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マイ・ピュア・レディ12


 慌ただしくノックもせずに扉を開けると、驚いたように老人が加代子を見つめた。

「何だい?」

「園長先生ですか?」

「あぁ、そうだが」

「あたし、あたし、一年の三島といいます」

「あぁ。どうしたんだい、いきなり」

「あたし、あたし…、おかしいと思います」

「何が?」

「この学校みたいに、成績順にクラス分けするなんて」

「何だい、いきなり」

「おかしいと思います」

「ふぅん。まぁ、そこに座りなさい」

加代子を促し、腰掛けるのを認めると園長はゆっくりと話し出した。

「この学校は、昔はかなりの進学校で、一年から三年まで、全部成績順のクラス分けをしてきたんだ。そのおかげで、かなりの名門校として名前を知られるようになった。何より、成績順にクラス分けしておくことによって、授業の進行具合を調節できるのが一番のメリットだったんだ。適切な授業レベルに調整できるし、補習もやりやすかった。それと、進学指導もやりやすかった。適切な進路指導によって、進学率もアップしたんだ。まぁ、民主的な意見もあって、今は進学が差し迫っている三年だけが成績順のクラス分けになってるんだが」

「おかしいと思います!」

加代子は俯いたまま話を遮るように言った。

「おかしいです。みんな、なんて言ってるのか、先生、知ってますか?階級制だって、カースト制だって、言ってます。クラスが違うと身分が違うって言ってます。そんなのおかしい。成績が悪い人は、…悪くて悪い人もいるかもしれないけど…、頑張っても良くならない人もいると思います。…あたしみたいに。……なのに、まるで、その人の全部が悪いかのように、見せしめみたいに、クラス分けされるなんて、おかしい。クラスで人格が評価されるみたいなのは、おかしい。絶対、おかしい。あたし…、こんな学校なら…三年生なんてなりたくない!」

 加代子の叫びは園長室に響いて、そして静まった。園長はじっと加代子を見据えたまま、少し頷いて、そして話し出した。

「まぁまぁ、慌てずに。落ちついて。ん、ミシマさんだったかな…。まぁ、君のいいたいことはわかる。実を言うと、この件については、私も思うところがある」

「…え?」

「実は、三年生で、少し事件があって、その事件の理由が、今君の言ったクラス分けのことだったんだ」

「え?」

「ある生徒が、…ま、名前は言えないが、Aクラスの生徒が別のクラスの生徒を、クラスが違うということを理由として侮辱したと言うんだ。勿論、本人はそんなことを言った覚えはないということだが、そう誤解されるようなことは、言ったようなんだ…」

「…はい」

「非常に、残念なことだ」

「は?」

「我々は、教育者であり、それは勉強だけではなく、生活習慣まで責任を持たねばならない」

「…はい」

「それが、勉強を優先してしまい、それが為に、そんな事件が起こるなんてことは、残念で仕方がない」

「…はい」

「それに、今の君の言葉だ。三年生になりたくない、なんていうのは、我々として恥ずかしい」

「…はぁ」

「もう一度、見直す機会を貰えないだろうか?」

「…はい?」

「クラス分け。成績順のクラス分けのことだが、廃止の方向で、考えさせて貰えないだろうか?」

「…はい…」

「一年生が、まだ一学期も終わらないうちから、三年生になりたくないなんて言うようでは、大問題だからな」

「はい」

「いい返事だ。もう一度、名前を言ってくれないか」

「三島、一年B組の三島加代子です」

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