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ノト半島事件

ギロチン台は、ルイ16世の発案です


「ゼニ」は、1789年から革命政府が発行した「アッシニア」紙幣のことです


王弟とは、ルイ16世の二人の弟、プロヴァンス公(後のルイ18世)、アルトワ伯(後のシャルル10世)のことです。特にアルトワが怪しいと……


ノト半島事件は、1791年6月のヴァレンヌ事件のことです。フェルゼンはほんと、余計なことをしてくれたと私は思ってます




 トカ御用邸に行進した人々は、しかし、国王に害をなす気はなかった。


 ヤマト16世は、慈父のごとき賢王だった。性格も地味で、フィギュア制作が趣味だった。


 ジパングは先進国であったにもかかわらず、未だに死刑が執行されていた。囚人が苦しんで死んでいくことを気の毒に思ったヤマト16世は、お気に入りの幼女のフィギュアを使って人体を研究し、ついに、秘密のツボを探り当てた。そこを突けば、苦しまずに、一瞬で死ねるというツボだ。


 王は臣下のハラキリ博士に命じて、身長体重性別にかかわらず、そのツボを精確に刺激できるマッサージ器を開発させた。

 まさに、ジパングのサブカルチャーの粋を集めたこの装置は、開発者の名を取って、ハラキリと呼ばれている(腹は切らない。くどいようだがツボを押すのである)。


 このように、ヤマト16世は、非常に慈愛深い王だったのだ。





「これも一種の、高貴なる義務ノブレス・オブリージュかもしれんなあ」

クラヤミザカ宮殿で、ヤマト16世がため息をついている。


上がらぬ給料、極端なインフレ、それに異常な気候が、おとなしかった人々を、革命へと追い立てた。彼らの怒りは、不甲斐ない国王に、一直線に向いてしまったのかもしれない……。


もはやデフレは戻ってこなかった。その上、人材が育っていないジパングの地位は、国際社会の中で転落する一方だった。通貨は下がり続け、政府は独自通貨「ゼニ」を発行、国有財産を担保にしたが、とにかく信用がなかった。あまりに流通しないので、ついには強制的に流通させたが、これは逆効果で、かえってインフレを促進させる結果になってしまった。



ところで、トカ御用邸への国民の行進は、本当に自然発生的なものだったのだろうか。言い出しっぺはいなかったのか。たとえば、全P連の会長の親族の外戚の友人の甥に、王弟がいなかったか。

 ヤマト16世の王弟は、兄の王位を狙っていた。彼は、兄嫁である王妃を憎んでいた。

 真相は謎に包まれている。


 いずれにしろ、王妃は、国民の恨みを買う一方だった。

 そもそも彼女は、ジパング人ではない。ジパングとはいがみ合っている大国、中花国の出身だ。


 国王や無能な官僚に向けられるべき怒りも、生活苦のストレスも、全ては王妃に向けられた。国民自治政府が成立した頃、彼女は、二女に続いて長男を亡くしているが、同情する者は誰もいなかった。


 王妃は国王を尻に敷いている。国庫に金がないのは、王妃の乱費のせいだ。

 そんな噂が、国中を駆け巡っていた。

 加えて彼女は、大革命を侮辱した……。





 王妃は、身の危険を感じた。

 トカ御用邸から、強引に連れてこられたクラヤミザカ宮殿では、王家一同には、全く自由がなかった。もし、暗殺者が送り込まれたら、一家は、唯々諾々と殺されるしかない……。

 王妃は、夫と残された次男を連れ、母国へ亡命する決意を固めた。


 しかしこれは、失敗に終わった。

 国王が亡命に乗り気でなかったうえに、準備に時間がかかり過ぎ、荷物も多すぎた。これでは目立つことこの上もない。


「あれ、国王じゃね?」


ノトの宿屋に入っていく小太りの男を見て、近所の中学生がつぶやいた。その男は、一行の中では比較的地味な服装をしていて、従者だという触れ込みだった。しかし、どう見ても国王だ。画像で見て知っている。


中学生はその男の写真を撮り、投稿サイトにアップロードした。

それはあっという間に拡散され、正体を見破られた国王一家は捕えられ、クラヤミザカ宮殿へ連れ戻されてしまった。



 国王一家の逃亡事件は、彼らが捕らえられた半島、ノトに因んで、ノト半島事件と呼ばれている。



 逃亡事件は、一説には、王妃の恋人が手引きしたとも言われているが、もしそうなら、この恋人も余計なことをしてくれたものである。


 なぜならこの「ノト半島事件」を機に、国王は国民を捨てた王、王妃は、母国中花国にジパングを売り渡そうとしたと国民から認識され、より一層の憎しみを買う結果になったからだ。











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