二日酔いだな。3(悪酔い編)
悪酔い編です。
見ない方がいいと思いますので、タグは作者名以外外しました。
そして、特に閲覧数が増えもしない時間帯に投稿します。
そんな内容ですが、フィクションです。
私宛に手紙が届きました。
こんな手紙を見たいと思ったことはありませんでした。
しかし、彼からの手紙を見ないわけにはいきません。
なので見ることにしました。
つづられているのは二人の楽しい思い出から始まる文章でした。
ただ、その内容は謝ってばかりの内容で、私は手紙を読みながら「やっぱり」とつぶやいてしまいました。
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君へ。
出会いは仕事場でしたね。
どちらともなく気になり、距離は近くなり、お互いに同じ未来を見ていましたね。
でも、ごめんね。
その更に先を考えると足がすくんでしまいました。
もっと早く手を伸ばせば、触れる時間はもう少しだけ伸びたかもしれませんね。
最初のデートは観光地でしたね。
景色は綺麗で、晴れやかな空に思いを馳せていましたね。
その先にあったのはお互いの未来だったと思います。
でも、ごめんね。
僕が遅刻をしたために不機嫌にしてしまいましたね。
君に渡すプレゼントの包装が間に合いませんでした。
もっと早くに準備を済ませていれば、君を待たせずに済んだかもしれませんね。
そのうち、お互いの相性を確認することになりましたね。
君の意地悪には可愛げもありましたが、理不尽もありましたね。
僕も意地悪をしたことがありましたね。
君は僕と会うことを止め、空いた時間を他の人で埋めましたね。
その時はつぶれる思いになりました。
でも、ごめんね。
君が僕を試していることには気付くことができませんでした。
もっと早く気付くことができていれば、正しい関係が築けたのかもしれませんね。
初めての同棲に心が躍る思いでしたね。
君も一緒に住む場所を選び、要望が叶うまで頑張りましたね。
時には、対応してくれた不動産の方に無理を言って困らせましたね。
僕は君の味方になり、一緒に不動産の方を困らせてましたね。
でも、ごめんね。
実は内緒で菓子折りを持参し、不動産に謝罪に伺いました。
苦い顔をした担当者はそのうち無表情になり、変更になりましたね。
もっと上手く立ち回ることができれば、更に複数の物件を回れたかもしれませんね。
一緒に住んでいると、どうしても喧嘩になることがありましたね。
理由は些細なことでしたね。
言った、言っていないの押し問答をしましたね。
一度だけ録音して聞かせ、僕の正当性を主張したことがありましたね。
君は家出をして、一週間も帰ってこず、連絡が取れなくなりましたね。
でも、ごめんね。
別の人の家に出入りしていることを知っていました。
この時に僕の心が壊れました。
同時に、君を責めることが悪手であることを学びました。
もっと優しくしていれば、君も優しくしてくれていたかもしれませんね。
君が自暴自棄になりましたね。
家にあるものを手当たり次第に投げつけ、一度家から出ると3日程帰ってきませんでしたね。
僕は学んだはずでしたが、君を責めていたのですね。
共有の貯蓄がいくらあるのかを確認してしまいましたね。
後で確認したら5000円だけありましたね。
でも、ごめんね。
君が何にお金を使っているのかは予想がついていました。
その時には僕も自暴自棄になっていました。
だから、別れるための理由を探していました。
もっと考えて話をしていれば、お互いに手を離すことはなかったかもしれませんね。
君が落ち着いて、僕も落ち着いて、お互いにどちらでもなく入籍することになりましたね。
確か保険や確定申告などの関係上、結婚していた方がいいと判断しましたね。
君はその話の最中に、僕の目を決して見ようとしませんでしたね。
でも、ごめんね。
僕は内心嬉しく感じていました。
世間体については特に考えず、戦友のような絆を感じたことを覚えています。
何より、君がついに腰を下ろしてくれるのだと期待してました。
もっと早くに手続きを進めていれば、貯蓄も残り、先に進めていたかもしれませんね。
友人を集めて、小さいながらも披露宴を行いましたね。
白いドレスを着た君は綺麗でしたね。
僕にタキシード姿は似合いませんでしたね。
写真を撮り、笑顔の友人を見るのは久しぶりでしたね。
いい思い出になりましたね。
でも、ごめんね。
内心、迷いもありました。
このまま結婚しても大丈夫なのか、心配でした。
君の口から、ご祝儀という言葉が出るたびに心臓が痛くなったことを覚えてます。
もっと友人を呼ぶことができれば、君に幸福を呼び込むことができたかもしれませんね。
披露宴の後、君は焦っていましたね。
毎日、イライラを募らせ、僕に対して給料上昇を叫びましたね。
理由を聞いても、この先の未来でお金が必要だとしかいいませんでしたね。
でも、ごめんね。
昇進することになりましたが、給料は思ったほど上がりませんでした。
結果、君は大暴れし、僕の部屋にあるものを片っ端から売り払いました。
洗濯するのももったいないと、消臭剤をかけただけのシャツを渡され、風呂は残り湯で入りました。
もっと稼ぐことができれば、君の足枷にならずに済んだかもしれませんね。
結婚から3年目で、急に君は綺麗になりましたね。
僕はそれに気づいても言葉を言えずにいましたね。
君は友達に会いに行く回数を増やしましたね。
僕は仕事に打ち込むことが更に多くなりましたね。
でも、ごめんね。
友達がどんな人かを知っていました。
知った上で、逃げるためにも仕事に打ち込みました。
もっと意見を交わしていれば、お互いに接触を躱すことはなかったかもしれませんね。
僕に対し、久しぶりに友人から連絡が来ましたね。
嬉しそうにしている僕を見て、君は睨みつけてきましたね。
自宅に招くと君は不機嫌になり、部屋から出ることはありませんでしたね。
友人が帰った後、縁を切る様に言いましたね。
僕と友人が話している内容から、如何に友人が悪い人かを話しましたね。
でも、ごめんね。
友人からも離婚するように勧められていました。
両者から縁を切ることを迫られ、僕は返事をせずに逃げてしまいました。
もっと逃げずに立ち向かっていれば、違う結末に向かっていたかもしれませんね。
僕の父さんが亡くなりましたね。
僕はふさぎ込んでしまい、今までできていたことができなくなりましたね。
実家からは葬式に出るように言われましたね。
しかし、僕は一人で行きましたね。
式ではみっともなく泣いてしまいましたね。
でも、ごめんね。
数少ない親戚が君のことを悪く言うことを、僕は訂正できませんでした。
なぜ結婚したのかの問いに、成り行きでとしか回答できませんでした。
帰ってきたばかりの僕に、遺産相続の話をしたことを僕は忘れないかもしれません。
もっと強い心を持っていれば、僕の精神は持ち直していたかもしれませんね。
そのころには僕の荷物は少なくなっていましたね。
僕専用の部屋はなくなり、父さんの大切にしていた楽器がいつの間にかなくなってましたね。
替わりに見たこともないバッグがありましたね。
頑張った自分へのご褒美だと言ってましたね。
でも、ごめんね。
そのころには、君のそばに僕はもういませんでした。
僕の少ない荷物を移動していたのですが、君に気づいてもらえませんでした。
僕専用の引き出しの中身は既に空っぽでした。
その状態で3日程経ってました。
もっと早く行動に移していれば、鬱にならずにすんでいたかもしれませんね。
僕が、君と一緒に暮らしていた家からいなくなりましたね。
僕の実家に連絡をして、母さんから文句を言われていましたね。
僕の携帯に君からのメールが届かなくなると、会社に訪問しましたね。
僕の上司が入り口で止めてくれましたね。
でも、ごめんね。
その時には辞表を出していて、別の土地に住んでいました。
君には住所も明かさず、上司にも協力してもらい、僕はついに一人になりました。
共有財産も全くない状態だったので、退職金を使用して、そのまま1年以上何もできませんでした。
もっと早く周りに頼んでいれば、未来では楽しみもあったかもしれませんね。
今僕はすべてを失いました。
母さんも亡くなり、財産は無く、未来もありません。
父さんとの思い出の品もなく、仕事もなく、僕には時間も無くなりました。
でも、ごめんね。
僕は君のことが好きでした。
だから、君との思い出を持って行きます。
最後の、僕のわがままです。
いつか、許してね。さようなら。
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彼は私と一緒にいる中で、改善しようと努力しました。
しかし、私が彼に求めていたのは改善ではなく、サンドバッグだったようでした。
読めば読むほど私の価値が落ちていくようで、悲しい気持ちになりました。
浅はかで、愚かで、自由で、我儘な私に向けられた彼のわがままを、私は許さないのでしょう。
こんな手紙を書いて寄越した彼のことを憎んでしまうのでしょう。
ぽっかりと空いた心の穴は、奪われたと考えるのでしょう。
そして、私はこの手紙の封を元に戻し、バッグに入れました。
その手紙だけが入ったバッグを防波堤において去ります。
涙一つ流さず、私の家族の元へ帰るのです。
さようなら。
今回の投稿は特にどうなってほしいとか思ってなく、一度没にしたものになります。
こんなものを読んでいただきありがとうございます。
&お疲れさまでした。