闇のゲーム!?
~前回までのあらすじ~
あたし、武闘咲希!
テメェ杯会場のトマ・コメウスまで来たら
カネコ・メシ=クイスギーがトーナメントを書き換えて決勝にしちゃった!?
でもあたしたちには策があるんだから!
(咲希 ―Saku―と策を掛ける激ウマギャグ)
「どうしたの? 早く始めないの??」
カネコ・メシ=クイスギーは勝てる確信があるのか、ニヤニヤ笑いながら大玉転がしのボールをゴロゴロと準備している。
だけど、これは想定内よ。あたしたちは一斉にボールをベトナミアンスタイルで構えた。
あたしたちにはこの日の為の"策"がある…!
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______遡ること大会前日。
「えぇ~!? カネコ・メシ=クイスギーが網走刑務所から脱走~!?」
あたしたちは部長の言葉で驚愕していた。
「ジュッキー・メシイコ杯での不正行為の後、カネコ・メシ=クイスギーは監獄に囚われていたはずじゃ…。」
「じゃあ昨日大河原TVサービスのニュースでやってた話って、ほんとだったんかにぃ~!?」
「えぇ、夢美財閥の諜報部隊からの情報ですわ、間違いなくてよ。」
「ソレジャア、タイカイニデルカノウセイモアルッテコトデスカ…」
「流石エリナさん、鋭いですわね。」
部長はリアルゴールドを優雅にすすった後、静かにビデオテープをDADEYAプロジェクターにセットした。
「これがその時の映像でしてよ。実はまだわたくしも見ておりませんの。」
「な、なんだか緊張するにぃ…」
リモコンで再生ボタンを押すと、画面にカネコ・メシ=クイスギーが紐でグルグル巻きになっている映像が映り、そしてノイズとともに音声が流れた。
ザザザ...
「あれ、なんか抜け穴空いてるじゃんラッキ~。 中華と焼肉食べに行こっ。」
サーモンピンクの囚人服を着て草原をスキップするカネコ・メシ=クイスギーが映っていた。
そして映像は乱れ、何も見えなくなった。
「い、いったい何ですのこの映像は…。」
「ナンカコワイデスネコレ…。」
「じゃ、じゃあカネコ・メシ=クイスギーはあたしたちの出場するテメェ杯会場に向かってるってこと!?」
あんまり理解してなさそうな恨エリナがなぜか静かにうなずいた。
「絶対またズルしてくるやつだにぃ…。」
沈黙が流れる。カネコ・メシ=クイスギーが参加すれば優勝はおろか生き残ることすら絶望的だ。
そんな中、天啓があたしの中に流れる。
「ストライク!!!」
「あら、何か思いつきましたの? 武闘さん?」
「先に卑怯な手を使えばいいんじゃないの?」
「その手があったにぃ!」
「ブトウサン…テンサイジャナイデスカ…」
「(流石わたくしの認めた真の決闘者ですわね)」
「キシシシシシシ…」
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「行くわよ!みんな! アタシノセカイッ!」
「みんな!武闘さんに続きますわよ!」
それはあたしたち十柱戯部からの先制攻撃だった。
夢美はなんか歌が聞こえるボールをパワーボムし、るいなは騎士Aにスコアボードを改ざんさせないよう命令している。
「ボールナゲマスヨ…」「ゲンジュツジャナイデスヨ…」「ブトウサン…」
「カネメシユルサナイ…」「ボソボソボソ…」「ゲンジュツデス…」
とどめは恨エリナの必殺技、幸の薄い女たちがレーンにボールを一斉に投げた。
………だがあたしたちの放った球はレーンの暗闇へと消えていったのだった。
「な、何が起こったの…!?」
混乱するあたしたちの中で一番最初に口を開いたのは部長の夢美だった。
「…無い!! 無いですわ!!」
「え?」
「ボウリングピンが無いですわ!!!!!」
あたしたちのボールが虚空へと消えた理由、それはレーンにあるはずのボウリングピンが無くなっていたのだった。
「おれがぜんぶ回収しちゃったよ~」
そういうとカネコ・メシ=クイスギーは回収したボウリングピンでジャグリングし始めた。
「なん…ですって…?」
「みんな!スコアボードを見るにぃ!」
るいなが指をさす先にあったのは衝撃のスコアだった。
ーーースコアボードーーー
武闘 咲 スコア:1
カネコ・メシ=クイスギー スコア:99999999999999999999テラバイト
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「得点差でかくない???」
「で、でもスコアボードはるいなの騎士Aが守ってたはずじゃ...!?」
「新しいスコアボード...苫小牧から持ってきちゃったぁw」
「…!? ストライク!」
あたしたちは挙手しながら主審のオガー・ホラナユッタロに訴えかける。
「スコアボードにちゃんと書いてるだろ!! 武闘!! ちゃんと確認せれ!!」
「エェ…」
「それともなんだ...お前らは俺の友達か?」
「そうだぞおまえらー。オガー主審困らせるなよー。 何かいつもこいつらがすみませんねーオガー主審…。」
ワィノウ君の履歴書をクシャクシャにしながらオガー主審を援護するのは、ウェダ・キンドルヨミヨミ副主審だった。
履歴書をクシャクシャにして面接を書類落ちさせる現代の悪魔だ。
「ということで勝者はカネコ・メシ=クイスギーということで...」
ウェダ・キンドルヨミヨミが口を開いたその瞬間だった。
「お~い武闘咲希~ ゴンジャラで遊ぼうぜ~」
※ ゴンジャラとは18世紀フランスでボウリングと共に行われていたと言われる神聖な麻雀です。
現在も苫小牧に当時の壁画が残っています。
「勇利!?」
そういってゴンジャラ片手に勇利が現れた。
試合中に何してんねんコイツ。
いや...その手があったわ!!
「勇利、あんたそれよこしなさいよ今すぐ。」
「え、やだよ俺のだしそもそもあげるなんて一言も言ってn」
静かに頸動脈を毒手で貫き、あたしはゴンジャラを奪い取った。
勇利は動かなくなっていた。
♫~BGM【青春オカン】
「あたしのライフポイントは1、あたしのバトルフェイズはまだ終了してないわ。」
あたしはゴンジャラの盤面を広げた。
覚悟はできている。
「あたしはもうどうなってもいい...せめて...カネコ・メシ=クイスギーだけは!」
「ブトウサン...マサカ...」
「闇のゲームに飲まれてはダメだにぃ!! 人間ではなくなってしまうにぃ!!」
「行きなさい武闘さん! 十柱戯部のためじゃない、あなた自身の願いのために!!」
一対一の対面でカネコ・メシ=クイスギーに勝負を申し込む。
この状況で勝負をかけるのは一か八かだった。
「は? おれが勝ってるのに今のおかしくない?」
確かに正論だった。
だが、幸の薄い女達がカネコ・メシ=クイスギーに追い打ちをかける。
「マタニゲルンデスカ...」「マケルノガコワインデスネ...」「ボソボソボソ...」
カネコ・メシ=クイスギーは頭をボリボリ掻きながら拗ね始めた。
「イィヤアやればいいんでしょやれば。なんかおればっか狙ってくる。」
「最初からそう言いなさいよボケナス。 あたしそういうの厳しいから。」
あたしたちは席に着くと自動卓がデヤデヤと牌を配り始めたのだった。
そして観客の一人が静かに、音も無くつぶやいた。
「消えないといいねぇー。」
次回、咲希 ―Saku― 最終回。
君は時の涙を見る。