最終話
「神社? とっくの昔に取り壊されてるよ」
日も沈み、少し遅めとなった夕飯の席にて母に神社の事を尋ねてみるも、そこから返ってきたのは意外な言葉。
……いや、現段階で存在しないのだから間違っている訳ではないのだが。
どうも母曰く、あそこには昔神社があり、結構前に管理する者が居なくなった事もあり取り壊されたのだそうだ。
僕が小さい頃に何度か連れて行ったのだが、その際に何も居ない所を指差して「黒い狐が居るー」と騒ぎ出したので、ここはもう連れて行かない方がいいと思い、それ以降は連れてゆくのを止めたそうだ。
そこで思い出す、香菜さんの『お母さんに抱っこされて来た時かなー。きゃっきゃって笑ってたのをよく覚えてるよ』という言葉。
という事は、最初にあの神社に行ったのは母さんと同伴だったと言う事と、香菜さんが母親と一緒だった事を知っており、母さんは一方で何も居なかったと言っている。
……まさかなと思い、夕飯を黙々と食べていると、母さんがニヤリと笑みを浮かべながら「それにね……」と、言葉を溢した。
「そこにあった神社の神様、人間に化けた姿はとっても美人で、黒髪ロングの大和撫子だったらしいよ?」
僕はその言葉を聞いて、まさか香菜さんは……と一人納得していた。
そんな夏のある日の出来事。嘘の様で現実な、ちょっと不思議な物語。




