あなたは本当にそれでいいの?
初投稿です。よろしくおねがいします。
「アメリ、すまない。婚約を...破棄してほしいんだ。」
私の家に急に押しかけてきた婚約者は、そう言った。その隣にはとても不気味な笑みを浮かべている私の妹がいる。だいたい事情は理解できた。妹が好きになったのだろう。確かに私は彼を愛していないけど、やはり、心にくるものがある。
「ごめんなさいお姉さま...!だけど、ジョナサン様は悪くないの、全部私が悪いのよ!」
聞きたくはなかった、そんな言葉など。愛していないけど、信頼はしていた。6歳のころからの婚約者なのだ、裏切られたという事実を認めたくない...。
「君と僕は政略結婚だ。この婚約は家同士の関係を深めるためのもの。君の妹のガブリエルと変わっても支障はないだろう。」
ジョナサン様ってこんな方だったのね...。もっと、常識がある人だと思っていたわ。
「婚約破棄、わかりました。」
「ありがとう。アメリならわかってくれると思っていたよ。」
「やったね!ジョナサン様。」
人の前でだきつかないでほしいわ。元とはいえ、さっきまで婚約者だったのだ。
「ひとつ...聞いてもいいですか。」
「なんだい、アメリ?」
「ジョナサン様、私はもう婚約者ではありません。アメリと呼ぶのはおやめください。」
「すまない。で、聞きたいこととは...?」
「ジョナサン様...あなたは...本当にそれでいいのですか?」
「ああ。後悔はしていない。君よりも、ガブリエルがいいんだ。」
「ジョナサン様...!」
「ガブリエル、あなたも、本当にそれでいいの?」
「いいに決まってるじゃない!」
「わかりました。ありがとうございます。では、私はこれで。」
◇◇◇◇
まさかジョナサン様がガブリエルとね...。
私の妹、ガブリエルは割と自己中心的な性格で、わがまま。小さいころから末っ子ということであの子が両親から甘やかされたからだ。私のものやお兄様のものなどを欲しがったり勝手に奪っていく悪い癖がある。
「失礼します。お嬢様。」
ここで呼ばれるということは...婚約破棄のことね。
「何でしょうか。」
「旦那様がお呼びになっています。至急、書斎に来るようにと。」
「わかった。今行くわ。」
私が怒られるのだろうか...?いや、そんなはずないよね。ジョナサン様とガブリエルが勝手にやったことなんだから。これからどうなるんだろう。社交界では何か言われるんだろうな。憂鬱だなぁ。
「失礼します。お父様。アメリです。」
あれ。お母様もいる。だけど...ガブリエルがいないな。婚約破棄の件だと思ったのだけど...当事者がいないの?
「アメリ、婚約破棄の件は聞いた。これからどうしたい。」
伝わっていたのね...
「アメリ、別に無理しなくてもいいの、結婚とかが嫌になっても何も言わないわ。」
お母様...!優しい。うれしいな。味方みたいなのができて...。
「婚約破棄をされたから、国内では白い目で見られるだろう。話し合ったのだが、隣国に旅行しないか?」
旅行??したい...!ガブリエルと顔を合わせたくないし、ジョナサン様とも会うことはないじゃない!
「あなたはさっきも言ったけれど頭がいいし、隣国の言葉も話せるでしょう?どうかしら。」
「行きたいです!」
「じゃあそれで決定だな。こういうのは早い方がいい、手続きはやっておくから、準備を進めときなさい。ガブリエルには私から伝える。もう部屋に帰っていいぞ。」
「わかりました、お父様!ありがとうございます!」
旅行か...。楽しそうだなぁ。
◇◇◇◇
一週間後...行くことになった。手続きはやすぎた。さすが富豪だと思った。
「体に気を付けてね。ついたら手紙を頂戴。」
「わかりました、お母様。では、行ってきますね。」
隣国はすごくきれいで、新鮮な体験ができて、気晴らしとか、吹っ切るのはちょうどよかった。
帰りたくないな~。1か月で帰るといったが、明日でその一か月か経つ。帰りたくない。
あ~考えるのがだるい。気晴らしに散歩でもするか。
やっぱりきれいな街だよな~。
ドンッ
え?押された...?ぶつかるっ!
「大丈夫ですか?」
「すみません。ありがとうございます!」
「もしかしてアメリ嬢か?人違いだったらすまないが。」
ん?知り合い?見たことあるような顔だけど...?もしかして...
「皇太子殿下!?」
噓でしょ...まさか旅行先の国の皇太子と会うなんて...
「ちょっと場所を移そうか。」
「私がとった宿なら開いています。そこで良ければ...」
「ありがとう。」
◇◇◇◇
「久しぶりだね。アメリ嬢。」
「お久しぶりです皇太子殿下。」
皇太子殿下とはパーティーなどで意見を交わしたり、いろいろ関わる機会があったから、割と仲の良い人だった。
「アメリ嬢に話があるんだ。」
話とは...?
「今する話ではないと思うんだが、早く言っておきたくてね。単刀直入に言う。俺と婚約してくれないか?」
は?皇太子殿下と...婚約?
「え?どうしてですか?」
理由がわからない。
「アメリ嬢、君は気付いていないと思うが、俺は君のことが好きなんだ。君はとても優秀で、美しく、責任感がある。皇帝陛下も快く了承してくれた。どうだ。」
「でも、私は婚約を破棄された女です。キズモノですよ。」
「それが何だというのだ。君の両親にも許可は取ってある。あとは君が了承するだけだ。」
「わかりました。その話、お受けします。」
「ありがとう。じゃあ君アメリ嬢の家にあいさつしにいかないとな、すぐにでもいこう、明日迎えに行くよ。」
◇◇◇◇
一睡もできなかった...。情報量過多で死にそう。
「アメリ嬢、行こうか。」
「何を使っていくのですか?だいぶかかりますよ一番早い列車でも5時間は...」
「そんなめんどくさいことするわけないだろう。ポータルだよ、ポータル。」
「ポータルですか!?」
ポータルは使うのにとてつもない金が必要なのに...さすが王族...。
「ほら、行こう。」
「はい。」
◇◇◇◇
ついた...我が家だ...。
「アメリ!おかえりなさい!」
「わが妹よ、よく帰ってきた!」
「お母様!お兄様!」
出迎えって...伝えてたのねちゃんと。
「ちゃんと話は聞いたわ。お父様も喜んでいるわ。ほら、部屋に行きましょう。いっぱい話をしましょう。」
「社交界は大騒ぎだぞ。どうやってあの皇太子を射止めたのか」
ハハハ。情報伝わるのはやすぎでしょ。
「本当に皇太子殿下なのねぇ。アメリ、よかったわね。」
「ありがとうございます。」
「皇太子殿下も、どうぞよろしくお願いします。」
バンッ
!?誰?ってガブリエルとジョナサン様?!
「お姉さま?お姉さまが隣国の皇太子殿下と婚約したというのは本当なの?嘘よね?」
そのことね...。というか王族の前でそんな礼儀のかけらもない姿を見せないでよ。不敬だよ不敬。
「本当よ。」
「嘘...嘘よねお姉さま。お姉さまみたいな人が王族になるの...?」
??何を言っているんだろう、私の妹は。
「ガブリエル、口を慎みなさい。」
「お母様は黙ってて!」
「ねぇお姉さま。皇太子殿下を私に譲ってよ。」
ガブリエル...?何を言っているの...?譲る...人間は尊い存在なのにもののように言って。
「そしてお姉さまがまたジョナサン様の婚約者になればいいじゃない!」
「ガブリエル!?僕に誓った愛は嘘だったのかい!?」
「当たり前でしょ。あんたみたいなブス。私の相手じゃないわ。」
「そんな...!アメリ、この女の言う通り、婚約関係を前と同じにしよう。このメギツネに騙されていたんだ。」
何を言っているのよ。私の意志はどうでもいいかのように話を進めて...。
「ガブリエル、ジョナサン様。私は婚約を破棄された日に、言いましたよね。本当にそれでいいのですか、と。それであなたたちは、いいといったんです。自分の言葉に責任を持ってください。」
「まったくだ。話が通じない連中がこの国には多いようだな。」
殿下...!
「王族への不敬でこの二人を拘束しろ。」
◇◇◇◇
結局、あの二人は王族への不敬で牢の中にまだしばらくはいるらしい。
ガブリエルは絶縁されたので、もうただの平民になっている。
そしてあの後、私と殿下は結婚した。
「何を考えているんだ?アメリ。」
「いや、あなたが地獄みたいな婚約者と妹から救ってくれたなって。」
「それはよかった。」
「何よそれはよかったって。」
「「アハハハハハ」」
読んでいただきありがとうございます。
追記)まだ投稿して3時間ほどですが、思った以上にいろいろな方に見てもらえて本当に光栄です!