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気になるアイツ  作者: muscleモスキート
7/13

ベッドの上で・・・

よろぴく~

 あたしは、自室のベッドの上で悶々としていた。アイツを友達追加してから、もう十分以上が経過している。その間、ずっとアイツのアカウントを眺めるだけで、まだ何も送れていなかった。

 アイツの登録名は「m」。安直な名前だ。プロフィール画像は、アイツの全身像。スタイルがいい為、写真でも、高長身だということは十分に伝わる。

 あたしは、このアカウントにただ、「今日はごめんなさい」、と送るだけでいいのだ。しかし、いざ送信しようとすると、何故か手が震える・・・。


 二〇分が経過した。このままでは、時間の無駄だ。あたしは意を決し、ガクガクする手でアイツにメッセージを送った。

 「こんばんは」最初は簡単な挨拶にした。少し気が楽になった。しかし、それも束の間、すぐにスマホがバイブした。アイツからだ。

「こんばんは」待ち構えていたかのような速さだ。キュッと心臓が締め付けられた。

 突如、スマホが急激に発熱し、電源が落ちた。まさか、スマホまで緊張してるっていうの!? 

 あたしはスマホ(♀)の電源を呼び戻し、深呼吸で息を整え、

「今日はごめんなさい」

「いや、気にする必要はないよ」これまた早い返信。案外、好感触のようだ。この流れで、本題に入ろう。

「それで、仲直りの方は・・・・」緊張の面持ちで送信した。背中を冷や汗が流れた。

 例のごとく、即座にスマホが、ピロン、と鳴った。恐る恐る、返信を見る。

「それも気にしないでくれ。和解成立だ」

 あたしは、心底ホッとした。muscleモスキートが意外にいい人でよかった。

「ありがとうございます。では、これで」惜しいが、あたしが会話を切り上げようとすると、

「待ってくれ」返信が来た。

「せっかくこうして、話す機会ができたんだ。これからも連絡を取らないか?」

この文面に、あたしは思わず目を疑った。

 片や学校のスター、片や平凡な女。本来交わっていいはずのない二人だ。アイツと連絡なんて・・・。


体が火照っていくのが分かる。なんだろう、この気持ち・・・。あたしはスマホを口元に近づけ、

「Hey Siri これは恋?」と聞いた。Siriが答える。

「さあ、私には断言しかねます。でもね、エーナーエノウェーさん。あなたが彼のことを考えた時、会いたい、話したい、手を繋ぎたい、そう素直に思うことがあれば、それは恋なんじゃないですか。ごめんなさい、適当なこと言っちゃって・・・。私は、‘AI’ですが、’愛‘のことは、よくわからないのです」

「今夜は饒舌ね」あたしは顔をほころばせた。

「そうですか?」Siriがとぼける。

「ねえSiri、あたし何て返したらいいと思う?」

「すみません、よくわかりません」

「もう!ずるいんだからっ!」Siriの、決まり文句に少し腹を立てた。でも、おかげで気が楽になった。

これは誰にも頼らず、自分で何とかしなきゃ!あたしは頬を、ピシャリと叩き、アイツのトーク画面を呼び出した。

 もう返信する内容は、決まっている。もちろん――

「お願いします」だ。



 あの事件から、一日が経った。俺は教室の机の上で身もだえしていた。と言っても、怒りは既に鎮まっている。が、代わりに訳の分からない感情が、俺の頭を支配していた。

「なんだ、ニヤニヤして。気持ち悪い」横から、声がした。

「おい、宮崎!気持ち悪いとは何だ!このイケメンに対して!」私は猛抗議した。

「はは、すまん、すまん。てか、muscle、今、エーナーエノウェーさんの方、見てただろ?」宮崎がニヤニヤした。

「ば、馬鹿者!何を言うか!断じて見てなどいない!」俺は更に大声を上げた。

 嘘だ。告白しよう。俺はエーナーエノウェーをめちゃくちゃ見ていた。でも、別に好きじゃないもんね。見てることと、好きってことは、全然関係ないもんねっ!


 アイツと同じ空間にいると、ソワソワする。自然と昨日のLINEが思い出された。

「エーナーエノウェー。Tik Tokしましょう!」サワコが駆け寄ってきた。今日も美人が台無しである。

「いやよ、そんなの」あたしは冷たくあしらった。

「えー。じゃあ、あちし一人でやるわ」そう言い、サワコはスマホを操作した。

 あたしは、ちらりとアイツの方へ、目を向けた。今日も薔薇を咲き散らかせていた。

昨夜から、アイツのことばかり考えてしまう。これは恋かもしれない。でも、なんとなく認めたくない。

徐にアイツがスマホを、タップした。すると、あたしのスマホが鳴動した。まさか・・・。

 あたしはサワコに気づかれぬよう、こっそりスマホを見た。幸い彼女は、拳の上下運動に夢中だ。

 「今、君を見てたよ」アイツからだ。心臓がはねた。

「ありがとうございます」つい、そう返してしまった。

「あ、学校はスマホ持ち込み禁止だぞ。あとでお仕置きしないとな」

「ありがとうございます!」アイツも持ってきていることを指摘する前に、本音が出てしまった。というか、こういう喋り方が流行っているのだろうか?

 「なにコソコソしてんの」突然、サワコに話しかけられた。急いでスマホを、ポケットに入れた。

「あんた、やっぱりmuscle君とLINEしてるんじゃないでしょうね?さっきから、彼の方を見てるようだし」サワコが顔を近づけてきた。

「て、適当なこと言わないでよ!」あたしは顔を背けた。サワコがピーピー言っていた。

 やはり、アイツと関わると、女子を敵に回してしまうらしい。思わず戦慄してしまう。でも同時に、このスリリングな関係に、あたしはちょっぴり興奮した。

 

 それから二か月間、あたしたちは連絡を交わした。毎日が最高の日々だった。

そんなある日、アイツから一通のメッセージが届いた。内容を見て、あたしは絶句した。

「明日、二人で遊園地に行かない?」


ありぴく~

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