活路を見いだせ!
…圧倒的な力だ!
同じ部にこんな幻術使いのメンバーがいたなんて。
「咲希さんは"発声"型のボウラ―。幻術使いの相手とは相性が悪いですわね。」
「じゃ、じゃあ咲希ちゃんはどうすればいいんだにぃ…!」
「それは…あたくしも分かりませんわ。(さぁ、咲希さん。あなたの力を見せて頂戴。)」
こうする間にも、彼女の分身はひとり、またひとりと増えていく。
次第に数が増え、そして10人の分身が一斉に語り掛ける。
「ブトウサン…ドウシタンデスカ。」「アナタノチカラ…コノテイドダッタンデスネ…。」「コレジャ…テメェハイユウショウデキマセンヨ。」「ツギモガーターデスカ…ブトウサン…。」「ラムネガシ…オイシイデスヨ。」
エリナの精神攻撃は次々とあたしの脳内に語り掛けてくる。
いったいどうすれば…!
ゲームは既に2打目は後攻に突入していた。
後攻であるエリナは10人の質量のある分身を使い、一斉にボールを投球した。
「ソレジャア…イキマスヨ…『夢幻存在』…!」
ゴトゴトゴトゴトゴトゴト…と分身から一斉に放たれたボールは2本、3本と次々と倒していき、ボールがすべて暗闇に消えるころにはもうピンは残っていなかった。ストライクだ。
「オヤ…ドウヤラストライクミタイデスネ…。」
「そ、そんな。ストライクだなんて…!」
エリナは口をもごもごさせながら余裕を見せている。…スコアボードを見あげた。
あたしの点数は「10」、エリナは「30」だ。それにエリナはストライクを取っているので、次の点数は2倍になる。
「ツギハ…ブトウサンノバンデスヨ…。」
「あ、ああ。そうだったわ。」
焦っているあたしを一切気にしていないようだ。
勝機、何か勝機はないの!?
「お~い、咲希~! ボウリングやってっか~!」
ポテトチップスなどのお菓子を片手に明るい声を出して部室に入ってきたのは、あたしの幼馴染の諸星勇利だった。
「まぁ…、勇利君も試合見学かしら。」
「ま、まぁそんなとこっすね~! お、なんだよ咲希負けてんじゃ~ん!」
「うるさいわね…また人食いピラニアの池に落とすわよ。」
こんな状況下で勇利が来るとは、まさに不幸だ。
これ以上部室に勇利がいるとめんどくさいことになる。
どう排除しようか考えているその時だった。
「またまたぁ、そういうなって咲希!…いてっ!」
こちらに近づいてくる勇利は、あたしのくすんだ色のカバンに入ったマイボールにつまずき転倒した。
手に持っていたポテチは宙を舞い、やがて部室中にばらまかれた。
「まぁ!何をしてらっしゃるの! 今すぐ掃除機で片付けなさい!」
「す、すいません! 今片づけますッ!」
どこにいても彼は疫病神のようだ。
勇利は掃除機をロッカーから取り出し、床に散らばったお菓子を掃除し始めた。
「トホホ…貴重な栄養源が…。」
「なにいってんのよ、早く片付けなさいブサイク…ん?」
…! そうか!
私は一つの妙案を思いついた。一か八かのチャンス、生かすしかない。
「ちょっと勇利、アンタ耳貸しなさいよ。」
「いってて、耳引っ張るなって。」
「アンタにやってもらいたいことがあるのよ。コショコショ…」
あたしは勇利に作戦を伝えた。
「えっええ、俺がやるのかよ!? 殺されちまうぜ!?」
「今死ぬのとどっちがいいのよ。あたしそういうの厳しいから。」
勇利は泣く泣く納得したようだ。
掃除機をかけている勇利はわざとらしく手を滑らし、エリナへと飛ばした。
「あっやべっ手が滑った!!」
射出された掃除機はエリナのもっているラムネ菓子めがけ一直線に飛び、そして粉々にした。
その粉々になったラムネ菓子はみるみる掃除機に吸い込まれていく。
「ア…。アタシノ…ラムネガシ…。」
エリナがラムネ菓子を手放した瞬間だった。
突如としてエリナの分身たちが苦しみ始めた。
「ン゛オ゛ォ゛ォ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!゛!゛!゛!゛!゛」
「な、なんですの!? いったい何が起こりましたの!?」
「エ、エリナの分身が次々消えてくにぃ!?」
古龍のような叫び声をあげ、エリナの分身達がサラサラ…と風化していく。
そう、それは掃除機に吸い込まれたラムネ菓子のように…。
1体、また1体と風化していく分身たち、やがてそれはエリナ本体だけを残して跡形もなく消えていった。
「やっぱり、あたしの読みどうりね。」
「咲希さん…!?あなた一体何を考えてらっしゃったの!?」
あたしはサラサラになった分身たちを手ですくい、部員たちに説明した。
「彼女の分身たちの動力源、それはエリナ本体のブドウ糖だったのよ。つまり『ラムネ菓子』が供給源ってこと」
「す、すごい!つまりエネルギーの供給源である『ラムネ菓子』を失ったエリナは分身を維持できなくなるってことか!」
勇利も感心している。
「なるほど…。その柔軟な発想ができるとは…流石ですわね。(やはりわたくしの認めた真のプロボウラーね。)」
「咲希ちゃんすごいにぃ!」
「…ワタシノゲンジュツヲミヤブルトハ…デモドウヤッテミヌイタンデスカ。」
「それは勇利の持っているお菓子がヒントになったこと、そしてその結論に至った理由はいくつかあるけど、そのうちの一つはあたしの"勘"ね。だから勇利を利用したの。」
「フフフ…サスガブトウサンデスネ…。サァ、ゲームヲツヅケマショウ…。」
サンキュー、勇利。
さぁ、反撃開始よ!!!