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〜47〜 エンジョイ!スクリーム&マサカーパーティー 〜セェレーン騎士団長③〜


「全体止まれ!どうした!?報告をしろ!なにがあった!」


こちらの声と同時に右方で隊を展開していた隊長が駆け寄ってくる。


「報告します…が、物陰から黒い何かが飛び出して隊員を暗闇へ引きずり込みました、としか」


「黒いものとは?」


「わかりません。ただ人間と同じくらいの大きさがあるようには感じましたが・・・」


「一体、なんなんだ。」


ぽつりと呟いた。

この森にはゴーシュ殿が言う通りならさっきの襲撃者が潜んでいる。

この暗さだし仕掛けてくるのは想定していたが何という手際だ。

部下もそれなり訓練されている兵士だ。なのにそれが黒い影しか捉えられないとは。

なんとなく相手の意図が見えてきたぞ。

あの洞窟の崩落で退路を塞ぎつつ、生活基盤を叩き潰し畳み掛けるように襲撃することで移動を促してさらに追撃をかける。

待っていても殺されるなら動くしかない。襲撃者の潜む森を行くしかない。


「奇襲待ち伏せはあるものとして進むぞ!我々は元々あの地獄を生き残ったのだ!ここでも生き残るぞ!いいなッ!」


おおっ!と声が返ってくる。

私はここにある。だから騎士団長で在れるのだ。

声を聞きながらぎゅっと拳を握る。


その時、ガサっと近くの茂みが揺れた。

襲撃者か?いやこの森は夜行性の獣も多い。どちらもありえる。

いや、あの襲撃者の手際から考えてそんな露骨な凡ミスをするか?

どちらにしても確認をしなければならないのは事実だ。


「誰か!確認してくれ!」


一人がおずおずと出てきて。盾を構えながら剣先で茂みを突く。

つついているが手応えがないようで首をかしげていた。

そして兵士は振り返り茂みに背を向けてこっちに戻ってくる。

彼は兜かぶっていない故、表情は安堵した表情をしている。

その時、またガサっと茂みが動く。兵士の顔がぎょっと驚愕の顔に変わる。

くるりと振り返り、こんどは勢いに任せて剣を突きこむ。

やはり手応えがないようだった。顔に困惑を浮かべながら今度は何度も何度も剣を突きこむ。

するとぴょいっと茂みの小枝から何かが飛び出した。


「ああ、なるほど」


飛び出したのは兎羽リスだった。夜行性の特殊なリスだがそれがいたのだ。

ととと、と前足から落とした木の実を拾い直して別の木へと登っていった。

茂みを見つめていた兵たちが一斉に胸を撫で下ろすいくつもの息を吐く声が聞こえた。


「杞憂だ!進むぞ!こちらも数がいる!向こうもそうは攻めてこれない!行くぞ!」


ガサッ、とまた何かがさっきの茂みで動く。

またか、という顔を兵士はしていた。

うんざりした様子で再度振り向いた勢いで苛立ち地味に剣を突きこむ。

手応えは無い、という反応だ。またリスか?


「あっ」


と思った次の瞬間だった。何かが飛び出し、覆いかぶさるように兵士に飛びかかった。

兵士の方も突然の事に尻餅をつく形で倒れる。


「ぐあああっ!ああっ!助け!助けてぇ!」


松明をすぐに向ける。夜の闇に包まれてシルエットでしか見えないがそれは怯んだ相手の頭にかじりついていた。

妙なことに明かりを向けてもシルエットでしかわからない。ただあかりに照らされてなんとか形はわかる。狼だ。全身頭から尻尾の先まで真っ黒なんだ。バキバキ、っと何かが砕ける音が聞こえている。


「かかれ!助けてやれ!」


兵士たちが一斉に武器を抜いて狼に迫る。が、こちらが迫るのと同時に狼も兵士の頭にかじりついたまま、頭を振り回しその勢いで兵を森の闇の中へと放り投げる。

投げられた先で地面に叩きつけられたどしゃっという音が響いた。

だが悲鳴が聞こえない。気絶というわけではないだろう、きっと兜の上から頭蓋を噛み砕かれ投げられる前に死んでいた故に声がだせないという事か?


「クソッ!あの黒犬を仕留めろ!」


と声を荒げるがすでに大きな黒狼はいたはずの場所にいなかった。目を離した隙に森の闇に消えたのだろう。動けない状況ながら状況の把握に務める。妙に頭が冴えている。混沌とした状況だからか、冷静に務めなければと理性が働くのか。

だが兵達は違う。彼らも私も人間だ。本質弱い生き物だ。このような状況ならばパニックを起こしかねない。


「いいか、冷静にだ。獣の襲撃もあるがそれでも森を抜けることが優先だ。何はともあれ我々は生き残ることが目的だ。進むぞ」


足場の悪い森を歩き始める。こちらの静かな指示に誰も掛け声で返さない。

この短い時間でかなりの士気を削がれている。よくない。非常にまずい。

何かがあればこのギリギリの精神で暗闇の行軍をする我々の指揮は崩壊する。そうなれば新人多めのこの部隊、ただの烏合の衆になる。これは不味い。


「ぎゃっ」


どこかで悲鳴がまた聞こえた。


「どうした!?」


声の方に目線を向ける。

…我が目を疑った。落とし穴だ。丁寧に尖らせた木材も一緒に埋めてあり落ちた兵士の太腿や腕といった鎧をつけてない部分を貫いていた。


「あっ」


「ひぇっ」


「がっ」


悲鳴がいくつか重なる。

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