ギルドマスターからの依頼
ギルマスの部屋から出るとギルドが何やら騒がしかったが、とりあえず当初の予定を済ませた。
「素材売りたいのだけれど、ここであってる?」
「あ、はい!こちらは魔物の部位などを買い取っている窓口になります!」
ここでいいのか…ワイバーンの持ち込みとかどうしてるんだろ?
「ならワイバーンを持ってきたのだけどここに出しても大丈夫?」
そう言うと職員さんは固まる。
「えっと…今ワイバーンって言いました?」
「うんそうだけど…駄目かな?」
「いえいえ!駄目じゃありませんよ。それじゃ奥の倉庫に出してもらっていいですか?」
そう言われたので奥の倉庫までいって8体ワイバーンを出してみる。
「本当にワイバーンだ…しかも8体!こ、これどうしたんですか?!」
「えっと、普通に移動中に襲ってきたから…」
職員さんの食いつきに若干引き気味に答える。
「ワイバーン8体なんて初めて見ましたよ!ワイバーンはランクもそこそこ高めで集団行動を主にしていますからランクが高い他の魔物より
持ち込まれにくいんですよね…」
「そうなんだ…ってそうだ。これいくらになる?」
「あ、はいそうですね…状態も綺麗ですし白金貨4枚ですね。」
ワイバーン8体だけでそんな値段とはなかなかすごい。
ちなみに貨幣は青銅貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨と別れており、青銅貨10枚で銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で白金貨1枚となっている。
データベース曰く金貨1枚あれば1年は暮らせるらしい。
「それで、こちらは買い取りでよろしいですか?」
「ええ。」
「ならこちらが白金貨4枚になります。ご利用ありがとうございました。」
用件が済み、帰ろうとした所で声がかかった。
「あ、アルマさん!ちょっとまって!」
エイミーさんが慌てたこちらを呼び止めてきた。この騒がしさと関係がありそう。
「どうしたんですか?何かこの騒ぎに関係が?」
「ええ。話があるから申し訳ないのだけれど奥に来てもられる?」
そう言われて奥の部屋に入ると、エイミーさんの顔が真剣になる。
「早速本題に入るわね。今回のレギオン防衛戦に参加して欲しい。ただ、こんな形で頼んでいるのは依頼として参加する上での条件を付けたいからよ。」
レギオン防衛戦に普通に参加するじゃ駄目なんだろうか?
「その条件とは?」
「条件は『貴女の全力』をもってしてレギオンを1人で迎撃して欲しい。貴女なら可能でしょう?『アルマゲドン』さん。」
その瞬間、その部屋の空気が凍りついた。雰囲気ではなく物理的に。
虚数空間に隔離された部屋でアルマはエイミーを問い詰めた。
「何故知っている?」
ここで殺すべきかな?
『いいえ。殺すのは得策とは言えません。話を聞いてから脅すようであればここに閉じ込めたままにしておきましょう。』
「いや、何故知っているかは置いておこう。私の情報を知っているとあえて補足してまでも…脅しでもするつもりか?」
エイミーさんは首を横に振る。
「あぁ、ごめんね。脅すつもりはなかったんだ。ただ1人でレギオンを止めるという功績に対する報酬を提示する為の行動なのよ。」
「報酬はなにが貰えるの?一応言っておくとさっきワイバーン売ったばっかだからちょっとやそっとじゃ動かないよ?」
「貴女が恐らく最も持ちにくいもの。『身元保証人』よ。私がなってあげる。初代勇者の先祖返りである私が。」
初代勇者の先祖返り?私の情報を知れたのもその能力なのだろうか?
『初代勇者はあらゆるものを看破する眼を持っていたと言われています。それも神でさえ見られたら丸裸だとか。』
「なるほど。私がレギオンの迎撃か身元保証人の確保、どちらが簡単と判断するかに賭けたの?」
「えぇ、そうよ。なんなら家族になってもいいわよ。」
家族か…寿命が半永久的な私には不要だな。だが身元保証人は嬉しい。レギオンがどのくらいの規模なのかは知らないがワイバーンが1万いても3秒で終わらせられる自身はある。
「依頼を受ける。報酬は身元保証人になることで。…ただし身元保証人になる上で条件がある。」
忘れちゃいけないことを忘れかけていた。
「条件?」
「私は旅をしてる。だからついてきて欲しい。」
驚いたように目を見開いた。
「私にギルドマスターを辞めろって?」
「駄目?」
するとエイミーさんは笑いだした。
「ふふっ、いいわよ。このギルマスの地位も私を危険に晒さないようにお父様が縛り付けたものだもの。妹も連れて行っていいかしら?」
「勿論。」
これで自分で料理をしなくて済むかもしれないとほくそ笑むアルマ。
『まったく…秘密が多いことを忘れて…』
そんなデータベースの声が聞こえた気がした。