大会当日、一触即発!?
大会当日の日。テメェ杯会場のトマ・コメウスまであたしたち十柱部は来ていた。
会場には大勢の人だかりができており、テシガワラTVサービス専門学校のオーガーラ・ケインやフェアリー養成所のヤマグフィト・ユーイチも来ている。
すごい、前年度キグウの世代の全員がほぼ出席している…!
今までやってきた練習のことを考えれば優勝は間違いない。
…たが、あたしは3日前のあの出来事が忘れられなかった。。
「ついにこの日が来ましたわね。 廃部やアノマスさんのことも不安ですけども、私たちなら優勝も間違いありませんわ。」
「ソウデスヨ。コノサイキョウノ4ニンヲ…トッパスルコトナンテ…デキマセンカラ。」
「そうだにぃ! 今日はみんな頑張るにぃ!」
「う、うん! みんな、今日は頑張ろう!」
そんな部員たちを見てあたしは少しほっとした。
あたしも、負けてられない。
「さぁ、そろそろ開会式が始まりますわよ!」
そう夢美部長が告げると、審判らしき人物が登壇するのが見えた。
あれは確か…オガー・ホラナユッタロ、だったわね。
サングラスを光らせ、会場のスピーカーにつながってるマイクを持つとオガー審判は口を開いた。
「これから、テメェ杯の開会式を始める。 前年度優勝者、登壇せれ!」
…そういえば前年度優勝者は誰なんだろう。
この頃カネコ・メシ=クイスギーはジュッキー・メシイコ杯に出ていたはずだし、一体だれが?
だが、その疑問は解決することはなかった。
何分経とうと、誰も登壇しないのである。
「…登壇せれといったはずだ!! ちゃんとせれ!!」
オガー審判が急かすも全く動く気配がない。
だが、その沈黙を破ったのは見覚えのある人物だった。
「え? 誰もいないの? じゃあ登壇しちゃおっと。 …これデカクナイ?」トテトテトテ
「なんだお前は。一体誰なんだ。 …!?お前はまさか!?」
「自己紹介? カネコ・メシ=クイスギーって言います。みんな知ってるでしょ?ウェヒヒ」
会場がざわつく。前年度のジュッキーメシイコ杯で逮捕されていたはずなのに何故!?
「咲希さん、この大会、何かおかしいですわよ。」
「はい、あたしもそんな気がします。」
「前年度逮捕されてたのにまた大会にいるなんて、ずるいにぃ!」
「ホシャク、サレタンデスカネ。」
いろいろな憶測が飛び交ってやまない。
しかし、あたしたちを置いて開会式は進んでいく。
「じゃあもうお前でいい。 選手宣誓せれ!!」
「選手宣誓ってなに?」
「もういい!! 開会式は終わりだ!!」
オガー審判は期限を損ねてしまったのか、マイクを置くと会場の隅へと消えて行ってしまった。
ただポツンとカネコ・メシ=クイスギーを残して。
――――――――――― 30分後。
各チームにトーナメント表が配られた。
一試合目は…あのフェアリークラウン専門学校の大川さんだ。
あたしと同じ”発声型”のプロボウラーで通称「Faker」と呼ばれている。
対戦するのはそう、あたし、武闘咲希だった。
「はぁ、やっぱりあたし緊張するわ…。」
「咲希さん、肩の力を抜いていつも通りプレイすれば、余裕ですわよ。」
「そうだにぃ~。 初戦から大会相手はあの大川さんだけど、咲希なら余裕で勝てるにぃ!」
「ワタシハ…カテルッテシンジテマス…。」
チガウデショ、チガウデショ、と投球の練習をしているのが隣のレーンで聞こえてくる。
奴の金切り声を聞くだけでMPが下がると聞いたわ。恐ろしい子。
あたしも投球の練習を行うことにした。
相手が”発声型”ならなおさら、負けられない。
アタシノセカイッ!アタシノセカイッ!
チガウデショ、チガウデショ
二人の発声は豊かなハーモニーを響かせおり、
そう、これは例えるなら。『不滅への輪舞曲』ってとこかしら。
「…なんか楽しそうだね!」
突如話しかけてくる人影が背後にいた。
振り向くと、そこにはあのカネコ・メシ=クイスギーがいた。
「なっ!! いつの間にッ!」
「あれ?気付かなかったの? まぁいいや!1戦目お互い頑張ろうね!」
そういうとカネコ・メシ=クイスギーはあたしたちに配られたトーナメント表をもぎ取った。
「なんかこれうちだけ貰えなかったんだよねぇ、あれ、『カネコ・メシ=クイスギー参加資格無し』…?」
「あなた前年度やらかしてるのですわよ、当然ですわ。」
夢美部長もすかさずサポートに入る。
カネコ・メシ=クイスギーは一切その発言を気にしていないようで、突如として髪をバリバリかき始めた。
「いやぁあ! DA☆KA☆RAそういうのおっかしいだろって!!」
どうやら参加資格なし、というのが気にくわなかったようだ。
カネコ・メシ=クイスギーは突如として閃いたような顔をして、ポケットから黒マジックペンを取り出し、会場のホワイトボードへ向かっていった。
「出れないなら書き換えればいいじゃん!そもそもこれ間違ってんじゃね?」
「え?」
すると、カネコ・メシ=クイスギーはホワイトボードをぐちゃぐちゃにし、
トーナメント票を書き換えてしまった。
「めんどくさいからいきなり決勝戦にしちゃお。」
「え? い、一体何をやっているの? こんなこと、審判に通用するはずが…。」
私はハッとした。そうだ、ジュッキーメシイコ杯ではオガー審判だった。
ま、まさか。
「ナミダポロポロ…」
「まさかですわ! オガー審判ポロポロですわ!!」
「し、審判!! トーナメント表が書き換えられましたにぃ! ちゃんと見てくださいにぃ!」
「いいや、トーナメント表がこう書かれてるって事はこれが正しいってことだ。」
「エ…ギャクニソレデイインデスカ…。」
何を言ってるんだこの人。ダメダァ。
「というわけで、決勝戦、カネコ・メシ=クイスギーと武闘咲希の戦いを始める。 両者前へ出て握手せれ!!」
「い、いや私の試合デショ。武闘咲希は私と戦うんデショ」
「あぁ? 大川何を言ってる、ホワイトボードのトーナメント表には決勝戦って書いてるだろ!! 初歩的なことくらいちゃんと確認せれ!!」トーナメント表クシャッ
「そんな! 今までの努力の成果が無駄だったデシュか?…キョエェェェェェェエエエッッッ!!!」
ニタニタと笑うカネコ・メシ=クイスギーが登壇する。
だが、これは想定内だった。あたしは部長に話しかける。
「夢実部長、アレをやるわ。」
「アレってまさか、アレをやるんですの!?」
「ブトウサン、ワカリマシタ。ヤリマスヨ…アレヲ…。」
「全力でサポートするにぃ!」
そう、あたしたちはこういう時のためにアノ作戦を考えていたのだった…。