表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咲希 ―Saku―  作者: エンシェント守岡
10/11

大会当日、一触即発!?

 大会当日の日。テメェ杯会場のトマ・コメウスまであたしたち十柱部は来ていた。

 会場には大勢の人だかりができており、テシガワラTVサービス専門学校のオーガーラ・ケインやフェアリー養成所のヤマグフィト・ユーイチも来ている。

 すごい、前年度キグウの世代の全員がほぼ出席している…!


 今までやってきた練習のことを考えれば優勝は間違いない。

 …たが、あたしは3日前のあの出来事が忘れられなかった。。


「ついにこの日が来ましたわね。 廃部やアノマスさんのことも不安ですけども、私たちなら優勝も間違いありませんわ。」

「ソウデスヨ。コノサイキョウノ4ニンヲ…トッパスルコトナンテ…デキマセンカラ。」

「そうだにぃ! 今日はみんな頑張るにぃ!」

「う、うん! みんな、今日は頑張ろう!」


 そんな部員たちを見てあたしは少しほっとした。

 あたしも、負けてられない。


「さぁ、そろそろ開会式が始まりますわよ!」


 そう夢美部長が告げると、審判らしき人物が登壇するのが見えた。

 あれは確か…オガー・ホラナユッタロ、だったわね。


 サングラスを光らせ、会場のスピーカーにつながってるマイクを持つとオガー審判は口を開いた。


「これから、テメェ杯の開会式を始める。 前年度優勝者、登壇せれ!」


 …そういえば前年度優勝者は誰なんだろう。

 この頃カネコ・メシ=クイスギーはジュッキー・メシイコ杯に出ていたはずだし、一体だれが?


 だが、その疑問は解決することはなかった。

 何分経とうと、誰も登壇しないのである。


「…登壇せれといったはずだ!! ちゃんとせれ!!」


 オガー審判が急かすも全く動く気配がない。

 だが、その沈黙を破ったのは見覚えのある人物だった。


「え? 誰もいないの? じゃあ登壇しちゃおっと。 …これデカクナイ?」トテトテトテ

「なんだお前は。一体誰なんだ。 …!?お前はまさか!?」

「自己紹介? カネコ・メシ=クイスギーって言います。みんな知ってるでしょ?ウェヒヒ」


 会場がざわつく。前年度のジュッキーメシイコ杯で逮捕されていたはずなのに何故!?


「咲希さん、この大会、何かおかしいですわよ。」

「はい、あたしもそんな気がします。」

「前年度逮捕されてたのにまた大会にいるなんて、ずるいにぃ!」

「ホシャク、サレタンデスカネ。」


 いろいろな憶測が飛び交ってやまない。

 しかし、あたしたちを置いて開会式は進んでいく。


「じゃあもうお前でいい。 選手宣誓せれ!!」

「選手宣誓ってなに?」

「もういい!! 開会式は終わりだ!!」


 オガー審判は期限を損ねてしまったのか、マイクを置くと会場の隅へと消えて行ってしまった。

 ただポツンとカネコ・メシ=クイスギーを残して。





――――――――――― 30分後。

 各チームにトーナメント表が配られた。


 一試合目は…あのフェアリークラウン専門学校の大川さんだ。

 あたしと同じ”発声型”のプロボウラーで通称「Faker」と呼ばれている。

 対戦するのはそう、あたし、武闘咲希だった。


「はぁ、やっぱりあたし緊張するわ…。」

「咲希さん、肩の力を抜いていつも通りプレイすれば、余裕ですわよ。」

「そうだにぃ~。 初戦から大会相手はあの大川さんだけど、咲希なら余裕で勝てるにぃ!」

「ワタシハ…カテルッテシンジテマス…。」


 チガウデショ、チガウデショ、と投球の練習をしているのが隣のレーンで聞こえてくる。

 奴の金切り声を聞くだけでMPが下がると聞いたわ。恐ろしい子。


 あたしも投球の練習を行うことにした。

 相手が”発声型”ならなおさら、負けられない。


 アタシノセカイッ!アタシノセカイッ!

 チガウデショ、チガウデショ


 二人の発声は豊かなハーモニーを響かせおり、

 そう、これは例えるなら。『不滅への輪舞曲ロンド』ってとこかしら。


「…なんか楽しそうだね!」


 突如話しかけてくる人影が背後にいた。

 振り向くと、そこにはあのカネコ・メシ=クイスギーがいた。


「なっ!! いつの間にッ!」

「あれ?気付かなかったの? まぁいいや!1戦目お互い頑張ろうね!」


 そういうとカネコ・メシ=クイスギーはあたしたちに配られたトーナメント表をもぎ取った。


「なんかこれうちだけ貰えなかったんだよねぇ、あれ、『カネコ・メシ=クイスギー参加資格無し』…?」 

「あなた前年度やらかしてるのですわよ、当然ですわ。」


 夢美部長もすかさずサポートに入る。

 カネコ・メシ=クイスギーは一切その発言を気にしていないようで、突如として髪をバリバリかき始めた。


「いやぁあ! DA☆KA☆RAそういうのおっかしいだろって!!」


 どうやら参加資格なし、というのが気にくわなかったようだ。

 カネコ・メシ=クイスギーは突如として閃いたような顔をして、ポケットから黒マジックペンを取り出し、会場のホワイトボードへ向かっていった。


「出れないなら書き換えればいいじゃん!そもそもこれ間違ってんじゃね?」

「え?」


 すると、カネコ・メシ=クイスギーはホワイトボードをぐちゃぐちゃにし、

 トーナメント票を書き換えてしまった。














挿絵(By みてみん)










「めんどくさいからいきなり決勝戦にしちゃお。」

「え? い、一体何をやっているの? こんなこと、審判に通用するはずが…。」


 私はハッとした。そうだ、ジュッキーメシイコ杯ではオガー審判だった。

 ま、まさか。


「ナミダポロポロ…」

「まさかですわ! オガー審判ポロポロですわ!!」

「し、審判!! トーナメント表が書き換えられましたにぃ! ちゃんと見てくださいにぃ!」

「いいや、トーナメント表がこう書かれてるって事はこれが正しいってことだ。」

「エ…ギャクニソレデイインデスカ…。」


 何を言ってるんだこの人。ダメダァ。


「というわけで、決勝戦、カネコ・メシ=クイスギーと武闘咲希の戦いを始める。 両者前へ出て握手せれ!!」

「い、いや私の試合デショ。武闘咲希は私と戦うんデショ」

「あぁ? 大川何を言ってる、ホワイトボードのトーナメント表には決勝戦って書いてるだろ!! 初歩的なことくらいちゃんと確認せれ!!」トーナメント表クシャッ

「そんな! 今までの努力の成果が無駄だったデシュか?…キョエェェェェェェエエエッッッ!!!」


 ニタニタと笑うカネコ・メシ=クイスギーが登壇する。

 だが、これは想定内だった。あたしは部長に話しかける。


「夢実部長、アレをやるわ。」

「アレってまさか、アレをやるんですの!?」

「ブトウサン、ワカリマシタ。ヤリマスヨ…アレヲ…。」

「全力でサポートするにぃ!」


 そう、あたしたちはこういう時のためにアノ作戦を考えていたのだった…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ