしよ~!」
「お疲れ、昼間っから入ろうとするとはお前もやるな!」
「何故……こんな……事を……したんだ……」
「チョコの分」
「なるほど……」
納得してしまう自分が居た。
「とりあえず、次は大丈夫だそこを左に曲がれ」
「次は大丈夫だろうな……」
「大丈夫――」
「おっし!」
俺はもはや障害物をけり飛ばしながら進んでいく。
そこには、
「――山口組が居るはずだ!」
「ヤークーザー!」
「ドンマイ」
「みげろ~」
「逃げろだろ……」
「やばいって! これはやばいって!」
『サク サク サク』
ナイフが、俺が走った後の後ろの壁に刺さってますが!
マジでやばいって!
「後は頼んだ、下原!」
「あがっ!」
顔が、顔が変形してまう……。
「殴られてなお走り続けるとは見直したぞ下原、だがこけてくれないと意味無いんだが……」
「褒められて初めて嬉しくなかった……」
「今褒めてる筈が無いだろう……」
「何か言った?」
「嫌、何でもない」
ヤクザから逃げ切ったようだ。
「次はどっちに行けばいいんだ?」
「下原そこの玄関を」
「引っかかるか~! もう騙されんぞ、今度は何だ? 人の家か? 俺を不法侵入者にするつもりか?」
「嫌、闇医者の家だ」
「何故だ~! つかさっきから何だよ、何で地図にヤクザの場所とか闇医者のところが載ってんだよ」
「分からん、そうゆう地図何でしょ」
「警察が使ってそうな気がするんだが気のせいか?」
「右端に警察特別真相マップて書いてある……」
「何だってー!」
「と、思ったら100円マップだった」
「……言わないで、金ないんだよ、今……」
今財布の中には野口さん一人と鳳凰堂が7個しかありません。
「とりあえず、そこ曲がってみ」
「またか!」
「いいから曲がってみ」
「大丈夫なんだな、本当に大丈夫なんだな?」
「あぁ、男なら行かなきゃ駄目なときがある!」
「……よし、もう一度だけ信じてみよう!」
「流石だな――」
俺はダイブするがごとく角を曲がる。
そこには、
「――エロ本捨て場になっている場所に突っ込むとは!」
「…………」
「…………」
「…………」
「無反応? ちょっと反応してくれよ! ……………………ってえぇ?」
狼似が俺が入った場所を覗き込むと硬直する。
嫌、誰でもそうなるんじゃないかな?
だってよ~、ね~。
普通エロ本の上に寝ている少女を見たらさそうなるよね! うん!
年は大体14から17ぐらいってところかな? しかし……真っ青のワンピースって何か狙ってんのこの少女? 俺のドストライクだよ、髪の色、紫、そしてサイドテール、胸は……目をつぶるとして、このプヨプヨ肌……。
最高だ!
「駄目だ守備範囲じゃねぇ!」
「何を言っている、狼似パーフェクトじゃないか……」
「えぇ……、下原ってペッタン好きだったの?」
「何故そうなる!」
即答してやった、ペッタン言うな、発育が悪いだけだ! 発育が!
「…………誰?」
「起きちゃったー!」
起きちゃったよ、狼似のせいだからな、もっと寝顔見ていたかったというのに。
「…………もしかして………………清い人? そうなの?」
「はい?」
「そうなの どうなの?」
泣きそうだよ、ちょっと大丈夫かよ…………。
ここは何て答えるべきか……。
「そうだよ! この兄ちゃんがそうだよ!」
狼似何で俺なんだ? 良いのかそんな適当に返事して!
「やっぱり! 助けて! 皆を助けて!」
「はいぃ? ちょっとえぇ? 離れて離れて、嫌、離れないで」
「下原、本音、本音!」
だっていきなり抱きつかれても困ると言うかなんとゆうか?
本音も出てまうとゆうか、テンパってしまうとゆうか?
「とりあえず、話を聞こうか……、君名前は?」
「恵美、恵美夢乃」
「恵……恵美かぶりだと……しかも名前と苗字……」
「狼似ちょっと黙ろう」
「へい!」
「恵美さん? えっと、とりあえず妹を待たせてるからそっちで話し聞いていい?」
「大丈夫だよ!」
よし、とりあえず店行こう! もうすぐ11時過ぎるし……
『ポンポン』
「うん? どうしたの狼似? ちょっと首ひっぱんな!」
「恵美ちゃん……じゃ無かった、恵美さんちょっとまってね!」
「うん!」
笑顔可愛ええ! ほれてまう~。
「恵美さんと俺を離してどうしたの? 狼似」
「……やるな下原……お持ち帰りじゃね~の? てか、普通これって警察沙汰じゃね~の?」
「は! そうゆう事になってしまうのか……」
気づいたら、顔が真っ赤だよ火照ってるよトマトだよ。
『ピロピロリン』
「俺だ……」
ケータイを確認する俺、差出人は恵美……妹からだ。
『メール57件』
『着信23件』
「マジか……! まだ、11時1分だぜ、1分だけでこれだけ来るってどうゆう事?」
「返事しとけ、恵美ちゃんのメールと着信の量は時間に比例するぜ!」
「知っとる!」
知っている人は知っている、妹はヤンデレなのだ。
『今から行くから安心しやがれ!』
「送信! ……じゃあ行こうか狼似」
「あぁ! 恵美ちゃんの下に!」
俺は顔を恵美さんの方に向けると手で呼ぶ。
「さっさと行こう、これ以上遅れたら大変な事になる」
…………。
「つか大丈夫かな? 警察に連絡しないで…………」
狼似が何か言っていたがよく聞き取れなかった。
『ガタンガタン、ガタンガタン』
電車に乗るのは何年ぶりだろうか? この風景を見るのも久しぶりだ。
確か以前乗ったのは、3年前だろうか? あの時は確か優香と一緒だったけな?
もう学校に僕の場所は無い、皆を大切にしたから、誰か一人ではなく、皆を大切にしてしまったから僕は居場所が無くなった。
何が悪いのだろうか、皆を大切にする事の何が悪いのだろうか? 他に何か方法があるのだろうか?
すべての答えを求めるために僕は電車に乗る、行く場所も分からぬまま。
僕は大荷物を足元に置く、手に持っているのが疲れたためだ。
『出雲~出雲に到着しま~す』
結構乗ったんだな、いつの間にかもうすぐ裏町(終点)だ。
「セ-フ!」
『ガタガラ』
髪は黒で軽くロン毛の少年が(と言っても同い年ぐらいだが)飛び乗ってくると同時に前の扉が開き、車掌が歩いてくる。
前後ろの交代かな?
『扉が閉まりま~す、ご注意ください』
『プシュウー』
「トリャアァァァァァァァ!」
何か飛び込んできた!
「あっぶねー! セーフ!」
あぁ~車掌の目の前で……。
「お客様!」
「はぃ……」
「駆け込み乗車は危険ですのでおやめ下さい」
「すいませんでした、以降気をつけます」
「はひぃはひゃひゃひゃ」
やっぱりな……、少年二人組は何か片方が騒いでいたが、表町に着くと出て行ってしまった。
面白い人たちだったな、また合えるような気がする、何でだろうか?
てゆうか、一人何か背中に張ってたけど何の画像あれ? しかもガムテープで張ってあるし……
『裏町~裏町に到着しま~す』
さて、降りないと。
探さないと自分の答えを…………皆の幸せを……。
『プシュー』
僕は一歩電車から降りて、深く息を吸う……。
やっぱり外の空気はいいね。
「あぁ~チョコ臭かった!」