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夏の出来事  作者: モノクロ◎ココナッツ
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九話


 その後彼女と共に手を繋ぎながら会場である河川敷へと歩みを進めている。

 ……先程から何度かしれっと繋いでいる手を解こうとしているのだが、その度に彼女によってがっしりと手を掴まれて離せない状態となっている。少し汗ばんできた手を拭いたいと思い、「……手、離しませんか?」と彼女に提案してみるものの、その度に彼女はニコリと笑みを浮かべて「ん~?」とはぐらかして笑みを浮かべるのみ。


 殺人的な日差しを受けながら河川敷への道程を歩んでいるのだが、どうも汗が吹き出て止まらない。汗を拭く為に家からハンカチを持ってきたのだが、あまりに汗を吸い過ぎた為か重くなり今にでも絞れそうな程である。


 だが一方で隣を歩いている彼女に目線を向けてみるも、その美麗(びれい)な横顔には一つの(したた)りすら見えない。どうやら彼女は暑さに強い……いや、この温度で平然としているのは少し不自然に感じてしまうのだが、それでも彼女の、人離れした……と言ったら失礼かもしれないが、何だか(ことわり)の外側に位置している様な綺麗さに、ついつい見惚(みと)れて引き込まれてしまう。


 そのじっと見つめていた事がバレたのか彼女は僕を見てクスリと笑いを溢しつつ、「私の顔を見てどうしたの?」と訪ねてくる。「着物着てるけど暑くないんですか?」と尋ねるも、彼女は涼しい顔で「いつも大体着物着てるからもう慣れちゃった」と何事でもない感じで答えを溢した。

 だがその表情は少し嬉しそうでいて、寂しそうでいて……何とも形容のし難い顔色をしていた。


 確かに彼女は腕白(ワンパク)小僧よろしくゲラに近い笑いを零す訳ではないのだが、それでも楽しそうに笑う様は小さな少女の様に無邪気な印象がある。一体どうしたのだろうかと思い、何かあったのかと訪ねようとするも、そんな表情を引っ込めていつも通りの笑みを浮かべて「ねぇねぇ、お祭りって今でも結構混むの?」と、今から伺うであろう河川敷に思いを()せていた。


 彼女は何やら期待の籠もった表情で僕に尋ねてくるのだが、そう尋ねられた所でぶっちゃけると最近の混雑具合に関しては全くと言って良い程わからない。

 何故かと聞かれると、それは……ね? 休日の部活動の帰りにどこかへと寄り道をして遊んで帰る……なんて事が無いのを考えると……ね? わかるだろ? 察しておくれよ。

 ……いや、ここ数日は香菜さんに合う為に寄り道しているので、幾分か引き籠もり気質が改善されたのではないだろうかとちょっぴり思っている。


 とそんな事を一人考えても彼女の問いに応えられる訳ではなく。(むし)ろ日頃の出不精がバレてしまうのでは? と一瞬考えてしまうが、それに対する言い訳を考えるのすら面倒くさくなって「最近は家か部室にしか行かないから、外の事はよくわかんない」と素直に白状した所、楽しそうな笑いを溢した。


 そんな他愛もない会話を交えつつ歩いている内に、会場となる河川敷に到着する。

 河川敷には数多(あまた)の屋台が並んでおり、遊びに来たであろう子供達や家族連れ、自分と同年代位であろう男女の組み合わせであったりと、一体このクソ田舎な街の何処にこんな人々が居たのだろうかと思ってしまう。


 ……いやまぁ、クソ田舎なだけあって都内の様に交通網が発達している訳ではなく。それによって当然ながら移動のメインは車となるので、必然的に外を歩いている人は少なくなる……と言う事なのだろう。


「……今ってこんなに人が居るんだね……」

「多分お盆の時期というのもあって、実家に帰省している人もいるんじゃないんですか?」


 ふと日付を思い出してみると丁度お盆の時期に重なっているので、地元に帰ってきている人々も居るのだろう。そして広大に広がった河原へと降りる階段を並んで降りると、それまで遠巻きに聞こえていた歓声やざわめきが一気に近くなり、いよいよ祭りの雰囲気を感じる。


「……でもこの活気は本当に変わらないね……」

「そうですね……。確かにこの雰囲気だけは変わらないですね」


 河原へと降りて立ち並ぶ屋台の間を歩きつつ、この猥雑(わいざつ)でいて活気の溢れた雰囲気にそう二人して言葉を溢した。

 立ち並ぶ屋台は(まご)う事なき縁日のそれで、綿飴に始まり射的、昔懐かしの500円(くじ)、型抜きや焼きそばなど、ど定番なものが立ち並んでいる上、焼きとうもろこしであったり焼き鳥などであったりと、軽食系も充実している。


 前回訪れたのが何時だったのかは覚えていないのだが、それでもこの雰囲気だけは、全く変わる事なく漂っているのは確かであった。

 そんな変わらぬ雰囲気に懐かしさを感じて少しばかり感傷(かんしょう)に浸っていると、香菜さんがまるで幼い子供の様に(はしゃ)ぎつつ、「ね、屋台回ろう?」と言って僕の手を引いて歩き出す。


 それからというものの、彼女のその行動に驚かされっ放し……いや、具体的に言うのであればその体の何処に入るのかと言う程に買い食いをしている事に驚愕している。

 一緒に屋台を回っていると言う事もあって彼女と同じ物を購入して口にしている訳なのだが、まぁ、食べる量が半端じゃなく多い。


「……所で常磐君。いつまで敬語使ってるつもり?」

「へ?」


 お腹から少しばかりアラートが鳴り響いているのに少し悩んでいると、突如少しばかり不機嫌な表情になった彼女からそう問い質される。

 いや、だって香菜さん、年上じゃん……。なんて思っていると、彼女は後に続けて言葉を溢す。


「……小さい頃はおねーちゃんおねーちゃんって可愛く言ってきたのに……悲しい」

「いやいや、そんな子供の頃を引き合いに出されても……」

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