~40~ エンジョイ!スクリーム&マサカーパーティー②
「ああ、そうだ。リリス。これからマスクを被って襲撃には参加してもらうよ」
ごそごそ、と件の道具袋から前もって作っておいた、簡素な作りのマスクを取り出す。
羊の顔と巻角が突ついたハーフマスク、犬の噛み防止の口輪のようなデザインの鼻の長いマスク、ほかにも様々な奇妙なマスクを広げてリリスに見せる。
「・・・コレは?」
「覆面さ。野盗は顔を隠して人を襲うものだろ?暗がりでちょっと便利な機能がついてるお洒落なマスクさ。」
「私達は冒険者ですよ?それにこれがおしゃれ、ですか?」
リリスは差し出されたマスクたちに目を向けてみるが、嫌そうな顔をしている。
個人的には残念だが正直仕方ない、と思わないでもない。コレは僕が趣味で作ったマスク達だがどれもこれも凶悪な顔をしていて女の子の趣味ではないかもしれない。
「まあホントのところはサ。これからやる手口がそれなりに非道いから万が一殺し漏らしたやつが僕らの悪辣さを語るとき、『謎の襲撃者』と『顔まで分かってる二人組』だったら前者のほうが良い。それに僕らのモンスターとしてのスキルもフルで使っていく。やっぱり顔と正体は一致しないほうがいいよね?」
「それは、そうですね。そういうことでしたら、仕方なくですがコレにします。」
そういって幾つか出したマスクの中から、一つマスクを手にとった。
なんてことない、ネコらしいネコのハーフマスクだ。
「きっと似合うよ。かわいいネコチャンだ。」
「比較的マシだからえらんだだけですよ。そういうあなたどんなのを?」
いいながらリリスは顔の上半分を覆う猫のマスクを装着する。面倒な仕掛けのない頭の後ろで紐を結ぶだけのそれをぱぱっと装着し、ジドの方をみる。
びくっと肩を震わせる。ジドのつけているマスクを見たからだろう。
猛禽を嘴を想像させる、長いノズルのような形の鼻。いわゆるペストマスクというやつだ。
普段姿を隠すことを想定して色の暗い防具で固めているのもあり、マスクもそういう暗めの鉄錆のような赤色のペストマスクを被っていた。だがあのゲームにそういう悪辣で邪悪な病は無い。いやあるにはあったがもっとえげつないものでこんな防病マスク程度でどうにかなるものでもなかった。ようするにみてくれがいい以外に特に効果はない。
「それは?」
「夜鴉のマスクさ。そっちのこれと同じものに手を加えたものでね。くらがりでもよく見えるでしょ」
「ええ。昼とかわらないくらいに。コレすごいですね」
「でっしょう?手を加えたのはそこでね。猫並みに夜目が効くようになる代物さね。さて僕が合図するまで、例の場所で待機で頼むよ。それじゃパーティーを始めようリリス」
「がんばってね、ジド」
ジドは返事の代わりにキシシ、と楽しげに笑うとフードを被って暗い夜の森へと消えていった。




