終末
安らかな眠りの方がまったく思いつかない件…
『対象の生命活動の停止を確認。 当機の損壊率11%、行動継続に支障は無いと判断。
「Project:Ἁρμαγεδών」を継続、及び万物融合炉の構築を再開。』
何時からだろう。
私が自己決定の意志を持たなくなったのは。
何時からだろう。
私が誰かが作ったマニュアルに従う様になったのは。
何時からだろう。
私が世界に拒絶されたのは。
何時からだろう。
心というものを持たなくなったのは。
何時からだろう。
私が「ナマモノ」じゃなくなったのは。
…否。最初から。「製造された時」からずっと。
いや、それも否だろう。
最初は世界から注目されるのみだった。
その後は私を「ナマモノ」として扱い、歩み寄ってきた。その者たちは任務とはいえ私が行動を起こす度気遣ってくれた。
だが何も感じない。今までも。「処分」した後も。
私はこの世界が、自分が嫌いだった。
心を持たない傀儡なのに奇妙な事だと自分でも思う。
「好きの反対は全く関心を持たないことよ。自分で嫌いって分かるってことはあなたに心があるという証拠。」
何時しか言われた言葉。それを信じて私は自分ないはずの心にすがり、自分を制してきた。
だが無駄だった。
結局は制してきたと思っていたのはἉρμαγεδώνマニュアルによるカウントダウンだったのだから。
私はこの手でついさっき最愛の「ナマモノ」を殺した。
彼女は最期まで私を止めようとしてくれた。
だが止めることは出来なかった。
『万物融合炉の構築を終了。以降、当機をコアとし、範囲無制限の無差別融合を開始する。』
もうこの世界を見るのも、最愛の「ナマモノ」を思い出すことも無い。さようなら。
「さようなら。愛しの最後のナマモノ。」