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3、「かまど係」の仕事
しかし、美しい女、あるいは「美しくあれ」と周囲に願われながら育ってきた女というのは、そのくらいの努力では隠せないのです。
正しい姿勢、しぐさ、言葉づかいなどが、まわりの者とは全然違っておりました。
お姫様も、なるべくはすっぱなものの言い方をしてみるとか、物を投げるように乱暴においてみるとか、動きを速くするよう気をつけてみたのですが、こちらはあまりうまくいきませんでした。
まわりの人たちは、もちろんお姫様が、滅んでしまったどこかの国のお姫様かなにかであることに、うすうす気がついていました。その当時はそんな人が、結構いろんなところにいたのです。
皆はお姫様が毎日、自分をみにくくするために一生懸命がんばっているのを横目で見ながら、「かまど係」の仕事をきびしく仕込みました。そして、時々、中途半端な男がお姫様によってこようとすると、それを追いはらったりしておりました。