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気になるアイツ  作者: muscleモスキート
8/13

つらみ狂想曲

よろたの

  その日は朝から生憎の曇り空だった。あたしの心もちょっとだけ、どんよりとした。もう、せっかくアイツとのデートだっていうのに。い、いや、別にあたしは喜んでるわけじゃないけどっ!


 集合場所は遊園地の入場ゲート前。集合時間は開園時間の午前10時だ。

 現地に着くと、長身であるアイツは、すぐに見つかった。

「ごめん、待った?」あたしは彼に駆け寄り、言った。

「いや、待ってないよ」彼は自撮りをしながら、答えた。

「じゃあ、行きましょうか」そう言い、入場ゲートへ、向かった。

 ゲートをくぐろうとした時、アイツが職員に話しかけられた。

「お客様、申し訳ありません。園内で薔薇を咲かせるのは禁止です」そりゃそうだ。ここは遊園地であり、薔薇園ではないのだ。しかしアイツは、

「すまない、体質なのだ」あくまでも悠然と答えた。

「体質なら仕方ありませんね」職員も納得し、引き下がった。


最初はコーヒーカップに乗った。

「俺が砂糖だとすると、君はミルク。ベストマッチだね」

乗る前はこんな軽口をたたいていてた、アイツだったが――

「おえ・・・、気持ち悪い・・・」乗り終えた後は、すっかりグロッキー状態になっていた。

「ごめん、回しすぎちゃったわ」あたしは舌をぺろりと出した。

「勘弁してくれよ」そう言い、アイツは自撮りをした。

 そういえば、さっきもしてたわね・・・。もしやと思い、アイツのインスタグラムを確認した。すると、案の定、先ほどの写真を、「目が回ってつらみ。でもパリピのワイはまだまだ遊んじゃいマーーース!!!最後までお付き合いよろ谷園➚➚ぽんぽーーん(^-^)」という文章とともに、投稿していた。

 あたしは少し、腹が立った。


 その後もアイツは自撮りを続けた。お化け屋敷、ジェットコースター、メリーゴウランド、お昼ごはん、etc・・・。いつでも、どこでも、インスタのことを考えているように見えた。

シャッター音が聞こえるたびに、あたしのいら立ちは募っていった。


 そして時刻は夕方、閉園時間が迫ったころ、積もりに積もった、あたしの怒りは遂に爆発した。

 引き金はやはり、彼の自撮りだった。シャッター音が聞こえた時、あたしはベンチで隣に座っていた彼に、力いっぱい掴みかかった。

「あんた!朝からパシャパシャパシャパシャ!あたしとインスタ、どっちが大事なわけ!?」

「ど、どうしたんだ急に」アイツは戸惑った表情。あたしは構わず続ける――

「どうしたも、こうしたも、ないわよ!何が、つらみよ!何が、よろ谷園よ!!何が、ぽんぽーんよ!!!ぶっ飛ばすわよ!?」

「わ、悪かった。何でもするからさ。落ち着いてくれよ」

「何でもですって!?」あたしは目を光らせた。

「何でもだ」

何でも、この機会に、とてつもなくきつい要求をしようと心に決め、怒りに任せて口を開いた。

「一緒に観覧車に乗って頂戴!」


次もよろしく。ぽんぽーーーーん!!

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