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マイ・ピュア・レディ2

 「ね、知ってる、カヨちゃん。緑川直樹先輩って」

突然訊かれて、ご飯を喉に詰めそうになりながら、首を振った。

「知らないの?未来の甲子園の星。あの旭学園、のヒーロー」

「…知らない」

「バカね。このくらいは知ってて当たり前よ。いい、緑川直樹さんって、この学校の卒業生なのよ」

「ふーん」

卒業生が何の関係があるんだろうと思いながら加代子は頷いた。

「もう、すごい選手で、絶対甲子園に行くっていう噂なんだから」

「ふーん、そう」

「あぁ、残念だなぁ。一年早かったら、この学校で出会えたのに」

「んー、残念ね」

お弁当に気を取られながら加代子は答えた。

「でもね、知ってる?今もこの学校にカッコイイ人がいるのよ」

「ん?」

「野・球・部」

「そうなの?」

「そう。それでね、カヨちゃん、今度の日曜、クラブないじゃない?一緒に応援行かない?」

「ん、いいよ」

 簡単な受け答えだった。そして、日曜、ふらふらと学校に訪れた加代子は、いつの間にか野球部の試合に熱中していた。実のところ野球のルールは知らなかった。ただ、大きな打球を飛ばした五十嵐の、そのグラウンドを駆け抜ける姿に魅せられてしまった。

 練習中もテニスコートの横の野球部グラウンドにいつも気持ちは向けられていた。一年生の練習はほとんど何もすることがなかった。基礎練習が終わると、上級生の練習を見て、声を上げているのがほとんどだった。そんな時、隣のグラウンドから快音が聞こえると、五十嵐先輩ではないかと思いを巡らせた。

 一度、美智代に言ったことがある。

「あんたのせいだよ、こんなことになったのは」

美智代は強く言い返してきた。

「何言ってるのよ。あたしが先に目をつけたのに、横取りする気?」

もちろん二人とも本気で言ってるわけではなかった。五十嵐は、とても遠い存在のように思えていた。ブラウン管の中のアイドルのように。二人とも時間があるときは、野球部のグラウンドを見に行った。練習試合があれば、できるだけ見に行くようになった。ただ、加代子の方が少し熱が高かった。遂に、クラブをサボって覗きに行ってしまった。それはそれで楽しかった。でも……。


 部室の鍵を掛けると、一人、閑散とした校内を通り抜けて帰途に着いた。今日は楽しかった。でも……。月曜のクラブが怖かった。



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