~42~ エンジョイ!スクリーム&マサカーパーティー④
気づかれないようにフードを被り、暗い色味の服をさらに闇に溶けさせてやる。
状況は完璧だ。向こうはこっちを補足できずその上でこっちは観察し放題。覗き的な趣味があるわけではないがそれでも状況は最高に自分好みだ。
椅子のような岩に腰掛ける二人の騎士崩れの松明に照らされ見つからないように森の影に身を潜ませて遠回り気味に迂回してゆっくりと忍び寄る。
見張りの騎士の体の向きは洞窟から反対を向いている。
影の凶刃のスキル、影歩みで森の中を包む仄暗い闇に文字通り゛身を溶かして゛地面に消えていく。影の中からは周囲を確認できないからそんなに遠くへは行けはしない。
行けないが目をつむって2メートルほどくらいなら歩けるように、この移動もそれくらいなら問題はない。それ以上はどこにでるのか予想できないからちと不安だが。
そして油断しきっている騎士の背後へと裏回る。
相手の背後のおおまかに安全であろう位置まで影歩みで移動してからこっそり顔を出して確認する。
きっちり背後に出れた。騎士の背中が地面からほとんど離れない僕の顔の位置からみえている。完璧だ。
じゃあ後は慣れた手口でいつもどおりに殺すだけだ。ただ一人殺してから次が反応するまでの時間としてはどうだ?気づいて大声で仲間を呼ばれるのはいまはまだ面倒だ。
なら時間としては3秒とかそんなもんだろうか。
ふと手口のパターンを頭の中で思い出す。
うん、いつも通りでなら行けるか。甲冑着こんだ相手だとちと勝手が違うかも知れないが、いつも通りを丁寧にやるだけだ。
素早く、気づかれるより早く影から飛び出し左手を極める。甲冑の騎士の兜なかから痛み混じりの驚いたようなうめきが聞こえた。
甲冑を着てようが人は人。骨で体を繋いでいるからこそ人用の技だって覿面にきく。
即座に脇の下の鎧の隙間に短剣をねじ込んでやる。どすっ、という鈍い肉を叩く音と共に騎士がぶっ倒れる。あの位置は心臓。即死だ。
ここまでの流れで一秒。
立ち回りの物音。鎧が地面にぶつかる音にもう一人の見張りが気づいた。
「誰だ!」
気付くのが遅い。こっちはもう砂作りの弩を構え終わっている。かっちり甲冑を着込んでいるが、デメリットがある代わりに威力を求めたこの弩なら問題ない。つぎの言葉で仲間を呼ばれる前に即座に引き金を引く。ひょうっと風を切る音と共に矢が見張りの兜の上から突き刺さり、衝撃で後ろに軽く仰け反りぶっ倒れ、そのまま起き上がってこない。よかった、と一息つくと手元の砂作りの弩が砂浜で波にさらわれる砂作りの城のように崩れていく。これがデメリット。貫通力も出るし軽いしとクソ便利だが欠点は完全に使い切りだ。使い方によってはいくらでも釣りが出るほどの強さだけどね。見張りの始末はこれで終いってとこだ。
あらためて息を整え今の仕事を振り返る。大体4秒ってとこだったか。少し前の世界にいた時と比べて鈍っただろうか?長らく塀の中にいたし。まぁこれで最後の準備は済んだか。
さて、さてさてこっからが本番、楽しいパーティーなんだ。




